【戦国武将姫MURAMASA秘密のお話・中秋の名月に兎が跳ねるか??】
伏見屋敷――豪壮を誇る豊臣秀吉が築いた隠居の為の地であったが、実情は城と呼んで差し支えのないものだった。寝所には一人、豊臣秀吉が姿……寝室の障子の外に燭台の灯りと人影が仄かに灯った。 1
2014-09-24 19:56:06「佐吉」短く、感情も抑揚も無い秀吉の声は無聊を極めたものだった。「秀吉様、そろそろお休みの頃かと思いますが……今宵は中秋の名月です」 2
2014-09-24 19:56:24障子越しの佐吉――石田三成が淡々と答える。帰ってくる言葉は無い。三成は静寂の中、不意に覚えた胸の痛みに胸を抑える。これはきっと心の痛みだ……俺ではない、秀吉様の心の痛みだ……障子の向こうで傅いたまま三成は思う。3
2014-09-24 19:56:36「失礼します、秀吉様」障子に手をかけ、音を立てずに引く。猩々緋色の羅紗の寝台の上に秀吉は寝そべっている。秀吉に表情は無く、嘗て愛用した金の装飾は黒色となり、眼には炎色の狂気が瞬いていた。 4
2014-09-24 19:56:48「三成……何なの??」感情の籠っていない声――秀吉を知らぬ者が聞いたら暴虐を存分に振るう前兆のような、胆を握りつぶすような静かな迫力があった。三成は思う――どうしてこうなってしまったのか……不意にこみ上げる涙を、俯いたまま噛みしめては堪えた。 5
2014-09-24 19:57:35「今日は中秋の名月と聞いています??年に一度の名月、観月せねばと思いまして……」三成が更に障子を開くと庭園には薄と月見団子が置いてある。空には銀色の新円が煌々と光を灯している。6
2014-09-24 19:57:59「別に興味ない……」三成の言葉に対して秀吉はそう面倒くさそうに返し、背を向けた。三成は唾を飲み込み、「月には兎がつきもの……この佐吉が一芸お見せしようかと」秀吉の耳がピクリと動き、もそもそと寝台より上体を起こしては三成を見つめる。 7
2014-09-24 19:58:18「それで……見せてもらおうかな……」秀吉が言うと三成が寝室へと入り……しゃがみ込むと……「兎がぴょん……ぴょんぴょんぴょん……」三成はそう歌いながら寝室を跳ねる。 8
2014-09-24 19:58:30三成は自らの顔が熱を帯び、赤くなっている事を自覚しつつ、秀吉を見た。少し表情が動いた。が、それ以上は変わらない。三成には自らの恥ずかしさよりもそれが辛い…… 9
2014-09-24 19:58:50秀吉の冷めた目に意を介す事無く、更に歌を続ける。「兎の耳もぴょぴょんぴょん♪ぐんぐん伸びて月まで届く♪」三成の兜飾りが歌の節と共に伸びる。因みにこの振付と歌は大谷吉継が考えたものだった。 10
2014-09-24 19:59:03が、伸びていく三成の兜飾りが寝室の天井に突き刺さる。「えっ??」三成は驚きの声と共に抜こうとするががっちり刺さっては抜けそうにない。短く戻すと体が浮き上がっては足をばたばたさせる!!「わわっ!!ちょっと、これっ!!」11
2014-09-24 19:59:19天井に打ちつけられ、四苦八苦する三成は懐かしい声を聞いた。「むふふふふっ……三成はこう言う所で抜けているよねっ」視線を下げると燭台の灯りが懐かしい笑顔を、嘗て憧れた秀吉の笑顔があった。 12
2014-09-24 19:59:37「秀吉様……」「三成、天井を手で押すようにすれば抜けるよ!!ほらっ!!大丈夫!!受け止めてあげるからっ!!」秀吉がそう言っては手を広げ、三成も又天井から兜飾りを引っこ抜いた。浮遊感の後、秀吉と共に寝台へと倒れ込んだ。13
2014-09-24 19:59:50三成と秀吉は二人、共に笑いつづけていた。懐かしい笑い声……三成は思う。どんな事があっても秀吉様はやっぱり秀吉様だ……その為ならばどんな覚悟を、どんな地獄すら付き合おうと……この時改めて誓うのだった。 14
2014-09-24 20:00:20以下質問・回答・補足など
石宗先生はよんまさで出たじゃないですか…… @kagaminekonabe ????「さよならです」
2014-09-24 20:18:47( ≡×≡)惑わされちゃダメですよ……惑わされちゃ…… @sakageth このタイミングで怖い方の秀吉話…みの吉め!また惑わせてくる!!
2014-09-24 20:21:42@minokichi_ss 最近の大河クロカン見てると、仕方ないんだけどどうにももやもやした気持ちになりがちだったからこういうお話はほっとするよみの吉! ありがたい…
2014-09-24 20:25:55( ≡×≡)あちらのお話はこれから更に重くなりますからね…… @tamakittyxxx 最近の大河クロカン見てると、仕方ないんだけどどうにももやもやした気持ちになりがちだったからこういうお話はほっとするよみの吉! ありがたい…
2014-09-24 20:27:42