10周年のSPコンテンツ!

マスメディアで日本初のボカロ記事を執筆した丹治記者による初音ミク生誕7年振り返り

おそらく日本で初めてとなるマスメディア上での記事(※)を執筆された朝日新聞の丹治吉順記者(朝P)による「初音ミク誕生以後」のまとめです。丹治記者は著作権問題をテーマに長らく記者活動をされており、一連のツイートではこれまでの著作権とこれからの著作権についても語っていらっしゃいます。 (※)TBS系アッコにおまかせのようなテレビ番組や雑誌などで断片的、あるいは他の特集と包括して取り上げたケースはあったので「ボカロ記事」と表現しました。
ボカロ 初音ミク 著作権 VOCALOID
142
3103.net @3103net
↑ ☆著名P本スレ次々登場、あげくに朝P登場ハジメテノスレタテ? 2chのVocaloid総合スレに次々の著名Pがご挨拶 朝P(@tanji_y )が登場するも901番を踏み、スレ立てできなかった900番のかわりに、ハジメテノスレタテ(伏線) #初音ミク生誕祭2008
丹治吉順 a.k.a. 朝P @tanji_y
いやー、最初にして最後のスレ立てでしたねー>RT
丹治吉順 a.k.a. 朝P @tanji_y
初音ミクの曲で何を最初に聴いたのか、覚えていない。発売予定は前から知っていたし、話題が先行する様子も見ていた。いわゆる「初音ミク現象」のはじまりに近い時期から確実に見聞きしていたのに、最初の曲の記憶がない。気がついたら、奔流のような楽曲の群れに囲まれ、無我夢中で聴き続けていた。
丹治吉順 a.k.a. 朝P @tanji_y
最初の1~2カ月は他の感覚が麻痺したかのように、ミクとMEIKO、KAITOの歌ばかり聴いていた。こんなことが本当に起きるものなのか、実際に目の当たりにしながら、信じられない思いばかり先行した。数知れない人々の予期できない動きの共鳴。いわゆる「創作の連鎖」。ただ震えて聴いていた。
丹治吉順 a.k.a. 朝P @tanji_y
記事にしようと考えたこと自体、はるかに後だった。著作権問題を長く扱ってきた自分からすれば、これが創作の歴史上の事件であることはすぐに気づいてしかるべきで、なぜ何カ月もの間、記事化を思いつかなかったのか。今でもわからない。あの時はただただ、目の前の現象に圧倒されていた。
丹治吉順 a.k.a. 朝P @tanji_y
数知れない人々が、まるで自然に同期したかのように次々と作品を発表し、あろうことか彼女のキャラクターまでも創造してしまった。彼女の性格、存在の意味、 作り手や聴き手との関係性までも。「どんなSF作家も想定しなかった」と誰かが言った通り。瞬く間に彼女は、血の通った存在になった。
丹治吉順 a.k.a. 朝P @tanji_y
「これは記事にできるじゃないか。いや、しなければダメだ」。そう思いついたのは、2007年10月半ばか末ごろ。後から考えると本当に遅いが、それくらい前代未聞の現象だったからだと思う。記事化を決めてからも、紙媒体なぞで一体どう紹介していいものか、何度も立ちすくんだ。
丹治吉順 a.k.a. 朝P @tanji_y
記事化を提案した編集会議では、皆わかったようなわからないような顔をしていた。一人の大先輩記者が「かなり先進的な現象だね」と助け船を出してくれ、編集長も「何だかよくわからないけど、面白そうだな」と決断し、掲載が決まった。
丹治吉順 a.k.a. 朝P @tanji_y
当時所属していた朝日新聞の週末版beは、1~2カ月先の企画を決めて紙面化していく。雑誌のような媒体。提案が11月にずれ込んだこともあり、掲載は翌年2月初め。「電子の歌姫」という言葉を見出しに使うことだけは早々に決めたが、内容は試行錯誤。でも書いていてこんなに楽しい記事はなかった。
丹治吉順 a.k.a. 朝P @tanji_y
初音ミク現象の何が画期的だったのか、今ではいろんな人がいろんなことを語っている。自分が語れるのは「人は作品に感動したとき、その思いを込めて他の人に伝承する」ということ。それは創作の歴史の先祖返りであり、原点への回帰でもある。最新技術のボーカロイドとネットがそのことを可能にした。
丹治吉順 a.k.a. 朝P @tanji_y
複製技術のなかった時代、人々は作品を口伝えや筆写、模写で伝えるしかなかった。叙事詩が韻を踏み、定型のリズムを多用するのは、口承で伝える際に間違えないための技術だ。それでも「版」のない時代の人々は、作品を伝える際、大なり小なり必ず自らの「解釈」を交えて伝えていただろう。
丹治吉順 a.k.a. 朝P @tanji_y
人は作品を他の人に伝える際、自らの感動を上乗せする。感動しなければ人に伝えようなんて思うはずがない。印刷技術が登場する前の作品の伝承は、常に大なり小なりの「改変」を伴っていたはず。だが印刷によって「版」という名の「オリジナルの存在」が現れたとき、その伝承の原点は一度見失われた。
丹治吉順 a.k.a. 朝P @tanji_y
自分にとって初音ミク現象の本当に画期的な点は、一度失われたその伝承の原点に、目もくらむような速さと規模で回帰して見せたことだ。作品に感動したとき、人は自らの思いを乗せて伝えずにはいられない。「創作の連鎖」はその原点回帰。コメントやタグなどニコ動の仕組みが総動員でそれを後押しした。
丹治吉順 a.k.a. 朝P @tanji_y
著作権制度はオリジナルを絶対視する。それは半分は正しい。オリジナルが生まれなければ創作は何も始まらない。けれど「西遊記」を下敷きにした物語が今も書かれ続けるように、創作には人間の性質に根ざした伝承の仕組みが要る。著作権制度のその数百年の蒙を、初音ミクは一気に啓いてみせた。
丹治吉順 a.k.a. 朝P @tanji_y
初音ミクが席巻したこの7年間で、オリジナルと二次創作は常にバランスの上に成り立っていると、確信をもって言えるようになった。二次創作は、人々が作品を伝えるもっとも自然な方法への原点回帰だった。技術が発達する前は、人々は皆そうやって、作品とそれへの愛を伝えていた。
丹治吉順 a.k.a. 朝P @tanji_y
著作権制度は間違いなく自分の専門分野だけれど、これを調べてきたこと自体が、初音ミクに出逢うための準備だったのかも知れないと思うときがある。著作権制度が創作にはめた枷と、それを解き放った初音ミクの歴史的意義を理解するには、著作権の勉強が不可欠だった。
丹治吉順 a.k.a. 朝P @tanji_y
繰り返しになるけれど、初音ミク現象の意味は、オリジナルと二次(n次)創作を両輪とすることで、創造と伝承の原点を示した点にある。その二つは本来不可分で、オリジナルが保存できない時代に、人々は二次創作しながら作品を伝えていた。一度は失われたその姿を、初音ミクが見せてくれた。
丹治吉順 a.k.a. 朝P @tanji_y
…ということで、こういう御託を述べないと、誕生のお祝いもできない面倒な大人が、ようやく言いたいことを言います。初音ミク、誕生日おめでとう。そしてボーカロイドとその文化に関わる全ての皆さん、ありがとうございます。皆さんこそが、私の人生をこの上なく豊かにしてくれました。

