ラバウル少佐日誌:AL/MI作戦編其ノ壱

艦これ二次創作小説です。 軽空母艦娘及び航巡艦娘の過去捏造、若干のキャラ崩壊注意です。
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檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

------ラバウル基地内『少佐』艦隊区画執務室。#ラバウル少佐日誌 (1)

2014-09-09 23:07:06
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

部屋の中に置かれた、重厚な黒檀の机。 その上には無数の紙が散らばる。 歪な円、放物線、或いは何らかの武装火器に関する資料や、将又深海棲艦の解剖図……。 それ等全ての上に、どかりと二つの脚を乗せているのは、丸々と太った白い詰襟姿の男だった。#ラバウル少佐日誌 (2)

2014-09-09 23:07:55
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

デブの男は、卑しいニタニタ笑いを浮かべている。 少佐。 彼がそう呼ばれるのには大きく二つの理由がある。 一つは、本来ならば少将相当の力と実績を持つにも拘らず、上官達から快く思われないことで一向に昇進しない様子を、笑いものにするため。 もう一つは……。#ラバウル少佐日誌 (3)

2014-09-09 23:16:34
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「申し訳ありません、提督」「くッ……!」 頭を下げる銀髪の女。 睨む茶髪の女。 二人の衣服は、襤褸々々に焼け焦げている。 その前で、少佐は只々笑って……。 いない。 眼鏡の奥の目は、笑っていない。 #ラバウル少佐日誌 (4)

2014-09-09 23:23:07
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「しかしだ、千歳。お前達二人をこのまま使えば、ボーキサイトはMI作戦完遂までに底を突く」 「しかし索敵能力が……」 「龍驤では不足と言いたいか?」 「隼鷹使ってない時点で、変な拘り捨てるべきだと思うけど」 「お前は黙ってろ」 「何よ!?」 #ラバウル少佐日誌 (5)

2014-09-09 23:28:15
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

彼が少佐と呼ばれるもう一つの理由。 それは、この嫌味な男を指す隠語として使われていた呼称が定着した、というものであった。 #ラバウル少佐日誌 (6)

2014-09-09 23:33:34
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「さて、千歳。千代田はこの通りだ。私としては、君を残して彼女を龍驤に替え」「嫌!」 千代田が喚く。 「もしも私がいない間、千歳お姉に何かあったら……」 「そう思うなら、せめてその千歳よりマシな戦果を上げろ」#ラバウル少佐日誌 (7)

2014-09-09 23:39:57
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「士官学校時代は、千代田の方が成績も良かったのにね」 「何よ!」 地団駄を踏む、千代田。 「何よなによナニヨ、何よ!」 「何じゃない、この作戦から降りろ」 「嫌!絶対に、やだ!」 「お願い千代田、あまり私達を困らせないで」 「何ですってェ……!?」 #ラバウル少佐日誌 (8)

2014-09-09 23:47:31
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

千代田は般若が如き形相を、千歳にも向けた。 「『私』達……?このクソ豚だけなら未だしも、千歳お姉まで私を半人前扱いするっていうの!?もうお姉の事なんて知らない!龍驤さんの飛行甲板に『まな板』って油性筆ペンで書いて、今度から『まな板さん』って呼んでやる!」#ラバウル少佐日誌 (9)

2014-09-09 23:52:59
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

言いきるが否や、執務室を飛び出した千代田は走り去ってしまった。 「ああ……もう」 「構わん。どうせあいつもあの性格だ、頼る者は我等以外に存在しない」 項垂れる千歳も後を追う様に、しかし重い足取りで部屋を後にした。 #ラバウル少佐日誌 (10)

2014-09-09 23:59:45
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「……士官学校時代の先輩と後輩。そして『姉』の勧めで『妹』となる、か。面倒なことで」 一人執務室に残された彼も、その妙な空気から脱するべく部屋を出た、 その時。 「うおお」「ぐええっ!?」 廊下を走っていた茶色いブレザー姿の少女が、少佐とぶつかった。#ラバウル少佐日誌(11)

2014-09-10 00:04:55
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「痛っ……何だ、熊野か」 「何処に目ェ付けて歩いてらっしゃるの!?このド近眼メガネデブ!」 上品であるのか、下品であるのか……些か謎めいた罵声を、熊野は浴びせる。#ラバウル少佐日誌 (12)

