「十年も経って、あの女が育児に家事にくたびれた主婦になった頃、彼が私を思い出せばいい。同じようにくたびれても程度がもっと上に違いないはずの-自分が手に入れるはずだった私を思い出せばいい。人生最高に装ってあれだけ差がついた新婦と私を比べて思い出せばいい。
2010-11-20 18:45:00そうして自分が浅はかに手に入れた家庭にくたびれたらいい」人を刺してきたような顔をしていた彼女は、自分も刺されて返り血に塗れていた。人が聞けば鼻もちならない自慢にしか聞こえない台詞は、淡々とした彼女の吐血だ。-有川浩「阪急電車」
2010-11-20 18:47:38「混んできとんのに何でその鞄を一人前に席に座らせとんねん」「あ、あの、これは友達の鞄で、友達が後から来るんです」「そんなことが理由になるか!その友達より先に乗ってはる人がぎょうさんおんのに、後から来るあんたの友達があんたが先取りしといた席にしれっと座るんかい!おかしいやろが!」
2010-11-20 18:52:45白い目は容赦なく子供であるミサのほうに向けられていた。それは周囲の人々が老人と同じ苛立ちをミサに抱いているからだ、と気づかない程には子供ではなかった。-有川浩「阪急電車」
2010-11-20 18:54:21名案を思いついたつもりでいたのに、それはずるいことだとこっぴどく叱られた。他人から、公衆の面前で。あの老人が腹に据えかねて人前でミサを怒鳴りつけるほど二人は今まで目立っていて、それもひどくみっともなく目立っていたのだ。-有川浩「阪急電車」
2010-11-20 18:56:16もしあのまま付き合っていたら、カツヤの機嫌だけを気にして世間から自分たちがどう思われるかなど意識にも上らない女になっていたにちがいない。-危なかった、と胸をなで下ろす。-有川浩「阪急電車」
2010-11-20 18:59:03向かいに一列横並びだったグループ一同は、女子大生が声を上げるまで気づかなかったらしい。「大丈夫!?」向かいから口々に声をかけられるが、立ってきた人はいなかった。背中をさすり、顔色を窺うのは隣の女子大生だけだった。-有川浩「阪急電車」
2010-11-20 19:02:01最初に奢ってしまうと相手が引け目を感じて繋がる縁も繋がらなくなる。そういうものだ。それなら相手の懐具合に合わせた方がいい。-有川浩「阪急電車」
2010-11-20 19:03:01阪急電車(有川浩)読了。基本ほっこりベースながら、登場人物たちが紡ぎだすストーリーはなかなかの重みを伴っている。電車内には様々な人生を送っている大勢の人々が限られた空間に密集し、今この時は同じ方向に向かっているんだよな、という感慨深さを感じます。 #mybooklist
2010-11-20 19:11:15