【IF二次創作な】「ハニービー・アゲンスト・ザ・ブラック・ザン」

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暗黒テキストカラテフェス「エミュレイテッド；ニンジャソウルズ」第一部「ザイバツ・デゾルーション」より：「ハニービー・アゲンスト・ザ・ブラック・サン」

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ゴウ！ゴウ！ゴウ！もはや寝静まったガイオン・シティ東部、寺社の立ち並ぶドラゴン区をジェットの轟音が切り裂いてゆく。規則的に並ぶ五重塔の合間、クラウドバスターは地上二〇メートルを窮屈そうに飛行する。暗雲の切れ間から覗く月光がフライトヘルメットのバイザーをつややかに照らしている。1

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目的はただ一つ。オムラの最新兵器、あの鉄とブースターの魔神をキョート城にねじ込むべく、誘導ビーコンを設置する。ともすれば原始的ですらある物理ビーコンは、ＧＰＳ衛星の死に絶えて久しいこの時代における最も確実な誘導方法である。社は賭けた。故にこの手段が、クラウドバスターが選ばれた。2

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だが。到達予定時刻はとうに過ぎている。クラウドバスターは速い。小回りと速度に優れる背負い式ジェットパックを使いこなすこのニンジャは、市街地での低空飛行を最も得意としている。加えて作戦時間には三〇％のバッファを織り込んである。それがなぜこうも遅れる？その答えは…「フィーヒヒヒ！」3

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クラウドバスターが五重塔の横ざまをすり抜けようとしたその時、塔の影からもう一人の飛行ニンジャが現れたのだ！「またもコンバンワ！もう名前は覚えていただけたかな…ドーモ！モスキートです！イヤーッ！」モスキートと名乗ったニンジャは長さ一フィート弱の鋭い毒タタミ針を三本同時投擲！4

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「ダムンシット！シツコイ！」クラウドバスターはニンジャ背筋力により急激にピッチを起こし宙返りでこれを回避する！メットに搭載されたナビゲーションＵＮＩＸがバイザーＨＵＤに次善のルートを映し出した、妨害による経路変更はこれが本日五回目！圧倒的に邪魔なのである！これが遅れの理由だ！5

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モスキートは背中から生える二枚のＰＶＣ羽根を細かく振動させ塔の裏へと再び身を隠す。このハイドアンドシーク戦法により一帯に林立する全ての五重塔は警戒度レッドの人工ストラクチャーと化した！「フィヒーッ！コンバンワ！」出現！回避！「こちらからもコンバンワ！」出現！回避！何たる厄介！6

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ジェットと羽ばたきでは当然速度に相当の差が生じるが、キョート・ネイティブであるモスキートには地の利がある。それに彼の類まれなるニンジャ第六感を加えれば、オノボリであるクラウドバスターの取るであろうルートなど用意に察知できる。昆虫羽根のステルス性がこの優位を更に補強する！7

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「フィヒーッ！」モスキートが下方より出現！たまらず上昇するクラウドバスター、だが障害物の無い上空ではジェットの直進力が実際有利なのでは？否である！開けた空間には開けているなりの脅威があるのだ！何かが、象牙色の何かが急降下で迫る！「これは任務だからァァァァァ……」ドップラー効果！8

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「仕方ないィィィィイヤーッ！」ご存知あろうか！彼こそがザイバツ・シテンノの一角、アイボリーイーグルその人である！弾丸の如きその急降下突撃がクラウドバスターをかすめる！弾き飛ばされるメット！「ンアーッ！」ジュラルミン色のロングヘアが夜空にこぼれた！「フィヒーッ！？」「アーッ！？」9

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「レ…レ…レディな！？夜空を駆ける！？インダストリアル・エンジェルな！？この俺としたことが今の今まで気付かぬとは！何たるシツレイ！セプクしたい！ぜひとも直結体液相互循環したいーッ！」「これは…拷…インタビューの必要が…アーイイ…ある…あるのでは…？」「無い！丁重に扱わねば！」10

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クラウドバスターはやむなく五重塔の屋根に着地！機を制するべく、またおのれらの欲望を満たすべく、妨害から攻勢へと転じるザイバツ飛行ニンジャ二名！アイボリーイーグルはＹ軸上アドバンテージを再確保すべく力強く羽ばたき上昇！汚染ヨダレを撒き散らしつつ不規則な軌道で迫るモスキート！11

