ジカ熱・デング熱・チクングニヤ熱媒介蚊ヒトスジシマカのしたたかな生きざま

2014年、これまで懸念されてきたデング熱の国内感染が初めて確認されました。国内感染の媒介蚊ヒトスジシマカの驚異的で したたかな生きざまを紹介します。
孵化率調節 ヒトスジシマカ デング熱 チクングニヤ熱 ジカ熱 生活史戦略
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  • 1.移動しない生き方

  • 今井長兵衛 @medanjin 2014-09-03 21:38:55
    [ヒトスジシマカ1] ヒトスジシマカは、2014年の輸入デング熱国内二次感染を媒介していると考えられる。本種は、興味深い適応戦略を進化させており、生態学的にも興味深い蚊である。簡潔に言えば、「移動しない生き方」を選択した種である。
  • 今井長兵衛 @medanjin 2014-09-03 21:50:41
    [ヒトスジシマカ2] 多くの写真に示されているように、黒色で足に白い縞模様があり、胸部背面に白い縦条がある。しかし、これらの白紋は羽化後日数が経つにつれて薄れ、肉眼では全身黒色に見えるようになるので、注意が必要だ。 pic.twitter.com/MeMLiebqbA
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  • 今井長兵衛 @medanjin 2014-09-03 22:23:47
    [ヒトスジシマカ3] 本種は、インドシナの熱帯季節林地域で起源した。そこでは、厳しい乾季が長く続き、本来の発生源である樹洞の溜まり水は、乾季の間に干上がってしまう。しかし、いずれ確実に巡ってくる雨季には、発生源は「復活」する。季節的には不安定だが空間的には安定な発生源である。
  • 今井長兵衛 @medanjin 2014-09-04 19:28:47
    [ヒトスジシマカ4] 生息場所が不適になったとき、動物には移動と発育休止という2つの適応戦略がありうる。移動して別の好適な生息場所を探すか、発育を休止して不適な時期をやり過ごすか、いずれかを選択しなければならない。
  • 今井長兵衛 @medanjin 2014-09-04 19:30:39
    [ヒトスジシマカ5] たとえば、動物の新鮮な糞は何時何処に落とされるか分からず、しかも、短期間に乾燥して利用できなくなる。このような時間的にも空間的にも不安定なものから発生する種は、移動するという戦略を採用せざるを得ない。
  • 今井長兵衛 @medanjin 2014-09-04 19:31:57
    [ヒトスジシマカ6] 蚊類の移動可能距離は、せいぜい10kmに過ぎないので、ヒトスジシマカの場合、乾季に発生源が干上がれば、移動しても乾季から逃れることはできない。それゆえ、その場に留まって発育を休止させ、雨期が巡ってくるまで待つしかない。
  • 今井長兵衛 @medanjin 2014-09-04 19:33:00
    [ヒトスジシマカ7] 実際、記号放逐法=標識再捕獲法で推定された日本(東京と長崎)のヒトスジシマカの移動距離は50~70mに過ぎず、せいぜい100mまでと考えられる。 ci.nii.ac.jp/els/1100038164… ci.nii.ac.jp/els/1100038185…
  • 今井長兵衛 @medanjin 2014-09-28 20:44:17
    [ヒトスジシマカ7図] Takagi et al. 1995 のTable 1より作成した標識蚊の分散実態。縦軸のY: 各地点10分間×9日間捕獲数。野生虫捕獲数の少ない2地点は、生息場所として不適な地点と考え、図から除いた。 pic.twitter.com/dF5D6lgTMt
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  • 2.卵の孵化反応性

