ラバウル少佐日誌:AL/MI作戦編其ノ弐

艦これ二次創作小説です。 軽空母艦娘及び航巡艦娘、深海棲艦のキャラ崩壊注意です。
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檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「許しませんわ……あの年増空母ババア……っ!」 おぞましき『ヒス』な叫びは、鈴谷と熊野に割り当てられている、その部屋に置かれた小物さえも揺らす程の激しさだった。 「でも、生きて帰って来れて良かったじゃないの」 「当たり前ですわ!この私が敗死等と!」#ラバウル少佐日誌(2)

2014-09-11 00:33:42
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「本当に、良かったよぉ……」 青いパジャマ姿の鈴谷は、椅子に座る熊野を後ろから腕で緩く締める。 「辛気臭くてよ」 しかし不愉快そうに、熊野は身体をよじらせて、 「ありゃ」「とおーう」 下へするりと抜けた。#ラバウル少佐日誌(3)

2014-09-11 00:38:08
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

立ち上がった熊野は、はだけたピンクのパジャマの襟を直して鈴谷と向かい合う。 その表情は厳しく固い。 「鈴谷」 「な、何……?」 意外な展開に、鈴谷は後ずさった。 #ラバウル少佐日誌 (4)

2014-09-11 00:48:45
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「よもや私が生死の狭間、野蛮なる戦に立たされた等とは努努思う事無き様。私達はあの醜い豚に使われているのではなく、仕方なくあの者の頼みに応じ『狩り』を嗜む事としました……そう、それに相違無くてよ?」 「えっ……?」 「相違無くてよ!」 「あ、うん」#ラバウル少佐日誌 (5)

2014-09-11 00:54:11
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

酷くイライラした様子の熊野は、そのまま部屋をぐるぐる歩き回りながら続ける。 「それにしてもあの女、気に食わないですわ!」 「加賀さんのコト?」 「あんな女にさん付けは不要ですわ!」「ごめんごめん」 「あの豚男の肩を持つばかりか……!」 #ラバウル少佐日誌 (6)

2014-09-11 00:58:05
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「龍驤さんと千歳さんには手出し無用って、言ってたね」 「その言葉に何故駆逐艦娘達の名前が無かったのか、鈴谷は分かっていて?」 ……問いに対して、わざとらしく首を傾げた鈴谷へ、 「うおっ!?」 熊野は突如、殴り掛かった。 #ラバウル少佐日誌 (7)

2014-09-11 01:02:39
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

だが、咄嗟に鈴谷は腕を振るい、彼女の振り下ろされた腕を払った。 鈴谷は無傷だ。 「戦闘能力、或いは腕力でさえも、夕立と島風には敵わないとたかをくくられているから、そうに違いありませんわ……!」 「なら、頑張って強くなろうよ!」 「ええ……そのとおり」 #ラバウル少佐日誌 (8)

2014-09-11 01:06:11
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

目を見開き、鈴谷を睨みながらに熊野は笑む。 「今迄私は鈴谷に荒事を全て託していたけれど、此処では私自身が腕を振るわなければ理解出来ない愚図愚鈍の知恵遅れな脳筋ばかり……骨が折れますわね、鈴谷?」 #ラバウル少佐日誌 (9)

2014-09-11 01:23:11
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「航巡になってもおっそーい」 けたけたと笑う島風に、 「ひゃん!」 あともう少しで弾を当てられるまでに、ようやく熊野は戦いに慣れ始めていた。 「仲間撃つなんて信じらんない!帰ったら提督に言いつけるから!」 舌を出し、『あかんべえ』をして見せる島風。 #ラバウル少佐日誌 (11)

2014-09-11 01:45:00
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

対して、熊野は異様なまでに静かであった。 「大丈夫熊野? もうすぐ敵の拠点だから、ね?」 鈴谷の言をも無視し、旗艦熊野は唯々進んでいた。 #ラバウル少佐日誌(12)

2014-09-11 01:51:30
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

『熊野、直に敵北方方面主力艦隊が見えるだろう』 「承りましてよ」 『敵の通称名は北方棲姫。個体それ自体が司令官を兼任せし知能を持つ。充分に用心せよ』 「承りましてよ」 『おい、分かっているのか?』 「お黙り」 熊野は通信機を…… 握り潰した。 #ラバウル少佐日誌(13)

