生田美和氏、2014年9月25日~26日のツイート

ゲームデザイナー&シナリオデザイナー生田美和氏のツイート。恐らく氏の最新作「俺の屍を越えてゆけ2」への反応に対するものと思われます。
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生田美和 @shodamiwa

今朝は雨だというのにバスを降りてすぐ、蝉の声が聞こえた。ひとりきり仲間を呼んでいるのか、雨音に混じってどこか物悲しい。機会を逃せば、人は簡単に孤立してしまうから、出会えた人々に感謝。

2014-09-25 11:41:40
生田美和 @shodamiwa

「こうだったらいいな」という願いが、いつの間にか、「何故こうしない!」と、何かを責め立てる武器へと変わる。自分の抱いた夢や希望を、きっと誰かが叶えてくれるだろうと、信じる間にも時は過ぎる。誰にも自分の代わりは務まらない。気づいたことがあるなら、自分のターンを手放さない。

2014-09-25 11:58:04
生田美和 @shodamiwa

血が流れなくとも、痛みはある。傷口が見えなくとも、痛みはある。言葉は、肉体を切り裂くことはできない。けれど言葉は、心を切り裂く。自分の心も、人の心も。

2014-09-25 13:06:45
生田美和 @shodamiwa

この言葉で、誰かを、傷つけていないか。自分自身を含めた誰かを、追い詰めていないか。傷つける意図で吐き出したものでなくとも、世に出た言葉は、必ず誰かの心に向かう。だから、生かすための言葉を、糧となる言葉を。

2014-09-25 13:31:59
生田美和 @shodamiwa

例えば、アーシェとバルフレアの関係が嫌だと言う人がいる。それは、そう思ったのだから、嫌いなままで仕方ない。でも、そのシナリオを書いた人物を探しだし、吊し上げるべき、というのはわからない。私が開発に合流した時、アーシェがバルフレアの名を感情たっぷり叫ぶシーン等は全て完成済みだった。

2014-09-25 15:39:02
生田美和 @shodamiwa

初期メンバーが思い描き、作り上げたシナリオが完成ムービーとして、そのまま製品になってる。それに対し「自分の期待しと違う」ということはありえると思う。でも「自分の期待と違うから、きっと本来のメンバーが作ったんじゃない」は思い込みだし、「後から来た奴が悪いに決まってる」じゃない。

2014-09-25 15:43:53
生田美和 @shodamiwa

作品を愛してくれるのは、とても嬉しい、尊いことだけれど、いざ新作が出て気に入らなかった時に、「この新作は、きっとあのチームや開発者が作ったんじゃない!犯人を探せ!」なんてやられたら、開発は新しいものを作れない。焼き直しや、リメイクだけでいいだろうとなってしまう。

2014-09-25 15:55:03
生田美和 @shodamiwa

ゲームも、小説や漫画のように過去作が充分ストックされたのだろう。過去の名作やリメイクだけでいい、という考えもある。でも、既刊の再出版だけでは作家は育たない。新しい作品は、次の世代を育てる場でもある。新しい挑戦を、過去作への愛で否定されるのは残念だと思ってる。

2014-09-25 16:13:05
生田美和 @shodamiwa

昨日つぶやいたことに関連して、過去作や関連作のあるゲームのシナリオについて、少し書きますね。

2014-09-26 04:44:13
生田美和 @shodamiwa

1)シリーズ物のゲームには過去作や関連作から、「今作は、こういうことをしよう!」という思惑があります。なので漠然と「今作はシリーズ物です」ではなく、「今作は、過去作のこの舞台で、こんなキャラがいて、こんな話で」と、過去作や関連作に絡めた内容をつめて、予算会議にかけます。

2014-09-26 04:50:47
生田美和 @shodamiwa

2)この内容で会社の了解が得られると開発費がつきます。ここでシナリオ等に割ける予算と時間も確定し、外部のシナリオライターと交渉することができるようになります。どんなものを、いつからいつまで、いくらくらいで作るかわからないのでは、シナリオに限らず、外注スタッフは探せません。

2014-09-26 04:53:38
生田美和 @shodamiwa

3)いざ社外でシナリオライターを探す時、求めるポイントはどこでしょうか?一番は『オーダーに答えること』です。シリーズ物のオーダーは細かく、量もあります。一度チェックを通っても『この台詞、似たのがありました』『この過去設定、やはりこう使うことにして下さい』と没になることもあります。

