「他称」悪魔

『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編]叛逆の物語』のChapter 26を再生し,暁美ほむらが「悪魔」になるシーンで発せられた台詞を再確認してみました。台詞を詳細に見てみると,実はほむらは「悪魔」を自称していませんでした。それどころか,ほむらは相手に自分を「悪魔」と呼ばせるように仕向けていることが分かりました。
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篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

『[新編]叛逆の物語』のChapter 26を再生し,ほむらが「悪魔」になるシーンを再確認します。

2014-09-26 16:47:13
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

なぎさ「ソウルジェムが呪いよりもおぞましい色に…」さやか「何なのあれ?欲望?執念?いや違う…!暁美ほむら。あんたいったい…!」 ということは,ほむらの叛逆行動は,欲望や執念に突き動かされたものではない,と言えますね。

2014-09-26 16:53:11
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

まどかはアルティメットになってこの宇宙に遍在(あまねく存在)しているから,宇宙全域で裂かなければならなかったんですね。で,裂いたものの内,人間としてのまどかがいる方を,結界のようなもので包み込んだ…。あれ?この模様。ダークオーブを上から見た形!?

2014-09-26 16:57:01
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

うーむ。やはり「悪魔と『でも』呼ぶしかないんじゃない『かしら』?」と言っています。この「でも」係助詞で「ものごとのだいたいを示す」時に使われる言葉。そして「かしら」は終助詞で「疑問を表す」時に使われる言葉。あれ,待って。「呼ぶ」の主語は誰?

2014-09-26 17:14:27
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

英語字幕だと「A being that could perform such feats could only be called a demon, I suppose?」ですか。ということは「呼ぶ」の主語は「一般の人々」ですね。

2014-09-26 17:21:22
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

つまり「そんな真似ができる存在は,もう,悪魔とでも呼ぶしかないんじゃないかしら?」をもっとはっきり言うと,こうなりますね。「そんな真似ができる存在のことを,人々は悪魔と呼ぶだろう,と私は思う」。やっぱり,ほむらは悪魔を自称していない。あくまで「『他称』悪魔」なんです。

2014-09-26 17:24:46
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

それにしても,演じ手の斎藤千和さん,素晴らしいです。「悪魔とでも呼ぶしかないんじゃないかしら」の部分を「悪魔」の部分を強調して読まれているんです。これでは聴き手の頭に「悪魔」の部分だけが強く印象付けられる。

2014-09-26 17:27:41
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

修正。「そんな真似ができる存在は,もう,悪魔とでも呼ぶしかないんじゃないかしら?」を言い換えると,こうです。「そんな真似ができる存在のことを,一般的なイメージにおける悪魔に見立てて,人々は悪魔と呼ぶ,と私は思うけれど?」。ほむらは悪魔を自称していない。あくまで「『他称』悪魔」。

2014-09-26 17:58:53
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

ほむら。絶対この台詞,計算尽くで発しているでしょう…。

2014-09-26 18:18:43
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

自分が悪魔だとは一言も言っていない。言っているのは「私のやったことを見れば,人は私を悪魔に準(なぞら)えるだろう」ということだけ。

2014-09-26 18:21:09
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

でも,この台詞はそもそも直前にキュゥべえに「君は一体,何者なんだ?魔法少女でも魔女でもなく,一体,どこに辿り着こうとしてるんだ?」と問われたことに対する返答。キュゥべえが「君は何者なんだ?」と問ったので,誰しもがほむらは「私はこれこれである」と返答すると思い込む。

2014-09-26 18:22:12
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

だから,ほむらの台詞の中の「悪魔」という言葉に衝撃を受けたのと相まって,「ほむらは自分のことを悪魔と言った(悪魔と自称した)」と受け取ってしまう。誤解の発生である。

2014-09-26 18:23:12
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

さらにこの誤解を助けるのが,ほむらの声,斎藤千和さんの演技。ほむらの台詞の「悪魔」という部分だけが,他の部分に比べてを強く発声されている。視聴者の耳には「悪魔」という自動的にこびり付く仕掛けになっている。

2014-09-26 18:25:11
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

おっそろしいですよ,この台詞!

2014-09-26 18:25:29
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

「ふっ。他愛もない」 「くっ…。もしかして,お前は,『氷結の魔女』!?」 「…そう呼ばれることもあるな」 こんな展開を創作の世界で見掛けることがあります。この例の「氷結の魔女」は,あくまで他称。他人からそう呼ばれるけれど自分では名乗らない。ほむらの「悪魔」もそんな感じかも。

2014-09-26 18:38:28
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

自分で例を書いていて恥ずかしくなりました…。

2014-09-26 18:38:49
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

しかもほむら。もう一段階誤解を発生させる罠を仕掛けているんです。その後のさやかとの対話でこんなことを言っています。「今の私は“魔”なるもの。摂理を乱し,この世界を蹂躙する存在。神の理に抗うのは,当然のことでしょう」。

2014-09-28 21:41:17
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

この台詞は一見するとほむらが悪魔を自称したように見えます。でもそうではない。この悪魔は神との対比。ほむらの言う神とはまどか。ほむらはまどかを神に例え,その例えの延長で自分を悪魔に例えたに過ぎません。でも,ほむらが言葉を発する雰囲気から,ほむらが悪魔を自称したように誤解してしまう。

2014-09-28 21:42:51