トルコのエリート教育~ガラタサライ大学

京都大学西山教行先生(@jnnNishiyama)の連続ツイートです。今回はトルコのフランス語系大学であるガラタサライ大学のお話です。
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西山教行 @jnnNishiyama

トルコのエリート教育 過日トルコのガラタサライ大学を訪れた。この大学は1992年に設立された国立大学で,19世紀以来のオスマントルコの親仏的事情を体現するフランス語系大学である。

2014-09-13 05:37:11
西山教行 @jnnNishiyama

この大学の起源は19世紀半ばに設立されたリセ・ガラタサライに遡る。このリセはそもそも宮廷の国家エリートを養成するために創設されたもので,当時のスルタンは第2帝政下のフランスに支援を要請する。

2014-09-13 05:37:17
西山教行 @jnnNishiyama

リセはフランスの支援を得て設立され,授業はフランス語により行われ,フランスから教師が派遣されるが,管理運営はトルコ側が実権を握るという形態だったようだ。

2014-09-13 05:37:38
西山教行 @jnnNishiyama

トルコ語や文学の授業を除き,教科教育はすべてフランス語で行われていた。リセ・ガラタサライはそれ以来,トルコとのエリートを養成してきた。

2014-09-13 05:37:45
西山教行 @jnnNishiyama

1990年頃まで,トルコの義務教育は6年間で,6歳から11歳までが対象だった。12歳から18歳までがリセに相当し,この6年間で,フランス語を入門からはじめて,教科教育を行うまでにいたっていた。

2014-09-13 05:37:52
西山教行 @jnnNishiyama

1990年頃より,トルコの義務教育は8年間に延長され,6歳から13歳までとなる。これに伴い,リセは4年間に短縮される。

2014-09-13 05:38:03
西山教行 @jnnNishiyama

ガラタサライ大学が設立されたのはその頃で,リセ・ガラタサライの卒業生を中心に,リセをモデルとして設立された。

2014-09-13 05:38:09
西山教行 @jnnNishiyama

設立に当たってはフランス政府との間で協定書が締結され,これがその後現在にいたるまで大学の定款として機能している。学生定員なども定められているため,トルコ政府の要望があっても,大学側はこの協定を理由に定員増などには応じていない。副学長はフランス政府が派遣している。

2014-09-13 05:38:18
西山教行 @jnnNishiyama

ガラタサライ大学は,フランス語圏ではないトルコにあるにもかかわらず,なぜフランス語系の大学なのだろうか。これはリセの伝統を継承するもので,エリートの養成をめざしているためである。その教育課程は興味深い。

2014-09-13 05:38:26
西山教行 @jnnNishiyama

入学者の半数はトルコ国内にあるフランス語系リセの卒業者に限られている。トルコ国内には,リセ・ガラタサライを含めて,4,5校のフランス語系リセが存在する。そこからの入学者に対しては大学においてフランス語学習は行っていない。

2014-09-13 05:38:32
西山教行 @jnnNishiyama

残りの半数の学生は大学に入学すると1年間のフランス語の補習を行う。この間はフランス語を週に24時間の授業を受け,そのほかに自律学習の時間もあるようだ。この補習により1年後にはB2のレベルに到達し,2年目からフランス語による授業を受講することができる。

2014-09-13 05:38:43
西山教行 @jnnNishiyama

この補習は学部と切り離された専門の語学学校で行われており,そこではフランス政府から派遣された20名のフランス人教師と20名のトルコ人教師がフランス語の準備教育に当たっている。

2014-09-13 05:38:48
西山教行 @jnnNishiyama

リセでフランス語をすでに学習してきた学生はフランス語の補習を受ける必要がないため,4年間で卒業できるが,フランス語の未習は卒業までに5年間かかる。

2014-09-13 05:38:55
西山教行 @jnnNishiyama

ガラタサライ大学は,経済行政学部,法学部,文学部,コミュニケーション学部,工学部から構成されているが,すべての学部のすべての科目がフランス語で実施されているわけではない。

2014-09-13 05:39:00
西山教行 @jnnNishiyama

たとえば,法学部の授業の90%はトルコ語で行われている。法学は国内法を取り扱う以上,国語による教育となるのは当然だろう。とはいえ,学生はフランス語,英語,トルコ語に加えて,トルコ法の知識を持つことから,英米仏の企業への就職に有利だという。

2014-09-13 05:39:10
西山教行 @jnnNishiyama

そもそもリセ・ガラタサライも国立で,学費はないらしい。付属の小学校も創設しており,その入学は完全にくじ引きによる。50名の定員に対して,3000名の希望者があり,くじ引きを行い入学者を決めるが,くじ引きには2~3万円かかるようだ。

2014-09-13 05:39:16
西山教行 @jnnNishiyama

ずいぶんと高いくじ引きと思うかもしれないが,入学すれば,リセの卒業まで学費は無料なのだから決して高い買い物ではない。リセの卒業後にガラタサライ大学に入学すれば,教育費はゼロになる。

2014-09-13 05:39:22
西山教行 @jnnNishiyama

外国語による大学教育を実施するために,どのようにして外国語教育を実施するのか,ガラタサライ大学は興味深いケースを示している。中等教育から徹底的に英才教育を行い,大学では外国語による教育を実施するか。

2014-09-13 05:39:28
西山教行 @jnnNishiyama

あるいは大学の初年度を完全に外国語教育に振り当てて英才教育を行うか。ガラタサライ大学がエリート養成に特化しているあかしは,2年前より学費を撤廃し,無償による教育を行っていることにも現れているだろう。

2014-09-13 05:39:34