2014-09-26 04:55:36
生田美和 @shodamiwa

4)シリーズ物を任せるライターが決まるまでには、だいたいこんなやりとりがあります。まず開発が、過去作や関連作を説明し、「過去作のこのシステムを今回こう発展させる」とか「この作品とこの作品の間を描く」とか「主役はこの人物で、このような展開にする」と、今作の内容を説明します。

2014-09-26 04:57:49
生田美和 @shodamiwa

5)その上で期間や金額、そのシナリオライターに期待しているポイント、そしてシナリオ品質をどのようにコントロールしていくか?等の話があり、依頼を受けるかどうかを、シナリオライター側でも判断します。この「品質管理」がシリーズ物では、重点が置かれます。

2014-09-26 05:00:31
生田美和 @shodamiwa

6)シナリオには「品質管理」の流れというのがあります。簡単に言うと、ライターが納品したシナリオや設定を開発がチェック、その合否を決め、不合格の場合、書き直しの指示をライターに出す…というものです。RPGのテキスト納品はおよそ一~二週間ごと、そのつどチェックされ、合否が決まります。

2014-09-26 05:04:36
生田美和 @shodamiwa

7)シナリオの品質管理の流れについては、シリーズ物以外の契約書にも盛り込まれることがある項目です。ライターはこのゲームの正解を決める立場にありません。シナリオが合格かどうかは、開発にしか判断できないのです。なので、「なぜ没か?」「どうすれば合格か?」は開発が指示します。

2014-09-26 05:08:41
生田美和 @shodamiwa

8)この品質管理の流れを有耶無耶にしたまま仕事をすると…極端な例で言えば、理由を明らかにされないままに、納品物を没にされてしまうこともあり得ます。「没の理由は言わない」「指示も出さない」「とにかくやり直せ」では、シナリオに限らず、外注の仕事は進みませんし、開発も滞ってしまいます。

2014-09-26 05:12:02
生田美和 @shodamiwa

9)こうした無限の没を繰り返さないために、「合格に向かう指示」の重要性が考えられるようになってきました。シリーズの場合、シナリオや設定のチェックは、だいたい三重になります。「面白いか?」「ゲームにあっているか?」「過去作等と照らして不都合がないか?」です。

2014-09-26 05:15:56
生田美和 @shodamiwa

10)例えば『エルクローネのアトリエ』ではアトリエシリーズを研究し、チェックにあたってくださる専属スタッフさんがいましたし、ガストさんのチェックも別にありました。『裏語 薄桜鬼』も変若水や羅刹の扱い等、強力なチェック体制がありました。厳しいチェック体制はシリーズにはつきものです。

2014-09-26 05:19:03
生田美和 @shodamiwa

11)それらチェックはバラバラに対応するのではなく、ディレクターさんが「自分はこう思うので、こう直してください」と一旦まとめてから指示を出します。ライターやテキスト担当者が、「自分はこう思いました」とそれぞれやっては、どこをどういう思惑で直したのか、混乱してしまうからです。

2014-09-26 05:26:47
生田美和 @shodamiwa

12)まとめます。シリーズ物では『作るべきシステムや物語の大枠』はおよそ決まっています。ライターには新作執筆ではなく、『開発オーダーを形にすること』が求められます。またシナリオチェックは開発が何名かで行い、その合否も判断します。没の場合、修正指示がディレクターからなされます。

2014-09-26 05:34:57
生田美和 @shodamiwa

以上です。ここにあげているお話は私が見てきた開発でのことなので、RPGやAVGの現場に偏った話になっています。また、ゲームのシナリオは絶対にこういう進め方であるべき、というものでもありません。様々なスタイルがあります。一例として考えていただければと思います。

2014-09-26 05:39:51
生田美和 @shodamiwa

シリーズ物の場合、ユーザーさんの思いと開発の思いが重なる所に、企画が立てられているかどうか。その最初の一歩が肝心なのだと思います。「過去作や関連作を、本当はこんな風に扱ってほしかった」というお気持ちは届いています。

2014-09-26 06:02:56

色々と言いたいことはあるのですが、とりあえず一言。氏の仰りたいことを一言で纏めると「私の手柄は私のもの、私の失敗は上司の責任」ってことでしょうか。それどんな逆大和田常務…