【第二部-弐拾四】とある舞鶴の提督と深夜の電話 #見つめる時雨

提督,友人
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提督視点

とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

…五月雨が目を覚ました。そして現在、若干の気怠さを訴えてはいるがバイタルは正常、四肢の感覚も戻った。これは艦娘の"停止"の現象が発症直後に復帰できた、恐らく初の事例になる。しかし、何と報告書にまとめるべきか。僚艦が声をかけ続けたら意識を取り戻した? …うーん。

2014-08-30 22:55:22
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

それに、五月雨がまだ気怠さを感じているのも気にかかる。丸二日眠っていたからその反動かもしれないが…もしかしたら完全には阻止できてはおらず、延命状態になっているだけなのかもしれない。…要経過観察ね。

2014-08-30 23:01:26
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

26日。五月雨は夕刻から眠っていたが、そのまま目を覚まさなくなった。そして27日の直前に、呼吸が止まった。その後人工呼吸器に繋ぎ、何とか脳に酸素を送り続け、同時に夕張達による声掛けが継続された。28日早朝、呼吸運動が復活。その日の夜、五月雨は目を覚ました。

2014-08-30 23:05:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

五月雨から聞いた話。彼女は意識が落ちていた時、かつて艦だった頃の記憶が再び想起されていたらしい。その中で自分が深海棲艦になっていく夢を見たという。そしてそれを拒絶した結果、ゆっくりと綺麗な海に包まれて意識が閉じたと。…海に包まれる、これが"停止"だったのかしら。

2014-08-30 23:10:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

胸の内ポケットから鍵を取り出し、鍵穴のついた机の引き出しにそれを差し込む。私はその中から一冊のファイルを取り出した。重要機密指定の印が押されたそのファイルを開けると…そこには身体の一部、または半分以上が深海棲艦化した「艦娘」の写真が収められていた。

2014-08-30 23:15:24
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

…深海棲艦に身体を喰われた艦娘が、そこから深海棲艦化していく事例がある。それは戦闘経験を多く積んだ艦娘に特に見られる現象だった。このファイルに収められている艦娘達も、かつてそれぞれの鎮守府で主戦力となっていた艦娘だった。

2014-08-30 23:20:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

彼女は夢の中で深海棲艦になっていたと言った。でも実際には五月雨の体にはそのような症状は見られなかった…のではあるが、五月雨の夢とこのファイルにあるような実際に起きた艦娘の深海棲艦化、それは無関係ではないように思える。そして、"停止"現象も。

2014-08-30 23:25:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

ファイルのページをめくる。そこには極度のストレスにより精神が崩壊していた艦娘が、深海棲艦化したという事例があった。この艦娘は療養中で、前頁のような身体の物理的損傷はなかった、とある。心を病んでいたという点では、こちらの方が五月雨に近い。しかし、こちらは感覚麻痺は起きていない。

2014-08-30 23:30:31
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

五月雨は深海棲艦化を拒絶した。思うに、"停止"現象は深海棲艦化に対する防衛反応なのではないだろうか。身体が侵されてしまう前に、自死を行う。そういう機能が艦娘に備わっているのだとしたら。そしてそれは自分の意志で行われる。だから精神が崩壊している艦娘は"停止"が行われなかった。

2014-08-30 23:35:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

"停止"は艦娘の細胞レベルに刷り込まれた自死機能で、それを行うには事前段階を踏む必要があり、それには一か月ほどかかる。そしてその最後のきっかけが、心の内での拒絶。…ちょっと飛躍し過ぎかしらね。でも、辻褄は合うわね。

2014-08-30 23:40:23
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

でも、物理的損傷に起因する深海棲艦化には、これが働かない。おそらく、艦娘の深海棲艦化という現象は精神的要因と肉体的要因の二つがあるのだろう。そして"停止"は精神的要因に対する防御機能。…見えてきた…か?

