アサイラムVSマイアミ鎮守府 わくわく！合同演習！ Part5
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キタユキ
@k_t_y_k
ヘリが早朝の雀めいて飛び交う。幾重のバリケードの中、群衆は中央にある湖のフェンスに群がっていた。マイアミvsアサイラム合同演習、最終日。決戦の会場、ラグーン。ただ水が張ってあるだけの場所。華々しいナイトパレードの舞台は、血と暴力の受皿になるのを待っている。 #加賀さん観察日記
2014-08-19 06:58:41
キタユキ
@k_t_y_k
昨日の騒動を受けて警備の人数は5倍程に膨れ上がった。対空砲を所々に仕組まれた金網の外周には、黒い一角獣のマスクを被り、墨色のスーツを着た大小バラバラの艦娘達が後ろ手を組んでまだ見ぬ敵を睨んでいる。何故マスク、と由良に聞くと「迷彩代りと余興」らしい。 #加賀さん観察日記
2014-08-19 07:04:27
キタユキ
@k_t_y_k
既に加賀もあちらの羽黒も、水の上で臨戦態勢を取っている。あとは開始のアナウンス待ちだ。闘気で空気が澄む。試合前、羽黒に再会した時、あの加賀が珍しく嬉しそうに抱擁を交わしていたが、今はいつも通りだ。そして提督同士は中指の立て合いだったのはいうまでもないだろう。 #加賀さん観察日記
2014-08-19 07:15:46
キタユキ
@k_t_y_k
【えー、レ級出没警報の出てる中みなさんお集まりいただきありがとうございまち。長々と続いた演習もついに最終試合。真打登場でち】 マイクハウリングと共にゴーヤの口上が入る。今回は皆、罵声も上げず大人しく聞いているようだ。 【勝っても負けても血しか流れないでち】 #加賀さん観察日記
2014-08-19 07:22:51
キタユキ
@k_t_y_k
【この場を借りて、当会場の使用を快く許可して下さった取締役、由良さんに盛大な拍手を】 不知火の声に続き、VIP席の由良が立ち上がる。ビジネススーツに身を包む彼女に拍手の束が送られる。 【それでは最終試合、ルール無制限一本勝負。開始でち！】 #加賀さん観察日記
2014-08-19 07:25:53
くらつばめ
@kuratsubame
さぁさぁいよいよ演習も天王山!泣いても笑ってもこれで決着!対峙するはそれぞれの鎮守府のエース 勝つのは西の虎か、東の竜か!? 何が起こるか分からない、結果は天も分からない! 流れ弾に当たっちまったら運が悪いと諦めて死んじまいな！さァ最終戦一本勝負、始まりぃ始まりぃー！ #加賀観
2014-08-19 09:47:09
キタユキ
@k_t_y_k
初めに波が生まれた。 蹴り出したのはどちらでもなく、ただ自然の摂理に沿って、水面は揺らいでいた。 次いで、衝撃波。ぶつかり合う。拳と拳。鉄と鉄。鋼は高く共鳴し、空間を波立たせた。二つの腕を芯に、渦が巻く。殺意の渦。蒼天をも黒々と染め上げんとする、血に飢えた魂。 #加賀さん観察日記
2014-08-20 23:17:16
キタユキ
@k_t_y_k
空母と重巡だったが、そこには艦載機も砲も存在しなかった。純粋に、己の手と、足と、牙と爪、体だけがあった。船でもなく、人でもなく、ただ獣が二匹、いた。一撃目は、どちらが先とも言えぬものだった。ゴングは鳴らなかった。傍目から見るには静かな始まりだった。 #加賀さん観察日記
2014-08-20 23:24:34
キタユキ
@k_t_y_k
右と左で撃ちあって、すぐさま反対側を出す。加賀と羽黒のリーチは殆ど同じだ。空母と重巡には明らかな体格差がある。だが小柄な加賀型と大柄な妙高型では、僅差に等しい。故に、スピードだった。早く出した方が、早く相手に届く。腕の溜めで、合成タンパクの筋繊維が唸る。 #加賀さん観察日記
2014-08-20 23:33:14
キタユキ
@k_t_y_k
速さが勝ったのは羽黒だった。白手袋に包まれた拳、一見華奢なそれは加賀の左頬を掠めた。鋼鉄の皮膚が切れ、血が滲む。すぐに胴へと戻ろうとする腕を、加賀は片手で掴んだ。500kgを優に超える握力で、押しつぶさんと握り締め、引き寄せ、自身の腕をしならせる。 #加賀さん観察日記
2014-08-21 00:06:04
キタユキ
@k_t_y_k
打ち出された拳は奇しくも虚空へ伸びる。腕を掴まれたまま羽黒は半身を縦にし、半身を反らして加賀の鳩尾へ蹴りを食らわせた。内臓にめり込む触感の後、腕に食い込んだ指が弛む。一瞬の隙に振り払い、向き直ると、羽黒は加賀の頭を鷲掴み、今度は膝を同じ箇所へお見舞いする。 #加賀さん観察日記
2014-08-21 23:39:15
キタユキ
@k_t_y_k
膝打ちを食らって呻くが、加賀は倒れない。数回膝を入れた後、羽黒は掴む場所を頭部からサイドテールに変え、そのまま水面へと叩きつけた。水面に立つ彼女達にとって、そこは硬いアスファルトの面に等しい。鈍い音と共に、少しの水飛沫と血が上がる。加賀は再び呻き、唸る。 #加賀さん観察日記
2014-08-22 06:55:50
キタユキ
@k_t_y_k
羽黒はすかさず長い足を頭目掛けて振り下ろす。再び飛沫、だがそこに血は混じっていない。加賀は四つ脚で這い抜け、後方から飛びかかっていた。組まれた手がうち降ろされる－－が、腰に装着されていた二又の艤装が、それを阻んだ。アームに搭載された連装砲がひしゃげる。 #加賀さん観察日記
2014-08-22 07:03:22
キタユキ
@k_t_y_k
加賀が稼働音に右を向いた時、既に弾は放たれていた。至近距離、甲板の無いほう。すぐには方向転換できない。片腕で庇ってすぐ、白煙が上がる。焼け焦げた匂い。肩肉がえぐられている。幸い、痛覚は元から存在しないのも同じだ。こちらに向き直る羽黒の顔を、ベアクローで掴む。 #加賀さん観察日記
2014-08-22 07:14:52
キタユキ
@k_t_y_k
そのまま後ろに引き倒そうとするが、黙ってやられる相手ではない。先程自分がそうしたように、羽黒もまた渾身の力を込めて加賀の腕を握り潰す。以前より、力が増している。改二性能か。それに、指の隙間から垣間見える、この眼。殺したくて殺したくて仕方ないという眼。 #加賀さん観察日記
2014-08-22 07:24:21
キタユキ
@k_t_y_k
弓なりに背を反らす羽黒を、更に抑え込まんと力を込める。全体重を乗せる。前に闘った時も、こういう眼をしていた。思い返すと、その時はまだ怯えがあったのかもしれない。今は、違う。血だ。血が血に飢え、更なる殺戮を求めて口を開いている。そういった感情だけが、ある。 #加賀さん観察日記
2014-08-22 07:45:21
キタユキ
@k_t_y_k
彼女の提督との話を思い出す。彼らは、通じ合っていた。三千世界を焼き払い、血肉の海で微睡む。言葉で聴くよりも、二人を見た方が早い。羽黒と彼は、思念の底で混ざり合い、まぐわっている。語らずとも、胸中を曝け出している。そういうものを感じる。全て自分には、ない。 #加賀さん観察日記
2014-08-22 07:47:55