【邪悪の樹】決闘フェイズ――王の樹

『智の剣』陣営 『色欲』(@VIXI_atom) 『醜悪』(@kaituls) 『理の盃』陣営 続きを読む
0
【物質主義】(キムラヌート) @Evil_Quim

扉の向こうは一面の緑。外を模したような空間。 ぱたりと閉めた扉の裏には『王の樹』の文字。 「……征服王は斯く語りき、『地上は二つの太陽を黙認しえざるごとく、――』」 まったく悪趣味なことだと顔を顰めて舌打ちをした。扉に背を向け、森へと足を踏み出した。

2014-08-29 19:09:48
【物質主義】(キムラヌート) @Evil_Quim

そこは不思議な空間だった。伸びる木々は適度な距離を保ち、隙間から零れる木漏れ日は眩しくもなく暗すぎもしない。林床にはクローバーがびっしりと生え、黒い地面は欠片も見えない。白や薄桃、赤の花に混じり、小花がちらちら交じっている。何かが定期的に手を入れているような、奇妙に人工的な自然。

2014-08-29 19:10:30
【物質主義】(キムラヌート) @Evil_Quim

緑の上に座り込み、白い花を一輪摘んで、指の太さに合わせて輪を作る。残りの茎をくるくると巻きつければ、指輪の出来上がり。薄桃の花でひとつ、赤い花でひとつ、同じ手順を繰り返す。わさわさと絨毯をかき混ぜ探した四つ葉のクローバーを摘んだところで、緑の絨毯の奥、赤い地面に気がついた。

2014-08-29 19:11:04
【物質主義】(キムラヌート) @Evil_Quim

近づいてよく見れば、その赤も植物でできていて。赤片喰(アカカタバミ)だろうか。クローバーと同じ三枚葉の、けれど不気味に赤黒いそれは心臓を3つ、寄せ合わせた姿をしている。緑の地面を横切る赤絨毯は誘うように、まっすぐ何処かへ続いている。 「……こっちに行けってことなんだろうね」

2014-08-29 19:13:20
【醜悪(ヘスリヒ)】 @Akagachi_atom

「――Lizzie Borden took an axe. And gave her mother forty whacks♪」 たん、たん、 鼻歌を歌い、リズムをとるように軽快に、『色欲』は足を運ばせる。 たん、たん、たたん、 草木生い茂る森の中。扉から続くその道を真っ直ぐに。

2014-08-29 19:57:30
【醜悪(ヘスリヒ)】 @Akagachi_atom

「――And when she saw what she had done. She gave her father forty-one♪」 ぐしゃり、と。 上機嫌の彼の足元ではまるで狙ってるのかとでもいうくらい的確に、美しい花々が踏み潰され、散っていく。

2014-08-29 19:58:02
【醜悪(ヘスリヒ)】 @Akagachi_atom

周りに広がる美しい木々も、花々も、彼からしてみれば等しく似たような色をしたただの『背景』だ。ぐしゃり、ぐしゃりと花を荒らしながら、彼は進む。 「……空が綺麗なのは結構なことだけどさぁ、ずっと似たような道だねぇ。……もしかして、迷っちゃったのかな僕達」

2014-08-29 19:59:02
【醜悪(ヘスリヒ)】 @Akagachi_atom

しかも明るすぎて少し眩しいし、と仮面の奥でその瞳を細める。 色素の無い彼の目には、その晴天はいささか眩しすぎたようだ。 「扉になんか変なの書いてあったけど、僕学無いから文字なんて殆ど読めないし。あれホントは行き先書いてあったんじゃない?」

2014-08-29 19:59:40
【醜悪(ヘスリヒ)】 @Akagachi_atom

背後の大きな相方にそう話しかけて、訝しげに辺りを見やる。 ぐるりと辺りを見渡すが、見れば見るほど似たような道だ。『色欲』はこれは困ったとばかりに溜息をついた。 …実際には、彼の足元にこれ見よがしに行き先を示す赤い植物が生えていたのだが、『赤』を知らない彼は気づくことが出来ず。

2014-08-29 20:00:18
『醜悪』カイツール @kaituls

鼻歌を歌い、上機嫌な様子で先を行く『色欲』の後を、『醜悪』を抱きかかえた双頭のぬいぐるみは歩いていく。 「どうだろうねぇ。ぼくも文字読めないし、そもそも扉の裏なんて見てなかったしなぁ」 『色欲』の問いには、からり、からりと笑い、体から力を抜く。綺麗だなぁ。蒼天に目を細めて。

2014-08-29 21:00:39
『醜悪』カイツール @kaituls

ふと、地面を見遣った。緑の中の、赤。深緑の中に、ただ伸びる一筋の赤はやけに目を引いて。『醜悪』は、楽しげに笑みを深める。 「『色欲』」 弾んだ声。 「大丈夫だよぉ、行こ」 双頭が一歩、先へ。『色欲』を追い越し、愉しそうに赤を踏みつけ、歩む。まるで新しい玩具を手にした子供のように。

2014-08-29 21:00:42
【醜悪(ヘスリヒ)】 @Akagachi_atom

「へ?」 す、と後ろから抜き出てきた巨大なぬいぐるみに、幾らか瞬きをして、『色欲』はそんな声をあげた。 そのぬいぐるみに抱かれた『醜悪』は、まるでもう道がわかってるかの様な口ぶりで。 混乱しつつも、置いて行かれない様に早足で彼らとの距離を詰める。