2014-09-10 00:09:08
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「相変わらず、口が達者でいらっしゃる」 「それで私(わたくし)を褒めて詫びたつもり?豚の嘶きなんて、あのイギリス被れの年増戦艦が何時も飲んでる安物紅茶にも、劣りましてよ!」 不自然なまでに烈火が如き怒りを、熊野は少佐へとぶつける。#ラバウル少佐日誌 (13)

2014-09-10 00:13:13
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「あれ安物なのか?」 「ええ。私の御父様ならば、あれよりもっと素晴らしい香りと味のモノを調達する事を約束いたしますわ。まあ、少佐殿には一滴もくれてやりませんけど……っと?」#ラバウル少佐日誌 (14)

2014-09-10 00:17:11
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

どたどたとしながらも女性的な品格を備えた駆け足の音が、二人に近付く。 その足音の源へ、二人は振り向いた。 「おおー、提督じゃん」 「鈴谷。丁度いいところに」 「ちぃっす!」 鈴谷は、屈託こそ無いものの張り付いた様な笑みを一瞬で作って、少佐へ向ける。#ラバウル少佐日誌(15)

2014-09-10 00:21:26
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「私の堪忍袋の緒が切れる前に、早くコイツを連れて帰ってはくれないかね?」 少佐の問いに、何故か鈴谷は苦笑いのような、妙な表情をして見せた。 「いや……それは、うーん、無理かも」 そして、熊野へ向き直った鈴谷はポケットから何かを取り出して、彼女へ見せる。#ラバウル少佐日誌(16)

2014-09-10 00:24:34
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「ああ!良かった!」 それはウシガエルだった。 「お前、それ……妙なモン買うとるな、熊野」 「いや、違うんだよ提督、その……」#ラバウル少佐日誌 (17)

2014-09-10 00:27:10
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「鈴谷、『少佐』を見つけて下さったあなたには、何か褒美をあげなければなりませんわね!」 「何?」「ああ……」 はて?といった様な、無邪気な顔を、少佐へと向ける熊野。 #ラバウル少佐日誌 (18)

2014-09-10 00:32:50
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「どうかされまして?少佐殿には、何も言っておりませんけれど」 「いや、今お前、少佐と……」 少佐は、理解した。 「お前!」 理解してしまった。 #ラバウル少佐日誌 (19)

2014-09-10 00:37:40
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「何?これは私がここへ着任した記念として、三日目に御父様へ頼んで寄越させたペットの『少佐』。そこに立たれるは、この少佐とよく似た顔でありながら、全く愛嬌もクソも無いうだつも上がらない少佐殿。似て非なる、そう……少佐殿は差し詰め、コレの出来損ないですわ」#ラバウル少佐日誌(20)

2014-09-10 00:41:25
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「熊野ぉ!」 「ああ、もう……ねえ熊野やめようよ。こんな事してさ、後でどうなるか……」 「どうにもさせませんわよ少佐殿」 呆れて眉間を摘む鈴谷をよそに、熊野は普段の少佐に勝るとも劣らない、下卑た笑みを浮かべていた。#ラバウル少佐日誌(21)

2014-09-10 00:46:18
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「もしも私に腕を振るってみなさい、その腕はおろか、首を喪うよりも惨めな目に遭う事を約束させてあげますわ。鈴谷、間宮のアイスを二つ買ってから部屋へ戻りなさい」 吐き捨てた熊野は、悠々と二人を置いて歩きゆく。 #ラバウル少佐日誌(22)

2014-09-10 00:54:36
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「……申し訳御座いません、提督」 深々と、鈴谷は頭を下げた。 「あいや、鈴谷……」 普段の砕けた口調からは想像もつかない、あまりの落差に莫迦丁寧さをも感じる程の態度だ。 #ラバウル少佐日誌(23)

2014-09-10 01:00:57
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「そうやって頭を下げ続けてきたのか?あいつの代わりに、ずっと」 「熊野は早くに母を亡くし、御父様から尋常ならざる寵愛を受けて育ちましたので……」 「馬鹿親に甘やかされて、腐ったアホ娘といったところか」 鈴谷は更に俯いた。#ラバウル少佐日誌 (24)

2014-09-10 01:09:36
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「彼女はでも、身内には優しいんです。離婚した父親に引き取られて、……酷い目に遭って、だから私、小さい頃家出して、ずっと芦屋川の河川敷で暮らしてたんです」 少佐は、耳を疑った。 「……それは本当の事か?」「うん……あいえ、はい」 #ラバウル少佐日誌(25)

2014-09-10 01:20:11