【ニンジャの二次創作】メランコリック・ウォーター・イズ・フローイング　＃１

篠@やさすい愛好家マグロ @simanezumi88_n

◆■▲◆■▲◆■▲

篠@やさすい愛好家マグロ @simanezumi88_n

（当アカウントはこれからニンジャの二次創作投下マシーンとなります。これはやさすい漬けのマグロが水槽の中で見た夢であり、本編・公式とは一切関係がございません）

篠@やさすい愛好家マグロ @simanezumi88_n

（TLが私のツイートで埋まる可能性は実際高いです。煩わしく感じられたならリムーブ、ミュート等をお願いいたします）（専用の実況タグ #yasasui_nj が用意されております。生暖かい目で突っ込み感想何か実況用にどうぞお使い下さい）

篠@やさすい愛好家マグロ @simanezumi88_n

（こんかいのお話は拙作二次小説【フラッシュ・ダガー、バニシング・ソウル】からの続編となりますが、未見の方もごあんしんください）

篠@やさすい愛好家マグロ @simanezumi88_n

（ 【フラッシュ・ダガー、バニシング・ソウル】 ＃1 togetter.com/li/673467 ＃2 togetter.com/li/691564 ＃3 togetter.com/li/710429 ）

篠@やさすい愛好家マグロ @simanezumi88_n

【メランコリック・ウォーター・イズ・フローイング】 ＃１

篠@やさすい愛好家マグロ @simanezumi88_n

気に食わねぇ。あのブッダ曼荼羅が気に食わねぇ。曼荼羅のX軸Y軸の交点に運命が記されているような感覚。ブッダに弄ばれている感覚。ナムアミダブッダ、ナムアミダブッダ、ナムアミダブッダ、ナムアミダブッダ……ああ、耳にこびりつく。 1

篠@やさすい愛好家マグロ @simanezumi88_n

「イヤーッ！」ニンジャは跳ね起き、眼前の虚空をチョップする。「…夢か。鬱陶しい」呟きに答えるものはいない。ここは低予算と当てのない販売計画を具現化した無秩序なネオサイタマの寄木細工、雑居ビルの空き室。剥き出しの鉄筋コンクリートの柱が視界の正面に聳えるのみ。 2

篠@やさすい愛好家マグロ @simanezumi88_n

荒い息を立て、柱を睨み付けるニンジャの名はウォーターボード。オムラの試作兵器をテストするツジギリストだ。「クソッ…何が楽なツジギリだ…！ソウカイヤがいるなんて聞いてないぞ！」再び虚空へチョップしながら呻く。失敗に終わった先日のツジギリ案件が喉に刺さった小骨のように引っ掛かる。 3

篠@やさすい愛好家マグロ @simanezumi88_n

ケチな状況に相応しいアジトだ。そう独り思いながら一息をつく。幾つかのケチな案件と強盗を行うも、とにかく金が無い。IRC通信機へ幾度となくアラートを飛ばすが、返答は常に慇懃無礼で曖昧な文言。そろそろ襲撃したコケシマートから奪ったインスタントケモヌードルもケモビールも底をつく。 4

篠@やさすい愛好家マグロ @simanezumi88_n

「クソッ、いい加減にしろ…！」IRC通信機を持つ手に力が入った瞬間、ようやく待ちに待ったアラートが鳴る。先日のツジギリの依頼主・ヤチマダ翁だ。思わず足元の瓦礫を蹴飛ばしながら通信に応答しようとするが、興奮した指先に操作を邪魔される。「モシモシ…？！どういうことだ！」 5

篠@やさすい愛好家マグロ @simanezumi88_n

「いや～、すみませんねぇ。まさかソウカイヤがケチな遊郭を守るためにシックスゲイツを投入するなんてこれっぽっちも思いませんでしたからねぇ。尻拭いにてんやわんや。まあ、仕方ないですよ。ただ、武器のテストは全然出来なかったのでペナルティですよねぇ」「ふざけるな！」 6

篠@やさすい愛好家マグロ @simanezumi88_n

ヤチマダ翁の声に微かな笑いが混じる。「そうそう、先日の下水への退避。あれは良かったですよ～。ああいうデータがもっと欲しいですねぇ。今度は地上ではなく、下水から潜入願いますよ。データは多ければ多いほど良いものですねぇ」「ふざけるな！」 7

