【インペリアル】福間健二 #2factory70

fukumaten でやっていたのも含めて数えると一〇〇本目のツイート詩。七月の旅での見聞から、十六日間いたアソーレス諸島のことは「温存」して、ポルトガル本土でのこと、とくに出会った人たちについて、できるかぎり「事実」を書こうと思った。しかし、字数の枠をこれほど窮屈に感じたことはいままでになかった。固有名詞を出すとそれに字数をとられ、出さなければ出さないで書き方がむずかしくなる。だから間違えたというわけではないが、7の食堂の名前は「ア・プロヴィンシアーナ」が正しい。 音楽は、ポルトガルとは関係のないケニアの女性歌手Stella Mwangi の「Lookie Lookie」。 https://www.youtube.com/watch?v=s8K2wH3Cijk
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福間健二 @acasaazul

インペリアル、ポルトガルの生ビールのいちばん小さいやつ。北ではフィノと言う。それを飲みながら、日ざしのきついリスボンの夏の午後六時、見えるものをただ見ている。広場。バス停の人たち。白いショートパンツ。ホームレスの白人青年の連れている黒い犬。(インペリアル1)#2factory70

2014-08-16 13:13:27
福間健二 @acasaazul

隣にいた男が帰りがけになにか言った。わかりにくいトイレの場所を教えてくれたらしい。二度と会わないかもしれない。そういう人に会っていくのが旅だ。ドバイでは中村涼子ちゃんという女の子とはぐれた。リスボンのカモメはポルトのカモメほどうるさくない。(インペリアル2)#2factory70

2014-08-17 10:56:27
福間健二 @acasaazul

二十九年前、ユーレイルパスで旅をした。フランスとスペインをまわってガリシアからポルトガルに入り、ポルトで一泊した。入った食堂の奥が街を見下ろす丘になっていて幼い少女が遊んでいた。大きなカモメが飛ぶ、いつまでも暮れない、ふしぎな色の空の下で。(インペリアル3)#2factory70

2014-08-18 09:25:24
福間健二 @acasaazul

灰色のなかをピンクと青が走るその空を見ながら、ドウロ川の支流のタメガ川流域の町マルコ・ド・カナヴェゼスからバスでポルトに戻る。行きはサンベント駅からディーゼルの列車だった。ぼくたちはどこで降りるのか。心配してくれた人たち、オブリガード!(インペリアル4)#2factory70

2014-08-19 10:05:29
福間健二 @acasaazul

生きものの、夜の様子。ポルトの、ポルトガルから抜け出したがっているような部分にちょっと退屈して歩いていたら、塩味のきいたおねえさんのイザに会った。おいしいバガッソを一緒に飲んだ。マルコ・ド・カナヴェゼスのバガッソ。だからマルコに行ったのだ。(インペリアル5)#2factory70

2014-08-20 11:15:12
福間健二 @acasaazul

ポルト。二年前の春に来たときは「未亡人の家」という食堂に通った。この夏は旧市街の迷路の入口にある「ブラガンサ」が気に入った。トリッパの煮込みやフェイジョアーダなどを食べ、自家製の蜂蜜入りバガッソを飲み、陽気な韓国人娘ハンギョンと知りあった。(インペリアル6)#2factory70

2014-08-21 11:21:48
福間健二 @acasaazul

インペリアル、それより少し大きいのがトューリパ、もっと大きいのがカネカ、さらに大きいのがカネカ・グランド。生ビールの話。土地の人はインペリアルが普通。壜だと二五〇mlのミニがよく飲まれる。つまみはあまり食べない。たまにトレモソスという豆。(インペリアル7)#2factory70

2014-08-22 10:42:37
福間健二 @acasaazul

リスボン。観光客のあふれる通りから一歩入っただけでこんな場所があるのかと驚かされる「ア・プロヴィンシア」。働き者の奥さんがいい。隣のテーブルの若いカップル、ガブリエルとキャロリン。二人はストラスブールから来た。セジンブラに行っただろうか。(インペリアル8)#2factory70

2014-08-23 09:41:37
福間健二 @acasaazul

セジンブラに今度は行かなかった。シネスに行った。音楽祭のあとで若者たちがあふれ、バスの切符を買うのが大変。二十九年前のアムステルダムだ。やっと切符を買えた夜のバスを待つあいだ、黒人女性がやっているカフェでサグレスのミニとトレモソスで粘った。(インペリアル9)#2factory70

2014-08-24 10:29:59
福間健二 @acasaazul

その日から開いたというパキスタン人アリの店に入った。インペリアル二杯で一ユーロ。場所がよくわからなくてやっとのことで行った二回目。ギニア・ビサウ出身のウルバーノと話した。ケンブリッジスクールで英語を勉強した。その英語がなかなかわからない。(インペリアル10)#2factory70

2014-08-25 11:05:43
福間健二 @acasaazul

リスボンの生命。黒人たちがいつも集まっている、「寛容の都市」という日本語も見える壁の前とその上の、大きな病院に出る坂道。その途中にあるニコの店でよく顔を合わせる若い女医がさっそうと歩いていく。食べきれなかった料理をちゃんと持ち帰る人だ。(インペリアル11)#2factory70

2014-08-26 10:29:33
福間健二 @acasaazul

見えるもの。それがそれであることの、せつなさの帝国。言葉がたたかうのとはちがう帝国だ。インペリアル。二度と行けない場所ともう会えない人を思って飲む。特大の、傲慢な、逆説のほんのちょっと。王様のパウロと食べた森のカタツムリ、おいしかった。(インペリアル12)#2factory70

2014-08-27 10:43:24