2014-08-30 23:45:25
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

五月雨は目を覚ました。それは"停止"を止めたということ。夕張達の呼びかけによるものなのか、それはわからないが…。ここで疑問が残る。何故深海棲艦化しない? "停止"が私の仮説の通り防衛機能だとしたら、それが始まるはず。だか五月雨にはそれが見られなかった。

2014-08-30 23:50:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

もしかしたら、夕張たちが五月雨に"深海棲艦化を阻害すること"を行った可能性がある。そして…私が以前いた艦隊や、他の"停止"が起きている鎮守府と、"停止"が起きにくいうちの鎮守府との違い。そこにこの現象の謎を解き明かす鍵があるのかもしれない。…色々、調べてみようかしらね…――

2014-08-30 23:55:21

…深夜

とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

…ちょっと、こんな時間にかけてこないでちょうだい…。私、寝てたんだけど… 「いいじゃない、私と貴女の仲でしょお?」 …酔ってる? 「ええ?まっさかぁ。研究室で所長のお土産の日本酒飲むなんてこと私がするわけないでしょうよぉ」 はぁ…そうですか、そうですか…

2014-08-31 01:13:57
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「元気でやってるぅ?まさか貴女も前線に出てたりしないわよねぇ?」 …してないわよ。艦隊指揮が今の私の仕事です。 「そう、それはよかったわ」 そんな無茶苦茶するように見える? 「いいえ、念のため、よ。貴女も元は艦娘なんだから、下手に深海棲艦と接触して汚染されちゃ大変だからねぇ」

2014-08-31 01:20:45
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「ところで、メール読んだわよ。停止から復活したって本当?」 …それが本題ね。もっと早く電話がくると思ってたわ。 「ごめんねー、こっちも忙しくて」 まぁいいわ…ええ、メールの通りよ。停止から再覚醒して、尚且深海棲艦化が始まってないの。…これってどういうことだと思う…?

2014-08-31 01:26:19
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「そうねぇ…貴女が何もしてないっていうんなら、そのメンタルケアを担当した艦娘ちゃんが何かしたのかしらね。聞いてない?」 今回症状が表れた艦娘は、その担当させた艦娘に対して罪の意識を抱えてたようなの。それを許してあげたというか、気にしてないことを伝えてあげたみたいなんだけれど…。

2014-08-31 01:31:26
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「他には?」 いえ、特に何かしたとは聞いてないわ…。 「んー…それだけじゃ確かに不十分な気もするわぁ。貴女の説を私も支持するけど、あ、停止は精神汚染に対しての防衛機能ってやつね。そうだとしたら深海棲艦による汚染が大元の原因になってくるから、メンタルケアだけじゃ祓いきれないはず…」

2014-08-31 01:37:53
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「一度振り返りましょう。今回貴女のところの駆逐艦娘は、任務や大規模作戦での度重なる深海棲艦との接触により精神汚染が進行し、また、過去の記憶のしこりがそれを加速させた。そしてそれに対して艦娘の防衛機能である停止が作用し始め、汚染の進行による深海棲艦化を阻止しようとした。いいわね?」

2014-08-31 01:43:34
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

ええ、大丈夫よ。 「しかし、停止は機能しなくなり、また、何らかの要因によって汚染の進行による深海棲艦化も止まっている状態になった。そういうことよね」 そう…私もそのように解釈しているわ。停止については…おそらく艦娘自身がそれを解除したのだと思うわ。メールにも書いたけど…。

2014-08-31 01:49:32
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「停止は自力で解除できるにしても、汚染の進行を阻止するなんてとんでもないことよ。ホント、そのメンタルケアよコは何をしたの?えっと、夕張ちゃんだっけ?」 そう、夕張…。兵装フェチで機械を弄るのが趣味。水雷戦隊旗艦としての実力も確かだわ。 「兵装フェチねぇ…」

2014-08-31 01:54:33
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「兵装に精通してるとしても、今回は艦娘相手よ。そんなに特別なことができるとは思えないんだけど…」 そうよね…。明日また聞いてみるわ。 「うん。何かわかったらまた連絡ちょうだいねっ」 勿論よ。

2014-08-31 01:57:33
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「そうだ、あんたの鎮守府って相変わらず艦娘同士でお盛んなの?」 …何よ、突然…。 「前に行った時に思ったけど、あんたの鎮守府って艦娘カップル多いわよねぇ。他んところじゃあんまり見ないしさぁ。何で?」 何でって…あのコ達が勝手にカップルになってくだけよ…。恋愛禁止なわけじゃないし…

2014-08-31 02:04:35