極論・暴論の「痛快な」出版物と、それが生む「憎悪」について　山崎雅弘

山崎 雅弘 @mas__yamazaki

（続き）威圧的・恫喝的・攻撃的な言葉を多用したり、自説と違う歴史認識に「何々史観」とレッテルを貼って全否定するような乱暴な論法を使っているかどうかも、両者を区別する材料になる。「歴史解説本／雑誌」の著者は、自説と異なる認識を説明するのに「バカ」「洗脳」といった語彙はまず使わない。

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（続き）「自虐」「反日」「嘘だらけ」「バカ」「洗脳」等、読み手の攻撃的な感情を激しく刺激する乱暴な語彙を意図的に用いて書かれる「歴史解説の体裁をとった政治宣伝本／雑誌」は、特定の国や集団に対する攻撃的な感情を持て余した読者に熱烈に支持される。その種の攻撃性の正当化に奉仕している。

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昨晩とおとといBSで放送された『遠い祖国〜ブラジル日系人抗争の真実〜』観るのがつらい番組だった。国内での困窮から脱するため、政府の言葉を信じてブラジルに渡った移住者は、説明とは全く違う現地の荒野に愕然とする。それでも耐えて生活を始めた彼らを守るはずの日本領事は、太平洋戦争の開戦と

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（続き）同時に自分たちだけ帰国、大勢の移住者は「敵性国民」として取り残されて大きなショックを受けた。その後、1945年8月に日本から「敗戦」の知らせが届くが、それを信じたくない移住者は「これは敵のデマだ、本当は日本は勝ったのだ」というストーリーを作り出し、敗戦を受け入れた移住者を

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（続き）敵視するようになる。そういう「日本の敗戦を信じたくない日本人」を目当てに、嘘の情報を印刷して売る「業者」が現れ、読者が読みたがる現実逃避の創作物語を「事実」として販売し、大もうけしたという。いつの時代にも、そういう人間はいる。 pic.twitter.com/YNJ8MLTVTS

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ブラジルの「勝ち組・負け組」の話は、以前から断片的には見聞きしてきたが、双方の当事者やその子孫の証言を丹念に集めて、全体像が俯瞰できるような形にまとめられている番組は初めて観た。やり切れないと思うのは、本当は皆、同じように苦境に追いやられた日本人同士が、敗戦への認識の違いが原因で

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（続き）相手を憎悪するようになり、やがて日本人同士の殺人事件まで続発したという展開。太平洋戦争が終わった後、ブラジルでは日本人同士の「戦争」が始まっていた。「勝ち組」の人間による殺害の動機は「あいつらは天皇の悪口を言ったりご真影を粗末に扱ったから」というものだったが、「負け組」に

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（続き）属していた人やその家族は「そんなことは絶対あり得ない、一体誰がそんなデマを流したのか」と憤る。憎悪に思考を支配されると、その憎悪を正当化したり増幅させる情報しか耳に入らなくなり、言動は際限なく攻撃的になり、最後には「悪いのは相手だから殺しても構わない」という境地に達する。

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祖国の敗戦を聞いても帰る術はなく、守ってくれる領事にも捨てられ、将来の展望を見失った人々の不安につけこんで「現実逃避の物語」を売り、その物語を受け入れない日本人への「憎悪」の感情に火をつけ、最後には日本人同士に殺し合いをさせた「勝ち組相手の出版業者」は、その後どうなったのだろう。

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『遠い祖国〜ブラジル日系人抗争の真実〜』オンデマンド（前編）bit.ly/1uKFogd（後編）bit.ly/1oHWA3o　NHKのBS番組には、地上波でも放送すべきと思うものが少なくないが、これもそう。遠い昔の話でなく現代の日本に繋がっている。

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札幌市議会の最大会派「自民党・市民会議」所属の金子快之市議「アイヌ民族なんて、いまはもういない」「せいぜいアイヌ系日本人が良いところ」「利権を行使しまくっているこの不合理。納税者に説明できません」（毎日）bit.ly/1o15LpD　憎悪を煽る議員がここにも一人。

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当事者から見た「アイヌは、もういない」問題（Togetter）bit.ly/1o3Lgsz　札幌市議　金子快之さんの問題発言（同）bit.ly/1tdvHmm　人々の憎悪に火を付ける最初のきっかけは「奴らは特権を不当に享受している」という印象操作。

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つくる会有志によるチラシについて（Togetter）bit.ly/1yP6rVl「チラシ自体は東京支部が勝手に作ったもので本部は無関係だが、チラシの内容に異論はない」というのが「つくる会」の公式見解らしい。 pic.twitter.com/nWA6VtkkEJ

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「つくる会」本部のサイト（bit.ly/1uKJW63）にある「本物の」チラシ。「本当にアジアの国を侵略したの？」という問いに「確かに日本は戦って負けたんだ」と回答。質問に答えているように見せて、論点をすり替えている。 pic.twitter.com/EgBcmSToVY

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「アジアの国に迷惑をかけたんじゃないの？　多くの住民を殺したとか」「勝った国々が自分たちに都合のいいように作った嘘の歴史なんだ」「じゃあ、なぜこんな嘘の歴史が今『本当のこと』になってしまっているの」「それが世界の常識なんだよ」古今東西の歴史家に対する敬意が、髪の毛一本ほども無い。