  • 今井長兵衛 @medanjin 2014-09-04 19:34:34
    [ヒトスジシマカ8] では、ヒトスジシマカが移動せずに発育休止するとして、それは如何なる発育段階で可能だろうか。発生源が干上がった乾季をやり過ごすのは、幼虫と蛹では不可能、成虫か卵では可能である。ヒトスジシマカは卵で発育休止する方法を採用した。
  • 今井長兵衛 @medanjin 2014-09-04 19:35:30
    [ヒトスジシマカ9] ヒトスジシマカの卵が生息環境の変化に如何に反応して孵化率を調節しているかは、その一部を下記にまとめてある。 ci.nii.ac.jp/els/1100038151…
  • 今井長兵衛 @medanjin 2014-09-11 19:24:11
    [ヒトスジシマカ9図] ヒトスジシマカの生息環境 pic.twitter.com/Kq11qo8x2B
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  • 今井長兵衛 @medanjin 2014-09-04 19:36:43
    [ヒトスジシマカ10] 腰高シャーレに水を半分ほど入れ、短冊形の濾紙を半分水に浸かるようにシャーレ内壁面に付着させ、蚊の飼育ケージに2時間入れて自由に産卵させる。24時間後に濾紙を切り分けて様々な条件にさらして孵化率を調べるのである。
  • 今井長兵衛 @medanjin 2014-09-04 19:37:40
    [ヒトスジシマカ11] 僕が研究するまでに、水につけると卵は最初に多くが孵化するが、残りの卵は長期間にわたってダラダラと孵化すること、および卵を乾燥させてから水につけると一斉に孵化することが知られていた。
  • 今井長兵衛 @medanjin 2014-09-05 20:39:12
    [ヒトスジシマカ12] ダラダラと孵化する個体群を実験に用いるのは難しいので、すぐに孵化する系統と長期間孵化しない系統に分離することを考えた。しかし、この選抜実験は失敗に終わった。ヒトスジシマカは「純系」になることを拒否したのだ。多様な孵化反応の維持こそが適応的なのだろう。
  • 今井長兵衛 @medanjin 2014-09-11 19:27:06
    [ヒトスジシマカ12図] 選抜実験の結果 pic.twitter.com/tuvWfEGh1A
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  • 今井長兵衛 @medanjin 2014-09-05 20:42:45
    [ヒトスジシマカ13] 産卵後湿潤環境においた後、汲み置きの水道水につけてみた。驚いたことに、5日後と10日後に水につけると、産卵4日後に約40%が孵化した。つまり水に浸からなくても湿った状態にあれば、4割の卵が孵化したのである。水につけた翌日までにさらに40%が孵化した。
  • 今井長兵衛 @medanjin 2014-09-10 19:03:39
    [ヒトスジシマカ13図] 湿潤状態に曝されただけで孵化する卵も混在。 pic.twitter.com/za7PKATld4
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  • 今井長兵衛 @medanjin 2014-09-05 20:43:44
    [ヒトスジシマカ14] 産卵後3日間湿潤状態においた卵を蒸留水、汲み置き水道水、クロレラ添加蒸留水につけてみた。孵化率はクロレラ水>水道水>蒸留水であった。そこで、3段階の溶存酸素濃度の蒸留水を調製し、卵をつけると溶存酸素濃度が低いほど孵化率が高まることが分かった。
  • 今井長兵衛 @medanjin 2014-09-10 19:06:57
    [ヒトスジシマカ14表] 水に浸かった卵は、溶存酸素(DO)が低いほど高率に孵化する。 pic.twitter.com/H8mvP1XBPv
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  • 今井長兵衛 @medanjin 2014-09-05 20:44:30
    [ヒトスジシマカ15] 従来、ヒトスジシマカの卵は乾燥させてから水に漬けると一斉に僻化すると信じられてきた。それは累代飼育などで乾燥させて保存した卵を水に漬けると一斉に解化する(ように見える)からである。しかし、孵化率のデータは無かったので、調べてみた。
  • 今井長兵衛 @medanjin 2014-09-05 20:46:26
    [ヒトスジシマカ16] その前に、卵の乾燥に対する耐性を調べた。産卵後6時間以内に相対湿度75%、温度27℃で乾燥すると、7日以内に98-100%の卵が死亡した。一方、産卵後24-72時間湿潤状態に保った卵(胚発育進行)を同様に7日間乾燥させても、死亡率は1-2%に過ぎなかった。
  • 今井長兵衛 @medanjin 2014-09-05 20:47:53
    [ヒトスジシマカ17] つまり、産卵後1日以上経過した卵は耐乾性を持つ。ヒトスジシマカは1980年代前半に東アジア(おそらく日本)からアメリカへ渡った。日本で古タイヤに産まれた卵が古タイヤの輸出に便乗して渡米したのである。それは卵の耐乾性によって可能だったのである。
  • 今井長兵衛 @medanjin 2014-09-05 20:49:45
    [ヒトスジシマカ18] 産卵3日後の卵を7日間乾燥させ、その後で水に漬けてみた。すると、汲みおきの水道水(DO濃度約6ppm)に7日間浸けても、孵化率は10-17%に留まった。そこで、さらに40日間クロレラ添加水に漬けると、総孵化率は86-98%に達した。

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