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「これは…実際不利か」クラウドバスターが呟き、ホースの千切れた酸素マスクメンポを毟り取る。彼女は働きバチ、幾らでも代わりのある工業製品、目的のための道具に過ぎない。プランＢは無論ある。たとえ死のうと、次善の策が。だが…クランプで締めたような真一文字の口元から白い犬歯が覗いた。12

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「フィヒヒーッ！」モスキートの手首から近接戦闘用の毒針が展開！そのまま両腕を揃えてのダイブ突きだ！銅板カワラ屋根を転げ落ちるようにこれを躱すクラウドバスター、空中に投げ出されたその瞬間にジェットを開放し再び空中へと躍り出る！「なかなか一筋縄ではいかない！いじらしィーッ！」13

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グズグズに腐食した銅カワラから毒針を引き抜いたモスキートは標的との速度差を帳消しにすべく屋根を蹴って急加速！塔から塔へ飛び渡り徐々にその距離を詰めてゆく！「アイボリーイーグル＝サン！今だーッ！」「これも！任務！仕方ない！イヤーッ！」天より降り注ぐ十数枚のフェザースリケン！14

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「イヤーッ！」クラウドバスターはジェットノズルを急角度に曲げて弾雨から逃れる！だが自ら投擲したスリケンを追ってアイボリーイーグル本人がまたも急降下！クラウドバスターが迎撃の電磁ジュッテを引き抜くもエレクトロ起動が間に合わない！「イヤーッ！」「ンアーッ！」ＺＭ！鳥足キック直撃！15

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アイボリーイーグルはそのままカギ足爪でクラウドバスターの胴をグラップ、そして地面すれすれを滑空！鋼鉄オジゾウに、街頭ダルマに、テンプルの庭石に、手近な地上オブジェクトを見つけては鷲掴みにしたクラウドバスターを叩き付けてゆく！「ンアーッ！ンアーッ！」「アー…これがたまらない…」16

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ひとまずの満足を得たアイボリーイーグルは不意にその足爪を緩め、クラウドバスターを空中で開放した。全身打撲を負いながらも頭だけは守ったクラウドバスターは状況を瞬時に理解、故障を免れた腰と肩の予備スラスターを吹かして減速着地。それでもその衝撃は右スネを骨折させて余りある物だった。17

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「ヌゥーッ…！」ブザマに地べたで藻掻くクラウドバスター、そこへモスキートの毒牙が迫る。「フィーヒヒ！命のエンジンオイルを相互交換しようではないか！その…フィルタなど通さず…直結で！」もはや万事休す。彼女は腰のスターターチェーンを引く、エンジンは応えない。それでも。18

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彼女はオムラだ。深く繋がり合うパーツの一つだ。よしんば壊れようと、ただ一人止まる事など許されぬ。月光が陰る！シルエットが落ちる！ＤＢＯＯＯＭ！クラウドバスターを守るかのように地面が破砕！「フィヒッ！？」「アー…？」何事か！？「これは広告目的であり、我々は偶然ここに居るドスエ」19

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船首から竜骨を伝うようにしてＬＥＤが発光し、それが姿を表した。「これは映画の撮影が…」欺瞞合成マイコ音声が途切れる！「待たせたな、クラウドバスター＝サン」黒雲の月夜に浮かぶ威容！武装鬼瓦ツェッペリン、『ブブジマ』！「そうか。来てくれたのか」クラウドバスターは立ち上がる！20

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「やはり行くのか」ボンボリ間接照明光の中、男は言った。広いベッドに横たえられたその裸身は若干弛み、年齢が彼に与えたものを物語っている。ベッドの端に腰掛ける女もまた、腰から下をフートンで隠している他は何も纏っていない。「ああ」ジュラルミン色の髪を細いチェーンで纏めながら答える。22

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同じパーツに配された歯車。彼らの雇用主はそう表現するであろう。だが彼らはいささか深く噛み合いすぎていた。幾たびの死線を超えるには、少しばかり足りなかった。規格品ならぬ人と人とが繋がる時、必ず何かが歪む。オムラ社員たる彼らとて例外ではない。女…クラウドバスターが男に覆い被さる。23

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「ああ。行くさ」クラウドバスターの身体の所々には金属ソケットの穴が空いている。人体一つを自在に飛行させるジェットの出力は、とてもではないがハーネス固定程度で御し切れる代物ではない。ハードポイント接続が必要なのだ。男は、クラウドバスターのハチめいてくびれた腰に腕を回した。24