「愛はきまぐれ。…だが、公正は義務である」 ― 帝政末期におけるロシア知識人のユダヤ人差別に対するアプローチ

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KangKim 김 강 @SleipnirAtNet

在日の属性を持つ誰かに「君の言説は差別だよ」と批判された日本人がいたとする。そこで彼が、「在日はなんでも差別という」「このままでは在日が嫌いになりそうだ」などと反発したらアウト。その時点で彼は偏見と差別を白状してしまったことになる。白状してしまったらもう、どうしようもないだろう。

2014-09-11 00:23:45
KangKim 김 강 @SleipnirAtNet

「何でも差別と言って批判してくる在日が嫌いになりそうだからやめてやる!」 ご自由にどうぞ。今までいろいろご苦労も多かったでしょうし。気が向いたらまたよろしくお願いします。我々にはやめたり再開したりする選択肢はなく、常にここにいるので、戻って来られてもすぐにお会いできるでしょう。

2014-09-11 00:59:04
直立演人 @royterek

マクシム・ゴーリキーは、筋金入りの親ユダヤ主義者としても知られるが、その彼は、同僚の作家レオニード・アンドレーエフの心に秘められたユダヤ人に対する微妙な感情を伝えている。これは、他者への贖罪意識が高じ過ぎると一歩間違えれば憎悪に転じてしまう危うさがあることを示していると思われる。

2014-09-11 01:04:34
直立演人 @royterek

レオニード・アンドレーエフ曰く「ユダヤ人自身にとって「居住区」や「人員制限」などが致命的で歴然たる事実であり、それが彼らの生活全体を歪めているとすれば、私のようなロシア人にとっても、それは、いつなんどき現れたかもわからない、背中にできて取り除けない醜い瘤のようなものとなっている」

2014-09-11 01:06:32
直立演人 @royterek

「どこへ行こうと、何をしようと、この瘤は私から離れることなく、夜更けにも夜明けにも私の眠りを妨げ、人々の間にいるときにも、私は当惑と恥の感覚で一杯になる」「彼らを好きになれない。彼らの前では窮屈な思いがする。彼らにお世辞を言ったり、慎重に接したりしなければならないと感じてしまう」

2014-09-11 01:07:27
直立演人 @royterek

「彼らは、自分たちの不幸な生活に対して私に非があると思っている。私が彼らにとっての罪人であり、迫害者であり、ポグロムの扇動者だとしたら、ユダヤ人と自分を同等の者と感じることなどどうしてできようか」

2014-09-11 01:15:02
直立演人 @royterek

ゴーリキーもまた、アンドレーエフ等の同時代のロシア知識人として、帝政ロシアによるユダヤ人差別や頻発するポグロムに心を痛め、贖罪意識を感じた一人だったが、ユダヤ人に対する嫌悪感とは無縁だった。彼らと同時代のコロレンコはこの二人とは対照的に、贖罪意識よりも社会的公正に徹底して拘った。

2014-09-11 01:28:27
直立演人 @royterek

ロシア革命前夜の1916年、帝政ロシアでユダヤ人が置かれた窮状に心を痛めるロシアの知識人たちが結集して『盾』という文集を刊行した。この文集には、ゴーリキーやアンドレーエフも小説やエッセイ等を寄稿したが、コロレンコは『ジャクソン氏のユダヤ人問題に関する見解』という評論を寄せている。

2014-09-11 01:35:17
直立演人 @royterek

1904年、コロレンコはアメリカに向かう汽船上で、ヘンリー・ジャクソンというイリノイ州出身のアメリカ人と出会う。ふとしたきっかけでユダヤ問題に話題が及んだ時、コロレンコと通訳の道連れは、ジャクソン氏が大のユダヤ人嫌いであることを知る。

2014-09-11 01:36:36
直立演人 @royterek

そこで道連れは、「では、ユダヤ人に平等権を与えることには反対なのですね?」と尋ねると、ジャクソン氏は憤慨して答えた。「前提から結論は導き出せない。自分がユダヤ人を嫌っていることは確かだが、だからといって彼らの権利を制限すべきではない。」

2014-09-11 01:37:33
直立演人 @royterek

「自分がグリーンピースを嫌いだからといって、それを出さないように要求する権利など私にはない。他の人が好きかもしれないから。あなたの質問について言えば、もしも私の国の市民が平等の権利を奪われたら、私はアメリカ人として侮辱を感じるだろう。」

2014-09-11 01:38:29
直立演人 @royterek

「ケンタッキー州の人間がイリノイ州で自由な空気を吸えないなんて、クソくらえだ」 ベイリス事件(1911年にキエフで起きたユダヤ人に対する血の中傷の冤罪事件)でこの言葉を想起したコロレンコはエッセイをこう結んでいる。「愛はきまぐれ、慈悲のごとく風に吹かれる。だが、公正は義務である」

2014-09-11 01:39:37
直立演人 @royterek

帝政ロシアの反ユダヤ主義的風潮に対するロシア知識人の「カウンター」活動については、拙稿「帝政末期におけるロシア作家のユダヤ人擁護活動――ソロヴィヨフ、トルストイ、ゴーリキー、コロレンコを事例として」(yaar.jpn.org/robun/bulletin…)を参照のこと。ヒントになれば幸い。

2014-09-11 01:52:38
直立演人 @royterek

ちなみに、ドイツ知識人の場合、コロレンコが描いたジャクソン氏が大のユダヤ人嫌いでありながらも筋金入りの反レイシストであったのに対して、この態度と一見正反対に見えながらも、実は同様のアプローチを採っていたと思われるの稀有な例が、ヴィルヘルム・フォン・フンボルトではないかと思われる。

2014-09-11 02:14:24
直立演人 @royterek

ハンナ・アーレントは「歴史のモラル」(『ユダヤ論集』所収)で、「わたしがほんとうに愛したのはユダヤ人全体であり、個々のユダヤ人ははっきりと避けた」というフンボルトが残した言葉を「おどろくべき、逆説的な言明」(「彼には多くの個人的なユダヤ人の友人がいた」)と位置づけこう述べている。

2014-09-11 02:19:20
直立演人 @royterek

「プロイセンにおけるレッシングやドーム、フランスにおけるミラボーやグレゴワール神父以来、ユダヤ人を擁護する者は、つねに、自分の議論を「個々のユダヤ人」、ユダヤ民族のなかの顕著な例外に基礎づけてきた。」

2014-09-11 02:20:06
直立演人 @royterek

「フンボルトのヒューマニズムは、フランスにおけるユダヤ人解放の伝統にしたがって、個々人を特別視することなく民族全体を解放することをめざすものである。そのため、彼の視点は同時代の人びとによってほとんど評価されず、また後代の解放ユダヤ人の歴史にもほとんど影響をおよぼすことはなかった」

2014-09-11 02:20:39