篠@やさすい愛好家マグロ @simanezumi88_n

「…今度のテストがうまくいけば、もっと報酬増やしますよ」柱から飛び出る鉄筋の数を数えながら、ウォーターボードは腰を上げる。「ならばまた出直すとしよう。場所はまたアシナガ・ストリートか」「そうです、その意気！皆様にwin-win関係！」 8

篠@やさすい愛好家マグロ @simanezumi88_n

ウォーターボードは、自身のようなツジギリストが他に幾らでも控えている事を知っている。事を荒立ててお払い箱にされ、ニンジャの身で路頭に迷う事など有ってはならぬ。すかさず平静さを取り戻し、ツジギリミッションを遂行する自分を意識する。最早、元の暮らしに戻れぬのだから。 9

篠@やさすい愛好家マグロ @simanezumi88_n

そう、海で気ままに狂暴なバイオマグロやバイオサンマ相手に暮らしを立てていたあの頃には。 10

篠@やさすい愛好家マグロ @simanezumi88_n

----------- 11

篠@やさすい愛好家マグロ @simanezumi88_n

不格好な積み木細工のような雑居ビルひしめくアシナガ・ストリート。年中通して扇情的で猥雑な七色の光と射幸心を煽る電子マイコによる広告アナウンス、平均BPM250をマークする刹那的なファストコアの流れる殺伐とした街。 12

篠@やさすい愛好家マグロ @simanezumi88_n

夜を扇情的に照らす「イキザマ」「危険なたしなみ」「ジェントル・ウォーター」などの極彩色看板が立ち並び、行き交う人々の疲れ切った顔を容赦なく照らし出す。欲望渦巻くネオサイタマにおける貪欲な胃袋めいて人々を次々と飲み込む眠らぬ街。 13

篠@やさすい愛好家マグロ @simanezumi88_n

時おり、轟音をあげて街中を震えさせ、特売電子チラシを吹き飛ばしながらマグロツェッペリンが頭上を通り抜けていく。オムラ社の雷神マークが雑居ビルを次々に照らし出す中、静寂と暗がりを保つ一角が眼下に現れる。古来より来歴のある由緒正しきダイモジ寺である。 14

篠@やさすい愛好家マグロ @simanezumi88_n

神秘的な正方形の敷地。何人たりとも外の喧騒を寄せ付けぬ巨大な防音機構付き山門。厳めしく付近を睥睨するサイバネアイの埋め込まれたブッダ・ウォーリア像。赤く周囲を照らし出すLEDボンボリの立ち並ぶ回廊を通り抜けた先には、幾何学模様が随時更新されるホログラフィーで照らされた石庭。 15

篠@やさすい愛好家マグロ @simanezumi88_n

周囲の喧騒を冷然と見回す、どっしりした木造建築が傲然の石庭の奥に控える。ダイモジ寺の本堂だ。内部には、金で覆われたブッダ座像。そのアルカイックな微笑みの元にはリュキ住職、ウンケ、カイケの高僧三人が暗がりで眉間に皺を寄せている。 16

篠@やさすい愛好家マグロ @simanezumi88_n

「先日の連続殺人は悼ましい限りでしたね」「誠に」「尊い命が奪われた事は悲しい話…しかし、皆我々の貸した金を返さず…何よりも悲しい話でのう」本堂を照らすオーガニックローソクの火が、迷いこんだ蛾の羽ばたきにかき消され、高僧達の姿が一段と暗くなる。 17

篠@やさすい愛好家マグロ @simanezumi88_n

「しかし、怪しからぬ奴らももうこの世にはおらず、その土地も財産も我々のもの、御仏の御導きであるな」「誠に」「とても喜ばしい限りです」本堂の外からは微かに雷鳴が轟く音が聞こえる。 18

篠@やさすい愛好家マグロ @simanezumi88_n

「あの、なんといったか、ほれ、古物商。あやつも良くやってくれた。見事に皆を浄土へ届けた上に、見事な刀剣までも我々にのう」「誠に」「これでタダオ様もますますお喜びに」一際大きな雷鳴が轟き、本堂をも地響きで揺らす。 19