【Re:黒火薬②】街で爆ぜた炎と落ちる結晶

殺人鬼がいながらもそれすら日常と変わり、穏やかな日々を過ごしていた人々。それを壊したのは、太陽の下で爆ぜた炎。怒濤の轟音が去って土の下に落ちるのは、一つの結晶とそれを巡る新たな嵐。
0

「界隈爆発事件《prologue》」

街中に何故爆弾が放たれたのか。それは一人の若者が振りまいた小さな小さな火種が群れを成してしまったせいか、それとも手にした者達が悪意ある者達だったせいなのか。

【黒火薬】 @powder_kw

『…ちょっと不味い状況になってる。いや、ちょっとじゃ済まないかもしんねぇ』 (青年がテーブルに地図を広げた) (あちこちに印が付けられている) 『…』 (印の位置を確認した男が、険しい顔で煙草の火を消した) 『…いつからだ』 『ここ数日で急速的に』 (事務所に重い空気が漂う)

2014-06-05 20:22:27
【黒火薬】 @powder_kw

『何処の加工場も職人も塞がってて、中には行方不明の奴もいる。おかしいと思ったんだ。で、調べてみた』 (この街とその周辺地区が細かく描かれた地図を指差し、青年が低い声で訊ねる) 『…【掃除屋】としては、この状況どう思う?』 『そこまで調べたのか』 『それは偶然、ね』

2014-06-05 20:32:05
【黒火薬】 @powder_kw

(男が新しい煙草に火を着け、一呼吸置いて口を開いた) 『時期的にも、そろそろ整う頃だろう。急いているだろうな。質はともかく量を優先する。そうなると…』 (男が地図に何かを書き加える) (街の東西南北に沿って線を入れた) 『縄張り内で加工出来る量は限られるが…』 (地図を眺める)

2014-06-05 20:36:52
【黒火薬】 @powder_kw

『…この週が明けて…間もなくだ。小規模勢力同士が買い込んだ"爆薬"で一気に互いを潰し合うだろうな』 『…薄々予想はしてたけど、寧ろ今まで勃発しなかった事が奇跡だよな』 (地図に書き込まれた印は、この地区一帯の"加工"店と職人の位置、そして街に点在する小さな悪性勢力の縄張りだった)

2014-06-05 20:41:34
【黒火薬】 @powder_kw

(安価で良質な火薬を売り歩いていた【火薬売り】の噂は街のアンダーグラウンドな輩に一斉に広まった) (一日に売る量は限られるが、あちこちを廻る火薬売りは知らず知らずのうちに各勢力に"材料"を与えていた) (ゆっくりと、じわじわと) (街中に、大量に、確実に)

2014-06-05 20:49:12
【黒火薬】 @powder_kw

『"アイツ"が売り歩かなくなったのが今週の頭だ。材料が手に入らなくなった途端、手持ちを計算して有効に加工するよう動き出したのだとすれば…同時に、他の奴等も察して動き出す』 『あー、何処も予約でいっぱいって事は、まだ完成していないって事だし…でも時間的にそろそろ、か。成る程…』

2014-06-05 20:58:26
【黒火薬】 @powder_kw

(表沙汰に噂が立っていないのは、企み合う勢力が弱小で、警察も日頃鬱陶しがる程度だと言う事) (表で騒がれる殺人鬼騒動で誰も見向きもしなかった事) (そもそもこの街の治安が最低だった事) 『最悪だな』 『全くだ』 (二人は頭を抱えた)

2014-06-05 21:04:44
【黒火薬】 @powder_kw

(街外れの廃屋) 『し、知らない!俺はただ金を渡されただけで!他に同じ仕事を受けた奴なんて知らないんだ!』 (顔中ぼこぼこに殴られた中年が泣きわめく) (舌打ち、蹴りを入れて投げ捨てる男が振り返った) 『おい、これでどれだけ済んだ』 『あー、えーと、半分…くらい?』

2014-06-08 17:55:25
【黒火薬】 @powder_kw

(金髪の青年が、手持ちの地図と手帳を照らし合わせて首を傾げる) 『…糞が、もう時間の問題だな』 『殆ど蒔かれてるっすね。…もう警察に報せた方が…』 『糞火薬と一緒に売り歩いた手前ぇもしょっぴかれるぞ』 『頑張って探します、はい』

2014-06-08 17:58:08
【黒火薬】 @powder_kw

【小さな木箱】 (街のあちこちに設置された爆弾) (頑丈に封されている) (時限式で現在はまだ安全状態) (強い衝撃を加えると爆発します)

2014-06-09 14:38:07
【黒火薬】 @powder_kw

『…と、ここで良いんだっけか』 (ボロ服を着た浮浪者が、手のひら大の木箱を路地裏の物陰に置く) 『へへっ、こんな仕事で金が手に入るなんてな』 (脇にもう2つ、木箱を抱え、浮浪者は次の路地裏へ走り出した)

