『カーネーション』脚本 渡辺あやさんによる『ヒロイン交代』についての連続ツイート(2014/10/3)
「尾野真千子を降ろせ!」NHK朝ドラ『カーネーション』で、やっぱり圧力あった?」という記事のタイトルをみつけました。「あった?」とは、どこかへ向かって放たれた問いのようにもみえますので、関係者のひとりとしてお答えいたします。「ございませんでした」
2014-10-03 21:53:52尾野真千子さんから夏木マリさんへの主演交代の理由は、当時NHKの城谷プロデューサーがご説明されたとおり、「主人公の晩年を演じるには、尾野真千子は若くてピチピチすぎる」 これだけであります。
2014-10-03 21:54:24小原糸子という女性の、幼少期には「生命の輝き」を、思春期から中年期に「女性という性の輝き」を、そして晩年には、そのふたつの輝きを鈍らせた果てに浮かび上がる「人格の輝き」を描くこと。それがこの作品の課題であり、そのために必要なものはなにか、ということを一直線に考えた末の結論でした
2014-10-03 21:55:10主演交代のリスクは、もちろん予想されました。尾野真千子は、とてつもなくすばらしい女優です。それでも主人公の「晩年」を描くにあたって、特殊メイクや演技力などなど知恵や技術でもってすれば、30代の女優でもなんとかなるだろうと考えるのは、我々若輩者の不遜なのではないかと
2014-10-03 21:55:28「老い」をずいぶんなめた話なのではないかという気がいたしました。 老成、老いて成るということ、その力を描きたいのならば、年の足りない私たちがどんなに頑張ってもたどり着けない域がそこにあるとまず認めること。その事実の前にひれ伏すこと。
2014-10-03 21:55:51そうした「老い」を描くにふさわしい心構えをもって初めて、 私たちはその「力」を、視聴者にお伝えできるのではないかと考えました。
2014-10-03 21:56:17それでも私含めスタッフ一同に対し、一言の不満ももらさず、一心に同じところを目指し続けてくださった三人の女優、二宮星、尾野真千子、夏木マリ、は本作における心臓部、命そのものであったことには変わりありません。
2014-10-03 21:56:57なんせ心臓なわけですから、少々の圧力やら大人の事情やらで 切ったりとっかえたりできるようなものではまったくありませんでした。
2014-10-03 21:57:23ちなみにコシノ三姉妹様につきましては、よしんば圧力で無茶を通そうとするような方々であったとして、誰かがはずされていたとしたら、まずは他でもない私であったはずです。 「猛獣」にはじまり、「いけず」「いこじ」「アホ」「ぶさいく」「才能ある」の「ない」の・・・・
2014-10-03 21:57:50正直執筆中、私は三姉妹様には「もう二度とお目にかかれまい」ことを覚悟の上で、あのように無礼極まりない表現をし散らかしておりました。 けれども結果的に放映中もその後も、三姉妹様から私は感謝以外の言葉を受け取ったことがありません。
2014-10-03 21:58:12人としての度量、そして何より表現者としての矜持、そのあり方を鮮烈にお示しいただいたと思い、コシノヒロコ、ジュンコ、ミチコの三姉妹様を、私は今なお深い感謝とともに仰ぎ見続けております。
2014-10-03 21:58:28ささやかなゴシップです。書かれているのは他愛のない憶測、一週間後には読んだことも忘れてしまいそうな話です。 でもよくよく考えてみたら、真相を知る私とわずかな関係者にとってはその程度のことすぎなくても、ご存じない方々には、りっぱに「疑い」として残ってしまうおそれもあります。
2014-10-03 21:58:51「疑い」というのは、それ自体はたいした傷ではないようで、あんがい心に残り、溜まるにつれ、ゆっくりと大切なものを損ない続けていったりもする。 おっくうがらず、ここは釈明をこころみねばと思いました。
2014-10-03 21:59:12確かに私たちの現場も大人の社会にある以上、「大人の事情」とは無縁ではありません。大人の事情に大きく支配されてしまう場合もある、でも、支配されない場合もあります。
2014-10-03 21:59:29関わる人間が誰も大人の事情を持ち出そうとしないとき、それはそこが大人の事情、個人の損得なんぞにこだわるより、そんなものは引っ込めた方がもっとずっと良いものが得られる場であると信じられているときのように思います。
2014-10-03 21:59:44「カーネーション」をそういう作品だと信じて、観て下さった方々、あるいは制作中それぞれの持ち場で力を尽くしてださったスタッフ、キャスト、協力してくださった岸和田市民の皆様、様々な関係者の皆様に、あらためて私がもろもろ責任をもって申し上げます。
2014-10-03 22:00:04「カーネーション」は、たしかにそのように作られた作品でありました。良いものを作ろうと心と手を尽くし、作れたときに、それが伝わることを知る。終始あの現場を支配していたのは、関わる人間ひとりひとりの、そんなもっとも原初的な「作る喜び」でした。
2014-10-03 22:00:18大切なものを大切だと言うべき時にそれを怠って表現者もないものだと思い、このたび初めてツイッターのアカウント取得なぞに至った次第です。 が、生来の横着者の私にまめな更新ができるとも到底思えませんので、数週間ほどで消滅の予定でございます。
2014-10-03 22:00:57もしレスポンスを頂戴しましても拝読のしかたもお返事のしかたも分かってないという有様。 どうぞその点ご容赦くださいませ。 長文失礼いたしました。
2014-10-03 22:01:20