mnty@ツンデレ詐欺P @tsundere_sp
@tanji_y 初めまして。私は実はその記事を見て、ニコ動の会員になり曲や動画を作り始め現在に至っております。それまでにも雑誌等で知ってはいたのですが、あの記事がなかったらスルーだったかもしれません。フォローして頂いていたようなのでリプ送らせて頂きました。ありがとうございます。
丹治吉順 a.k.a. 朝P @tanji_y
@tsundere_sp 記事を書いた者にとって、これ以上の感激はありません。こちらこそ、本当にありがとうございます。これからもどうかよろしくお願いします。
ありさと⋈ @ailsato
@tanji_y あの記事はスクラップして、今も保存してあります。 twitter.com/ailsato/status…
丹治吉順 a.k.a. 朝P @tanji_y
@ailsato ありがとうございます。スクラップされることは、記者の誇りです。心から感謝します。
旅烏(再びうつっぽい) @banraidou
「一度は失われたその姿」ってのは、実はきちんと生き残っていたけれどそこに目が向いていなかったんじゃないかしら。自分が親しんでいる中では落語などの伝統芸能がそうだけれど、多分クラシックやジャズなどもそういう部分あるんじゃない? twitter.com/tanji_y/status…
丹治吉順 a.k.a. 朝P @tanji_y
thinkCで著作権保護期間延長問題のシンポジウムを連続で開いていたとき、落語の師匠さんがパネルに招かれ、「落語ではネタの伝承とアレンジが当たり前」と話し、保護期間延長どころか、著作権制度自体に疑問を呈していました。西洋系の音楽では、ヒップホップが一番それに近いかも。

コメント

Yasuyuki Inoue @YaSuYuKi 2014年8月31日
二次創作の自由化は、著作権成立後でも、古くはクトゥルー神話があるし、現代的にはGPLの登場が89年。個人的には、楽曲の演奏を禁止する権利がない(応諾義務という)のと他の二次使用を同列にするのが良いと思う
Yasuyuki Inoue @YaSuYuKi 2014年8月31日
つまり、「適切な対価の支払い、もしくは、何らかの条件の充足」がなされた場合、誰も二次創作が行われることを拒否できないような制度が良いと考えている。それが悪用される場合は、例えば、名誉棄損や商標権の侵害などの別の法律で対処できる
ログインして広告を非表示にする
ログインして広告を非表示にする