2014-06-09 19:10:38
【黒火薬】 @powder_kw

(真っ暗な路地裏に、木箱を持った孤児達がこそこそと動いている) 『これでごはんがもらえるねー!』 『しーっ、みつからないようにしなきゃ』 『えへへ、つぎはどこだっけ?』 (孤児達は暗い路地裏をぱたぱたと駆け抜けていった)

2014-06-09 20:12:59
【黒火薬】 @powder_kw

『おい、これ爆弾なんだろ?むかつくサツの建物にわんさか置いてやろうぜ!』 『馬鹿野郎。警察署にそんなもん置いてったら怪しまれるだろう』 『裏のごみ捨て場とかさぁ、近くの路地で良いじゃんよぉ』 『俺は行かねぇぞ』 『ちっ、へたれが。いってやらぁ』 (チンピラが二手に分かれた)

2014-06-09 20:52:41
【黒火薬】 @powder_kw

(夜の路地裏に片腕の少年がやって来る) 『…これで、良いんだよね…?』 (怪しい木箱を、積まれたガラクタの中に隠し、少年は逃げるように走り去った)

2014-06-09 22:55:58

「界隈爆発事件」

太陽が照らす明るく温かな空気を震わせたのは、大きな轟音と人々の悲鳴。血肉は飛び散り、動かない我が子を抱いて母親は助けを乞う。しかし誰も母親に手を差し伸べたりはしない、なぜならば皆一様に逃げ惑う被害者達だったのだから。

知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

「・・・・・・」 塔の窓から、店主が街を見下ろしている。一人の孤児が二人で重そうな木箱を持ち運び、隅に置いていた。 「・・・昨日から良く見るな。それに、・・・街が“火薬”臭い」 店主は目を細めて静かに呟く。後ろにいる世話係の男も険しい表情だ。

2014-06-10 10:22:34
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

「君に教えて貰った通りならここから見えるアレも爆弾だよ。私が見た木箱の場所は君の持つ地図に書き記した」 「・・・でも全部じゃない」 「うん、だから」 くるりと店主は世話係へ向き直り、薄く微笑む。

2014-06-10 10:24:28
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

「幸せな人間が多くいる場所をみるといい。浮浪者や孤児がばらまくならば笑顔をぶち壊したい所”に彼らはきっと置くよ」 「・・・・・・・ああ」 胸糞悪そうに、男は呟いた。

2014-06-10 10:25:43
【黒火薬】 @powder_kw

「青猫堂に寄ってください、お兄さんが地図を持ってるんです」 『(頷く)』 (馬の蹄を鳴らし、裏通りを駆ける) (通りを曲がったら…その目の前に浮浪者がふらりと横切り、奴隷が仰け反った) 「ひゃあ?!」 (若者が投げ出されそうになり、奴隷にしがみつく) (浮浪者の手には…木箱)

2014-06-10 10:26:12
【黒火薬】 @powder_kw

…こいつ! (浮浪者がセントールに驚き、よろめく) (手の木箱がぐらりと地面へ傾いた) 「わぁあ!」 (若者が飛び降りてそれをかっさらう) 『な、何するんだ!これは俺のだ!返せ!』 「おじさん、これが何か知ってるんですか?危ないでしょう!」 『爆弾だろ!』 「…えっ」

2014-06-10 10:29:44
【黒火薬】 @powder_kw

(浮浪者が若者に掴み掛かろうとするが、奴隷がそれを遮る) 『くそ!返せ!それであいつらぶっ飛ばすんだよ!』 「あいつらって…」 (浮浪者の向かおうとしていた先には、表通り) (開店したばかりの賑やかな笑顔が路地の向こうを行き交っていた) 「なんで…」 (浮浪者が若者に殴りかかる)

2014-06-10 10:32:33
【黒火薬】 @powder_kw

『返せ!みんな死ねばいいんだ!畜生!』 (セントールが若者を庇う中、浮浪者は喚きながら暴れだす) (木箱に強い衝撃が掛かると爆発すると言っていた) (若者は逃げ惑うようにセントールの後ろへ後ずさる) 『くそ!くそ!』 (諦めた浮浪者が、路地裏へ逃げていった) 「そんな…」

2014-06-10 10:35:28
【黒火薬】 @powder_kw

(金髪の青年が裏通りの奥のアンティーク調の外壁の店に立ち寄る) 『おおーい変人!お前の大好きな女神サマが通りで待ってるぞー!…あれ、開いてる?』 (いつもなら開店までがっちりと戸を閉めているが、今日は鍵が掛かっていない) (青年が店の中を覗き込んだ) 『おーい…え』

2014-06-10 10:43:35
【黒火薬】 @powder_kw

@Maksim_xxxxx (青猫堂の扉がノックされる) 「おにいさーん!」 (木箱を抱えたままの若者がやってきた)

2014-06-10 10:46:02
1 ・・ 22 次へ