【スワローズ妄想劇場】戦国絵巻燕の城 「冬が始まる前に」

スワローズ妄想劇場 @swa_mou

【スワローズ妄想劇場】戦国絵巻燕の城 最終話(前編)「冬が始まる前に」 #swamou #swallows

スワローズ妄想劇場 @swa_mou

【スワローズ妄想劇場】戦国絵巻燕の城 最終話(前編)「冬が始まる前に」 最後の力を振り絞った隣国への攻勢は、ギリギリのところで山田が一太刀を浴びせる事が出来たが、それで何かが決定的に変わった訳ではなかった。 傷つき、よろめく様にして南青山城へ帰る武将たち。 #swamou

スワローズ妄想劇場 @swa_mou

(皆、すまんな) そう思いながら小川公は色々な事を思い出した。 前城主が途中で行方不明になった事、尾張の軍勢をあと一歩の所で打ち損じた事、沢山の武将達との出会いと別れ。 (何が悪かったのだろう) 数年前に比べて極端に少なくなった旗印をぼんやりと眺めながら考えた。 #swamou

スワローズ妄想劇場 @swa_mou

(皆、頑張ってくれたのは間違いない。彼らの努力が足りなかった訳ではない。悔しいが、足りなかったのは…) そこまで考えた時、斥候に出していた谷内が駆け戻ってきた。 「申し上げます！安芸の軍勢が大挙押し寄せて参ります！」 我に帰って絞り出すように「そうか…」と呟く。 #swamou

スワローズ妄想劇場 @swa_mou

もはや、まともな抵抗など出来ないだろう。磨り潰さなければならない戦力。あと…あと半月で今年の戦いも終わるのに。 だが、まだ来年も戦いは続くのだ。若い命を散らせる訳には行かぬ。 いま、自分に出来る事は…未来に種を撒く事。 「真中！」小川公が家老の真中を呼び寄せる。 #swamou

スワローズ妄想劇場 @swa_mou

「はっ、敵ですな。」戦場で刀を振るってた頃に比べてだいぶ肥えてしまった真中が駆け寄ってきた。 「もう、良いだろう」ぽそりと小川公が呟く。 「は？」迎撃方法について指示があると思っていた真中が聞き直した。 「真中よ、お前はここから生き残りをまとめろ。」 #swamou

スワローズ妄想劇場 @swa_mou

「…」 「私はここで奴等を食い止める。お前らは城に戻れ」安芸の軍勢が来るであろう方向に向き、刀を抜きながらそう伝えた。 「…お断りします」真中が妙に平坦な声の抑揚で答えた。 「許さん。未来のために生き残れ。」 「お断りします」今度は断固とした口調で返した。 #swamou

スワローズ妄想劇場 @swa_mou

「私もお断りです。その未来のために、小川様が必要なのです。ここで死なせる訳にいかないのですよ。」横から川端が口を挟む。 「私もお断りですね。南青山の銀杏並木はまだ青いですよ。」高井が槍で南青山の方向を指しながら叫ぶ。 #swamou

スワローズ妄想劇場 @swa_mou

「私もお断りです。未来の話どころか、まだ秋にもなってないじゃないですか。」石川も馬上から話す。 「同じく。まだ元気っすよ！ねえ谷内さん！」山田が笑う。 「なんでこっちに話を振るかな…私もお断りですけども。」谷内が山田から恥ずかしそうに顔を背けながら言った。 #swamou

スワローズ妄想劇場 @swa_mou

「おいおい、これじゃ謀反だ」小川公が呆れたように見渡した。 「謀反でもなんでもどうぞ。私も殿に殴られっぱなしで終わる訳にはいかないのですよ。」畠山が昔のことを蒸し返す。 「しかしな、領民が納得せぬ…」困り顔で小川公が答えると 「納得しない領民とは、あれですかな？」 #swamou

スワローズ妄想劇場 @swa_mou

真中が城下への道を指さす。 そこには彼らなりの武器を手に持った領民たちが安芸の軍勢を迎え撃とうとしていた。 「納得しない領民が、命をかけてこの土地を守ろうとはしないですよ。あの者達がいる限り、途中で死ぬ訳にはいかんでしょう。」真中は微笑みすら浮かべて言った。 #swamou

スワローズ妄想劇場 @swa_mou

(自分らしく静かに消えるつもりだったが…最後くらい派手に。か。) 顔を上げて声を張った。 「皆の者、御苦労だった。すまんがもう半月、私に付き合ってくれ！冬が始まる前に、もう一度、戦場(いくさば)を楽しむぞ！」そう叫んで安芸の軍勢の方へ一騎駆けした。 #swamou

スワローズ妄想劇場 @swa_mou

傷ついた武将たちも、最後の力を振り絞って後に続く。 南青山城城主、小川公最後の２週間が始まった。 (後半へ続く) #swamou