【巻荒】恋の予感 その2

弱虫ペダル 腐向け 二次創作SSまとめ 巻島はぴば企画の巻荒
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ひな@復旧中 @newgibbousmoon

RE:巻荒妄想 三十男がスイートルームのバスルームを泡だらけにしてシャンパン飲んで苺食べて、ジャグジーで洗いっこして、夜食食べてベッドをトランポリンにして遊んで、一つベッドに眠る。 一つベッドと言っても接触はなく、ただ、手を伸ばせば触れられるところに互いのぬくもりがあった一夜。

2014-07-07 21:16:18
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 翌日、町の食堂でマルセイユ名物だというブイヤベースを注文し、キリリと冷やした白ワインと焼きたてのバケットで楽しむ。 と、そこにハッピーバースデーを歌いながらやってきた食堂のおじさん。その手にはバースデーケーキ。 「ほら、巻ちゃん、蝋燭、消せよ」

2014-07-07 21:21:40
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「……何してるっしょ」 「誕生日にケーキはつきもんだろ」 にやにやと笑う荒北。 いつ手配したのか、クリーニング済のぱりっとしたスーツ姿。この暑い中でも涼しげにすら見える着こなしはどこまでもスマートだ。 「もう、そういう年齢じゃないっしょ」

2014-07-07 21:25:38
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「いいから、いいから。ちゃんとケーキ屋に頼んだって言ってたぜ」 「おまえ、そんなのいつ手配したっしょ」 「さっき、店入った時」 「……フランス語も話せるのか?」 「片言だけどな。オレ、こっちの仕事長いから」 「建築は年単位って聞くっしょ」

2014-07-07 21:28:10
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「そ。グラスゴーのそれは七年計画」 「……じゃあ、こっちで暮らすのか?」 「っつーか、オレ、2年前からロンドン在住な」 「マジ?」 「おう。その前はイタリアに3年かな」 「……東堂が、おまえには全然連絡とれないって言ってたっしょ」

2014-07-07 21:32:59
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「日本には全然戻ってなかったからな」 「……あいつらと全然連絡とらなかった?」 「ってわけでもねえよ。メールは時々してたし……ただ、居場所は明らかにしてなかったかな」 「なんでまた」 「オレねえ、新開と付き合ってたんだよね。大学卒業くらいまで」

2014-07-07 21:35:10
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「ああ、うん。それは聞いたことあった」 「で、まあ、つきあってたっていっても、あいつはああいう男だから、しょっちゅう、浮気をすんわけよ」 「……あー、うん」 「で、まあ大学んときはグダグダだったけど、まあ、卒業を機会にケジメつけたかったわけ」

2014-07-07 21:37:17
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 福ちゃんと東堂はそのとばっちりみたいなもんで悪かったと思うけど、と、荒北は手にしていたグラスを空にする。 空は青く、海風が心地よい。いかにも港町らしい活気にあふれている。 巻島は驚くほど今の状況を楽しんでいたし、心からリラックスしていた。

2014-07-07 21:44:06
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「福ちゃんは、結局、新開に味方しちゃうわけよ。そのつもりはなくてもね。何たってつきあいの長さが違うし……んで、東堂は、わりと恋愛至上主義なとこあるからよ。新開がオレのことを好きなんだ、だからやりなおしたいなんて殊勝な顔すればころっと丸め込まれる」

2014-07-07 21:45:03
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「そうまでして別れたかった?」 「新開の事、嫌いじゃねえよ。けど、あいつがオレの事試して他の女と寝て、それ怒って、あいつが謝って、許して……その繰り返しだ。で、ある時、思ったわけだ。オレ、何やってんのかなって。そんでもって、すげえムカついた」

2014-07-07 21:52:49
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「ムカついた?」 「そう。そんなのにいちいち傷ついている自分がさ、情けなくて、腹が立って、そんでムカついた」 「だから別れた?」 「ああ」 それは巻島の知らない荒北の過去の話だ。 そして、たぶん東堂も知らない。 (なんで、優越感覚えてるっしょ)

2014-07-07 21:59:01
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「新開のやつもなかなか諦めなくて……最初の一年は鬼ごっこみたいだったな」 「随分、壮大な鬼ごっこっしょ」 「そうだな」 「まだ諦めてなかったらどうする?」 「八年経ってるんだぜ?」 「まあ、そうだけど……」 「オレより巻ちゃんのが大変じゃねえの」