2014-08-29 21:25:08
【醜悪(ヘスリヒ)】 @Akagachi_atom

「なになに、君、もしかして道わかるの?なんでなんで?君って猫みたいに直感で道がわかっちゃったりするタイプ?」 目を輝かせながらそんな事を問う彼の目には、やはり足元の真っ赤な目印は映っていないようだ。

2014-08-29 21:25:48
【醜悪(ヘスリヒ)】 @Akagachi_atom

凄い凄い、と手を叩けない代わりにぽんぽん、とぬいぐるみの身体を軽く叩いて愉快そうに笑う。 大きな大きなぬいぐるみ。大きさが違えば、歩く歩幅も勿論違う。 気を抜けばすぐ先へといってしまうそのぬいぐるみを、そのつど小走りで追いかけた。

2014-08-29 21:26:10
【物質主義】(キムラヌート) @Evil_Quim

赤い道を進んでいくと、突然視界が開けた。木々が疎らになり、一層高く伸びている。 そして、これまで一本道だった赤が二又にわかれている。ひとつは再び森へと進む道、もうひとつを目で辿れば一本の大樹。その樹を心臓の葉が傅くように取り囲む。これが「玉座」だと直感した。

2014-08-29 22:35:33
【物質主義】(キムラヌート) @Evil_Quim

勝てば――玉座に近づけば足が葉を蹴散らし、腰掛ければ腕が腰が潰れた葉の汁で汚れるのだろう。けれどそれを厭うて逃げ出せば己が血と心臓を散らすだけだ。 「ああ、本っ当に」 悪趣味。片頬を上げて吐き捨てる。

2014-08-29 22:35:50
【物質主義】(キムラヌート) @Evil_Quim

ここだけ他の花がないのも、緑が隠れるほど咲き誇る花に白いものしか見当たらないのも、おそらく「何者か」の趣向だ。 この見世物場(ステージ)ならば血の赤がさぞかし良く映えることだろう。 『物質主義』は大きく溜息を吐いて地面に座り込み、辺りいっぱいの白い花で花冠を編み始めた。

2014-08-29 22:46:00
『醜悪』カイツール @kaituls

『色欲』の問いに、『醜悪』は答えない。 ただ楽しげにからからと笑い、先を行く。小走りになる『色欲』を見て、双頭は歩く速度を落とした。それでも着実に、前へと進み。 視界が開ける。目の前には大樹がひとつ。 「すごいねぇ」 弾んだ声に、喜色が滲んで。嬉しげに、楽しげに『醜悪』は笑う。

2014-08-29 22:52:01
『醜悪』カイツール @kaituls

——と、其処に人影。小さなその姿は。 「『物質主義』?」 声が、弾む。もう会えないと思っていた彼がいた。 「ねえ、『色欲』、『物質主義』がいるよぉ!」 振り返り、道化へかける声も心なし嬉しそうに響く。見間違えるものか。ふふっと笑みを漏らし。 「『物質主義』!」 両手を、振った。

2014-08-29 22:54:25
【醜悪(ヘスリヒ)】 @Akagachi_atom

『醜悪』の後をついて暫くすると、なにやら不思議な場所へと辿り着く。 目の前に映るのは、一本の大きな大樹。 彼の故郷は世界でも名高い港都市であったから、この様に大きく育った木というものを見るのは初めてだった。わぁ、と喉から声が漏れる。

2014-08-29 23:15:21
【醜悪(ヘスリヒ)】 @Akagachi_atom

「凄いねぇ、木ってこんなにでっかくなるもんなんだ。僕こんな大きい木初めて――…『醜悪』?」 話しかけようとして、どこか一点を注視した様子の『醜悪』に、『色欲』は一度口を紡ぐ。 次に彼の口から飛び出してきたその名前に、『色欲』は仮面の下でその紅い目を見開いた。 「…『物質主義』?」

2014-08-29 23:16:12
【醜悪(ヘスリヒ)】 @Akagachi_atom

―――何故、今その名が出てくるのだ。 『色欲』が知っている中で、その名前を持つ人物は今も昔も一人だけだ。けれど、彼は先の戦いで帰って来なかった。なのに何故、こんな所にいるというのか。 …思い当たる可能性は、二つ。 苦々しげに、眉を顰めて、『色欲』はその人影へと視線を投げかけた。

2014-08-29 23:16:57
【物質主義】(キムラヌート) @Evil_Quim

耳に心地よい低い声。呼び掛けにぱっと顔を上げると、大きな双頭のぬいぐるみに抱えられた男の姿。 「『醜悪』!」 ばらばらと花を落としながら立ち上がり、両手を振り返す。「扉」を抜けて初めて、喜びの笑みを浮かべる。

2014-08-29 23:50:09
【物質主義】(キムラヌート) @Evil_Quim

直後、その笑顔が僅かに曇る。また会えると思ってはいなかった、だから嬉しい。しかしだからこそ、今この場所で遇いたくはなかった。 彼を見慣れたものならば、自嘲の色が雑じったことに気が付いたかもしれない。 『醜悪』の後ろから感じる苦々しげな視線に、自嘲は一段と色を増す。

2014-08-29 23:50:27
【物質主義】(キムラヌート) @Evil_Quim

しかしそれも一瞬のこと、眉を顰めた『色欲』の全身を視界に捉えた瞬間、笑みなんて消し飛んだ。 「『色欲』!?」 目を見開く。駆け寄ろうとして、何かに気が付いたように足を止める。 「その腕はどうしたんだい、ああいや、もう僕に心配する資格なんてないのだけれど、」 驚愕、動揺、心配。

2014-08-29 23:50:37
1 ・・ 4 次へ