ゲンゴロウマン。生きろ、ゲンゴロウマン。たとえ正義を示せなくても。税金を無駄に使い込み、活動を続けてるとしても。ああ、ゲンゴロウマン。認知度が低い。ああ、ゲンゴロウマン別に似てはいない。ただ嫌がらせのためにゲンゴロウマン名義で登録されたヒーロー。
2014-09-25 12:57:46説明しよう! ゲンゴロウマンは、何があっても「死にたい」「消えてしまいたい」などとは絶対に思わない程度の能力を持つのだ! 取り立てて社交性に富んでいるわけでも、周囲に明るさを振りまくトーク力を持つわけでもないが、彼は粛々と生きることを放棄しないのである!
2014-09-25 13:04:31ゲンゴロウマンは、常にあいまいな笑顔を浮かべている! 人は、その表情が苦手なのだ! 好かれないヒーローがいて何が悪い! 誰も助けないヒーローがいて何が悪い! 自身がヒーローだと思っていれば、彼はヒーローなのだ!
2014-09-25 13:07:31ゲンゴロウマンは今日の昼にバナナと食パンを食べた。食パンには何もつけなかった。こだわりがあるわけではない。お金が無かったわけでもない。ジャムやバターを買い忘れていたわけでもない。なんか、「これでいいや」と思ったのだ!
2014-09-25 13:11:14驚くべきことに、日本人の60%がゲンゴロウマンを知っている! 意外と認知されているのだ! だが、誰も「助けてゲンゴロウマン!」と呼びはしない。呼べば助けに来るヒーローがいるなんて信じているほど、誰も若くはないのだ! ゲンゴロウマンはゆるキャラか何かだと思われている!
2014-09-25 13:14:25悪の組織「デス悪死なす」は、ユーラシア大陸全土に致死率99%のウィルスを撒き散らす、狂気のバイオテロを企てていた! 地元の警察が激しい銃撃戦の末に、それを鎮圧した! ゲンゴロウマンは半生タイプのうどんを茹でながら、そのニュースを横目で見ていた。茹で時間は11分であった。
2014-09-25 13:36:44日本人の大半がゲンゴロウマンを知ってはいるが、本当に存在するとは思っていない。だが彼は実在するのだ! 地元の人間にはさすがに知られているが、彼の行動半径はかなり狭いのだ! 地元の人間さえも、「なんだか分からない気持ち悪い物」と考えており、あまり話題には出さないのだ!
2014-09-25 13:41:19なぜ彼はヒーローなのか? 国にそう決められたからなのだ! 彼は一度だけ、大きなビルの大きな白い部屋に呼び出されて、ぶ厚い契約書を書かされたことがある。その日から、彼の預金通帳にはまとまった金が(彼はそう思っている、という程度の額である)振り込まれるようになったのだ!
2014-09-25 13:44:56彼は以前から、自分はヒーローなのだと思っていた。だが、それが職業になり、給金を貰うことには違和感を感じた。だがそれは、安定した収入という魅力の前には些事であったのだ! そして彼はバイトを探すことをやめ、銀行に行く回数が増えたのだった! 食べて寝て、筋トレをして、たまに本を読んだ!
2014-09-25 13:52:48国の認可を受けたヒーローになっても、彼の生活は変わらなかった! だが、ゴミの回収日を記したカレンダーをもらいに市役所に行ったとき、売店の隅に「ゲンゴロウマンストラップ」が売られているのを見つけたときは、さすがに気持ち悪かった! デフォルメされた自分を客観視できなかったのだ!
2014-09-25 13:57:38国からは何の指令も受けたことはない! 装備などが支給されたこともない! 他のヒーローがいるという話を聞いたこともない! 国はゲンゴロウマンに何をしたのか? 一応、ネットで調べれば、「ご当地ヒーロー」「試験的に」「広告効果」等のワードが散りばめられた、pdfのファイルが見つかる。
2014-09-25 14:06:20内閣府のサイトのすごく分かりづらいところにひっそりと置かれた、そのファイルを、ゲンゴロウマンは見た! だが、すぐに目がチカチカして眠くなったので閉じてしまった! おのれ官僚の書く文章! 怒りに震えながら、夜も遅いしゲンゴロウマンは眠りについた!
2014-09-25 14:13:10翌日、もう一度そのページを見てみると、ファイルは跡形もなく消されていた! ゲンゴロウマンは己の判断ミスを呪った! 保存をしていなかったのだ! ゲンゴロウマンは言いしれぬ不安を感じた! 来月のお金が振り込まれるかどうかが気がかりだったのだ!
2014-09-25 14:18:33ゲンゴロウマンは一時期、その国こそが「悪」なのではないかと思っていたことがある。だが彼は、この世の悪を許さない、などと思ってはいなかった。この問題は、そのうち意識には上らなくなった。心のさざ波は、やがて静かな湖面のようになり、淡々とした生活が戻ってきたのだ。
2014-09-25 14:25:32ゲンゴロウマンは、茶色い。緑がかっても見える、独特の色である! その特異な見た目は、群衆に紛れ込もうとも悪目立ちし、周囲の人々に不安感と、最悪の場合、嫌悪感すらをもたらしてしまうのだ! 白昼の街中を歩くたび、ゲンゴロウマンの周囲には大股で2歩分のスペースが空くのだ!
2014-09-25 14:35:51だがそんなに似ているわけでもないのだ! 言われなければ、誰もこれがあのゲンゴロウマンだなんて思わないのだ! ゆえに、なんかよく分からない気持ち悪い存在として、ただそこに居るのである! 通報されたことも一度や二度では済まないが、警察が実際に来たことは一度もない!
2014-09-25 14:39:44やがて、ゲンゴロウマンも周囲も、だんだんその事を考えるのをやめるようになっていった。だがゲンゴロウマンは、帽子を目深にかぶり、足早に歩きながら、時々ふと思うのである。果たして自分は、昔からこんな見た目をしていただろうか?と。昔はこんなではなかったような気がする。だが思い出せない!
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