ライトノベル界のカリスマ編集者三木一馬さん『作家さんよりもその作品に詳しくなりたい』
気が早いですが来年の自分のスローガン。少々語弊があることが前提になりますが、『作家さんよりもその作品に詳しくなりたい』と思っています。……当然そんなことは無理なわけですが、それくらいの意気込みで作家さんと打ち合わせていると、意外なエクストラが生まれるかもしれないというお話です。
2010-11-22 22:22:35あくまで自分の個人的な感想で恐縮ですが、作家さんもそれぞれスタイルがあると思います。本編に描かれていない内容まで緻密に考えて創作するスタイルと、必要最小限の内容しか意図的に考えず、編集からの質問や読者の反響を鑑みて当意即妙に裏設定に変換して創作するスタイルなどです。
2010-11-22 22:26:04前者は、高橋さんの『シャナ』や川原さんの『SAO』などです(“棺の織手”の設定が当初からあったネタとか、「コル」の由来を根拠含めて説明されたときとか、正直びびりました)。後者は伏見さんの、毎巻が最終巻です!という『俺の妹』の進め方とかです。
2010-11-22 22:26:26そんな作家さんのスタイルに依らず、ひとつ大事にしているのが、自分もその作品を書いた人に負けないように、『作家さんよりもその作品に詳しくなりたい』という意気込みで、うち合わせに臨むことです。「このキャラは普段何しているの?」とか、
2010-11-22 22:27:09「このイベント中、ほかのみんなは何してるの?」とか「こいつのテーマカラーって緑っぽいですね」とか「登場キャラが全員同じクラスにいたら、こいつはいじめられてて、こいつに助けられそうですね」とか。
2010-11-22 22:27:37もう少し掘り下げて外殻部分でいきますと、「このストーリーはこういうことを僕に伝えてくれたか」とか「叶わない夢っていいよね」とか「避けられない孤独ってむしろ格好いい」とか「この子を可愛く描くために、そこまでの300ページは存在しますよね!!」って語ったりとか。
2010-11-22 22:27:59その自分の妄想(すみません)を書き手さんに伝えたとき、「えっ! そんなこと気づきませんでした」と言われることがあります。これがエクストラを生む大切な要素だと思っています。
2010-11-22 22:28:30たとえば『ドクロちゃん』の名台詞(?)「ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ~♪」は、僕たち読み手の心に響くのではないか。つまり、“ネタ”としておいしかったので大プッシュしたわけですが、初稿時はまったく目立つこともない、おかゆさんにとっては他の文章に埋もれるくらいの言葉でありました。
2010-11-22 22:30:56それを、お約束セリフまで持っていったのは、こういううち合わせを経た上でのことで、結果それは良かったことだと思っています(今でもこの擬音は皆様の記憶に残っているのではないかと!)。
2010-11-22 22:31:10もちろん作家さんとしては「そんなことこのキャラは思ってねえよ」とか「そういう風に読まれたくないんだけどな」とか「あんたに●●しそうっていわれても、全然的外れなんスけど」とか、様々思っているはずで、それは「指摘する側が覚悟すべきリスク」として理解しておかねばならない大切なことです。
2010-11-22 22:32:11誤字脱字指摘だけでない、作品の世界観を語ったり、キャラクターの人生を考えたりすることによって、作家さん自身も気づかなかった作品の切り口や、キャラの深み、次の展開へのヒントやビジョンが見えてきたりするときがあります。的外れだったとしても、世界観の共有のための指針になるかもしれません
2010-11-22 22:32:30でもそれは、めんどくさいこと山盛りなので、作家さんはうぜーって思うかもしれません、そのときはきちんと空気を読んで退いて謝ることも大事です。
2010-11-22 22:33:52世界観を共有して、目指すところは、その作品をより面白くすることです。この作品を読んだ読者さんが、ドキドキワクワクできるか。面白い!と感じて、ふと寝る前に思い出したり、次の日の学校や会社で、その本の話題を誰かにしたくてウズウズしてしまう。そんな作品がつくれるといいなと。おわり。
2010-11-22 22:34:28