熊手の買い方~手締めについて
11月19日は深夜0時から「二の酉」。浅草鷲神社に出掛けなければならない。熊手の買い方をよく聞かれるので、ちょいとだけ。
2010-11-18 12:42:36気に入った熊手が見つかったら、すぐ価格交渉に入らず、ワンサイズ上と思われる熊手の値段を聞いてみる。売り子が「申し上げるところ●●円」。そこで「もう少し何とかならないか」と聞いてみよう。「●●円にしておきますよ」といわれたら、およそそれが「祝儀込の熊手の値段」であることが多い。
2010-11-18 12:42:54そこでお目当ての熊手の値段を聞いてみる。ワンサイズ上の祝儀込価格が出ているので売り子は掛け値をし難く、妥当な値段をいわざるを得ない。ここで「もう一声まけてくれない」と言い、負けてくれた差額は「ご祝儀」に変わる。「もっと負けろ」は野暮で禁句。
2010-11-18 12:45:03縁起ものは「勝つ」て帰りたいから、交渉相手に負けてもらう。勝った身祝いで負けた相手に骨折りの「祝儀」を出すのが本来の姿。祝儀袋を準備しているのは上級者だ。交渉成立で熊手が降ろされ、金銭授受が済むと手仕舞いの「手締め」である。
2010-11-18 12:49:11手締めは古く、古事記の「国譲り神話」で、天照大神から出雲の国を譲るように言われた大国主命(おおくにぬしのみこと)が、長男である事代主命(ことしろのみこと)に相談したところ、手を打って承知の意志をあらわしたという神話が元という。余談だが柏手(かしわで)は拍手(はくしゅ)の誤伝
2010-11-18 12:50:09手締めはやっぱり江戸は「一本〆」または「三本〆」である。大きな熊手が売れると大騒ぎで、五本も六本も締める、野暮が看板の熊手屋もあるが、あまり真似をするものではない。粋にいかなきゃ。
2010-11-18 12:51:03手締めの一本は「お手を拝借、いよおーっ(祝おうの江戸訛り)」「チョチョチョン、チョチョチョン、チョチョチョン、チョン」つまり、九拍手にチョンを打って「丸」となり、「丸く治まりました」の意である。これを三度繰り返すのが三本〆。三は割れない最小の吉数であるところから。
2010-11-18 12:51:27熊手を買った人は一緒に手締めをしないと教わったが、どうなのか?とのお尋ねあり。お客さまに「お手を拝借」と、声を掛けているのだから、一緒に手締めをしたほうがよろしいと思う。双方納得した商いが済んだ「手仕舞」の手締めである。出来ればご一緒に祝い、〆ていただきたいのが私の考え
2010-11-20 16:04:22一緒に手締めに加わらないのは、真打ち披露などの際の落語家本人や、祝賀会の当人と妻子など。激励や祝意の「手締め」では、祝われる本人は頭を下げて感謝の意を表し、手締めには加わらない。商習慣の「手締め」とは異なるから。万歳三唱も同様、祝われる本人は参加しないと聞いたことがある
2010-11-20 16:05:27伝統的な世界に関わるお客さまも、「手締め」参加がほとんど。歌舞伎界では神谷町成駒屋さん一家、中村勘三郎丈一家、市川段四郎丈一家など。落語界では古くは先代円歌師匠をはじめ当代の圓歌師、先代圓遊師、夢楽師など枚挙の暇無く、一緒に締めて「丸く納まった」売買成立を祝っている。
2010-11-20 16:06:55漢数字の「九」にチョンを打つと「丸」の文字になる縁起からきたものだが、野球の秋期キャンプ打ち上げのニュース映像など見ると、「いよーっ、チョン」の一度打ち、「チョン〆」で済ませている。チョン〆では「チーム一丸」とはならない。丸は「チームの和」に通じるのだが。
2010-11-20 16:07:57せめて在京の球団くらいは「一本〆」でキャンプを打ち上げ、シーズンを終えた納会で「三本〆」くらいの気の効いたことは出来ないか。粋な野球人が現れるまでは、暫く待たなければならないかもしれない。
2010-11-20 16:09:23チョン〆は「一丁〆」とも言われる。宴会の上がりでこれをやられると、数人は間をはずして締まらず、恥ずかしい思いをしている。誰が始めたのか知らないが、チョン〆はやめて、その土地伝統の〆に還るべきだ。江戸に限らず大阪、博多など「土地伝統の〆」は、たまらなくいい。
2010-11-20 16:10:38