2014-09-11 02:06:30
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「熊野……!?」 「お黙り」 熊野の目は、誰も見てはいなかった。 ……否。 「大物か、小物か……。ハッキリしませんわね。この獲物は」 「へっ……?んん!?」 熊野は数十メートル先、小島に仁王立つ一人の幼い少女を見ていた。 #ラバウル少佐日誌(14)

2014-09-11 02:16:43
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「コナイデ…ッテ…イッテル…ノ……」 #ラバウル少佐日誌 (15)

2014-09-11 02:23:02
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「……ねえ、龍驤さん」 「何や」 鈴谷の向けた茫然の顔に、龍驤は向き合わない。 「アレが、敵……なの?」 「せやな」 巻物型の飛行甲板を、彼女は展開した。 「気乗りしぃひんね」 「これが……戦果の振るわなかった原因だったワケね」 #ラバウル少佐日誌(16)

2014-09-11 02:42:32
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

鈴谷は、千歳の方へも視線を送る。 やはり彼女も、手が鈍っているように見えた。 無論、より歳の近い島風や夕立は言うまでもない。 夕立に至っては、島風が尽く随伴艦を蹴散らし、残った北方棲姫へ砲口を向けるも、全く弾が当たっていない。 #ラバウル少佐日誌(17)

2014-09-11 02:45:40
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「沈ンデェッ!」 泣き叫ぶような声を上げて、北方棲姫は砲撃を仕掛ける。 龍驤が大破した。 だが、彼女は何時ものような調子の良い悲鳴を上げない。 「何が為に、ウチ等は……!」 ぼやく龍驤へ、 「人間が正義の鉄槌で、バケモノをぶち殺す為ですわ」 #ラバウル少佐日誌(18)

2014-09-11 02:48:25
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「ギャアアあァッ!?」 答えた熊野が、北方棲姫の左半身へ砲撃を当てた。 「痛イ……痛イヨゥ……」 「日本語がお上手なのねえ、『バケモノ』……!」 熊野の笑みは何時も通りのそれだ。 嫌味ったらしく、それでいて、今回だけはその勇壮な態度に根拠がある。 #ラバウル少佐日誌 (19)

2014-09-11 02:51:20
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

そう。 何時もと変わらぬ、不遜で滑稽な態度。 それが故に、狂っていたのだ。 「龍驤、さん?」 「ひッ……」 ニンマリと、熊野は彼女へ笑む。 「これは『戦争』に非ず、でしてよ。私達は、謂わばスポーツハンティングをしているに過ぎませんわ」 #ラバウル少佐日誌(20)

2014-09-11 02:54:37
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「あなた正気なの……!?」 千歳が、狼狽した声で、悲痛な涙を溜めた目で熊野へ問い、前を向くよう促す。 熊野が視線を戻した先では、倒れ込み、得体の知れぬ黒い液体を垂れ流しながら、息はより荒く、身体はより弱っていき動かなくなってゆく北方棲姫の姿があった。 #ラバウル少佐日誌 (21)

2014-09-11 02:58:10
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「チッ……目障りですわね。正気を問いたいのは」 「ああッ……」 熊野は、二度目の砲撃を行った。 悲鳴。 そして北方棲姫の身体が、衝撃でゴム毬の様に跳ね上がった。 ミトンを着けた右腕が、身体とは違う方向へと吹き飛んだ。 「私の方でしてよ」 #ラバウル少佐日誌 (22)

2014-09-11 03:01:44
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

最早、島風も夕立も黙り込んで、目を見開いて、熊野を視界に収めながら後ずさる。 「お子様方?火砲の撃ち方はこのようにして行いなさい。的は人語を解するだけで、鹿や兎と何ら変わりはありませんわ。さあ、」 魚雷発射管を熊野は弄りながら、続ける。 #ラバウル少佐日誌(23)

2014-09-11 03:06:07
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「止めは御譲り致しましょう。次の夜戦で、仕留めて見せなさい」 #ラバウル少佐日誌(続く)

2014-09-11 03:07:58