久しぶりに若い女性と個人的に待ち合わせをしているというだけで、僕は時計の針が終業時刻を示すのが待ち遠しくてならなかった。本当にほんとうに、男というのは滑稽な生き物だ。-東野圭吾「夜明けの街で」
2010-11-21 18:38:37「人に迷惑をかけて、申し訳ないと思ったら、まずすべきことは一つだ。そんなことは小学生だってわかってる。幼稚園児だって知っている。ごめんなさい-そういうんだよ」-東野圭吾「夜明けの街で」
2010-11-21 18:40:29それにしても妻というのは、どうして亭主が外で何を食べてきたのかを知りたがるのだろう。新谷も同じようなことをいっていた。どこの家でもそうだろうか。-東野圭吾「夜明けの街で」
2010-11-21 18:41:57僕たちは、本来ならば越えてはいけない境界線を跳び越えてしまった。越える前はその境界上には大きな壁が立っているのだと思っていた。だけど越えてしまうと、実はそこには何もなく、壁は自分が作り出した幻覚だったと知るのだ。だから大したことじゃない、ということをいいたいのではない。
2010-11-21 18:45:33むしろその逆だ。たとえ幻覚であろうと、壁が見えていたから、境界を越えることなど想像もしなかったといえるのだ。もはや壁が見えない僕は、今度こそ自分の意思だけで感情をコントロールしなければならない。-東野圭吾「夜明けの街で」
2010-11-21 18:54:24方針なんて何もなかった。これから自分たちがどうなるのか、まるでわからなかった。不倫する奴なんて馬鹿だと思っていた。快楽だけを求めて、せっかく手に入れた幸せな家庭を壊すなんて、大馬鹿野郎だ-。その考えには今も変わりはない。僕は僕自身のことを馬鹿だと思う。
2010-11-21 18:58:05でも、一つだけ間違っていたことがある。不倫は快楽だけを求めているのではない、ということだ。元々はそうだったかもしれないが、ひとたび始まってしまえば、そんな生ぬるいことはいっていられない。これは地獄だ。甘い地獄なのだ。そこからどんなに逃れようと思っても、
2010-11-21 18:59:56そんなに苦しくて大変なら、不倫なんてやめりゃいいじゃん-そう、全くそのとおり。自分でもよくわかっている。だけどベッドに入り、明かりを消して闇を見つめながら秋葉と過ごした時間を振り返る時、僕は至福の境地に陥ってしまう。その魔力に一度魅せられたなら、
2010-11-21 19:02:48厳しい口調に、僕は返す言葉がなく、ただ俯いた。不倫は相手を傷つけ、同時に自分も傷つけるのだと今さらながら思い知った。-東野圭吾「夜明けの街で」
2010-11-21 19:04:53「ねえ渡部さん、無理はしないでね。男と女の間に無理は禁物。お互いが出来る範囲で、相手のことを想っていればいいの。出来そうもないことをやろうとしたり、あわてて結果を求めたりしたら、必ず破綻が来ちゃうんだから。何もかも自然に、流れのままに、ね」-東野圭吾「夜明けの街で」
2010-11-21 19:08:53「渡部、それは一時の気の迷いなんだ。有美子さんと恋愛していた頃のことを思い出せ。彼女のことを好きだったんだろ。この女しかいないと思ったから結婚したんだろ。結局は同じことだ。今おまえが夢中になっている女だって、おまえにとって特別な存在というわけじゃない。
2010-11-21 19:14:22「あたしが」彼女はフォークを置いた。「あなたの日常に口出ししたことある?あたしといる時間以外の生活について、何か文句をつけた?」世の中の不倫男たちに問いたい。こういう時、どう答えればいいのか。僕の場合は何も答えられず、俯いて黙々と食事を再開するしかなかった。-東野圭吾「夜明けの街
2010-11-21 19:18:07自分の格好悪い部分を、相手にだけは見せたくないのだ。見せないまま、何とかゴールインまでこぎつけようとする。逆に言えば、そこまで辿り着けばこっちのもの、ということだ。-東野圭吾「夜明けの街で」
2010-11-21 19:19:21自分の長所をアピールし合うのが恋愛なら、短所をさらけ出しあうのが結婚だ。もう相手を失う心配がないから、恋愛中みたいに、必死で相手を振り向かせようと努力することもない。それでもみんな結婚に憧れる。結婚する前の僕だってそうだった。
2010-11-21 19:22:25相手の愛を得るための努力があまりにきついので、安心したくて結婚したのだ。安心を得る引き替えとして多くのものを失うことに、その時は気づかなかった。-東野圭吾「夜明けの街で」
2010-11-21 19:23:39標準的であることに、有美子はとても満足しているように見えた。昨日や今日と変わらない明日が必ず来ると信じている。劇的な変化、予想外の出来事など、何ひとつ望んでいない。-東野圭吾「夜明けの街で」
2010-11-21 19:25:34「あたしに夢を見させた。決して見てはいけないと自分に禁じてた夢だったのに。わかる?夢を見る前より、それが覚めた時のほうが心は寒くなるんだよ」-東野圭吾「夜明けの街で」
2010-11-21 19:26:50「現状だと、絶対に教員の数が不足するんだって。そもそも小学校の教員には英語の免許が必要ないから、英語専門の先生を養成するシステムすら出来てないらしいのよ。ということは、園美の年齢だと、不十分な英語教育しか受けられないわけよね。
2010-11-21 19:29:57