2014-07-07 22:04:53
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「……戻らなければいいだけっしょ」 「でも、巻ちゃん、職場バレてんだろ?」 「シーズン中じゃあ、そうそう動けないっしょ」 「まあ、そうだよな。プロ選手って居所すげえ管理されてんだろ?」 「そ。いくら隣同士でもそうそう海を渡ってられないっしょ」

2014-07-07 22:07:09
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「でも、東堂、諦めなさそうだよな」 「もう決めたっしょ」 「巻ちゃんも、恋には溺れていられないタイプか……」 「とーぜんっしょ。オレはリアリストなんだよ」 「まあなぁ。……難儀だよな。好きな気持ちは噓じゃないのに、それだけに溺れることができねえ」

2014-07-07 22:10:21
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「恋愛がすべてじゃないっしょ」 「まあな。……ほれ、巻ちゃん、一番いいとこ」 ケーキはシンプルなガトーフレーズ……つまり苺のショートケーキだ。 真ん中の苺とチョコプレートののった1ピースを手渡され、荒北は自分にも1ピースをとりわける。

2014-07-07 22:12:56
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 残りはといえば、ウェイターを呼んで、なにやら言いつける。 「居合わせた人におすそ分けってことでいいだろ」 「あ、ああ」 「ここは、オレが奢るから」 「いや、オレが出す。おまえ、昨夜のホテル代もうけとってないっしょ」 「だって、会社が出してるし」

2014-07-07 22:14:38
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「にしてもだ、一方的に世話になりっぱなしだろ」 「誕生日にそんなヤボなこと言うなよ、巻ちゃん」 おとなしく奢れらとけよ、と笑う荒北に、巻島は小さな溜息をつく。 そこにやってきたウェイターが二人にグラスシャンパンを渡す。 「何だ、これ」

2014-07-07 22:17:37
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「あっちの客が誕生日プレゼントだとよ」 荒北はグラスを手にし、プレゼントをくれたというテーブルに向かって軽くグラスを持ち上げ会釈する。巻島もそれを真似た。 陽気なおっさんが愛嬌のあるウインクを返してきて、荒北はそれに応えるようにグラスに口をつけた

2014-07-07 22:20:37
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 帰るまでの間に、二人のテーブルには一輪のバラと街角で売っているクッキーの包み、それから、二杯のシャンパンがプレゼントされた。 「良かったな、巻ちゃん」 「こんなの、はじめてっしょ」 見ず知らずの人々からのハッピーバースデーの言葉とささやかな贈物。

2014-07-07 22:23:24
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon それは、巻島の心を暖かくくすぐる。 「……ありがとうっしょ」 「どういたしまして。……っつーか、オレ、これからロンドンもどるけど、巻ちゃんどうすんの?」 「オレも連れて行ってくれねえ?」 「いいけど。じゃあ、ロンドンまでデートとしゃれこもうか」

2014-07-07 22:25:36
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「荒北、おまえ、性格かわったんじゃねえの?」 「かもな」 くっくっと荒北は笑う。 「じゃあ、のんびり行こうか。別に時間はいいんだろ?」 「ああ」 (もう少し、一緒にいたい) この気持ちが何なのか、巻島にもまだわからない。 ただ、大切にしたいと思う

2014-07-07 22:29:26
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「どうかしたァ?」 「いや、何でもないっしょ」 こんな誕生日も悪くない。 巻島は、頭上に広がる空と同じくらい晴れやかに笑った。 巻ちゃん誕生日当日妄想はこれにて終了 このあとは、ロンドンもどって、巻ちゃんが荒北にお礼を言いに行きます

2014-07-07 22:34:33
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon ちゃんと荒北と連絡先交換してるし、住所だって交換してるのが巻ちゃんのいいところ。 この日の『お礼』を理由に、ちょっとしゃれた有名店のパックディナーとちょっといいワイン持ってロンドン市内の高級住宅街にある荒北のフラットを訪れる巻ちゃん。

2014-07-07 22:36:32
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon しかし、ちょっと緊張してピンポン押して、荒北の部屋を訪れてみれば、出てきたのは着古したスウェット姿の荒北。足元はクロックスだけど、サンダルに見える。 「あれ、巻ちゃん?」 眠そうな表情の荒北に、巻ちゃんはフルフルと小さく震える。 「どったの?」

2014-07-07 22:39:04
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「どったのじゃねえっ!何だその格好はっ!!」 「あー、いいじゃん。外出るわけじゃねえし」 「良くない!ダメだ、絶対にダメだ!」 「……何が?」 「脱げっ」 「へ?」 「それ、脱げ」 「ってか、何着るんだよ」 荒北のウォークインクロゼットを見る。

2014-07-07 22:41:28