「携帯電話」「飛行機」「波」

三題噺をやってみたら、恐ろしくベタな話になった。
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altana @altana

altanaは「携帯電話」「飛行機」「波」に関わる、「縛りなし」のSSを9ツイート以内で書きなさい。 http://shindanmaker.com/15896

2010-10-14 21:57:13
altana @altana

飛行機の中でも携帯の電波は届くのだろうかと思い、ポケットの中から取り出した瞬間、ゆっくりと機体は滑走路へと動き出した。機内放送で携帯電話の禁止が告げられて、僕は待受の彼女の写真を見ながら携帯を閉じた。もうこれで12時間の間は彼女の声は聞けないことになる。 #twnovel

2010-10-14 22:02:49
altana @altana

僕達はもう6年の間お互いに別れたりよりを戻したりを繰り返している。一緒に暮らしているとお互いの嫌な部分が見えてきて、毎回大喧嘩して別れるのだ。しかし会っていて一番しっくり来るのも彼女で、他の誰かと付き合ってもいつの間にか傍にいるのが見知らぬ他人のようである。 #twnovel

2010-10-14 22:05:59
altana @altana

「私達ずっとこうやってふらふらしてるのかもね。」彼女は僕を見て悪戯ぽく笑った。砂浜の上で歩く二人の足元に、波が押しては返していく。彼女はきっとあの波みたいに、僕の体を飲み込み、やがて離れて、けれど飲み込んだ砂が元の体に戻るようにまた押し寄せるようなそんな人だ。 #twnovel

2010-10-14 22:08:52
altana @altana

だけれどある日僕は彼女に飲み込まれ奪われゆく自分が許せなくなって、英国への出張を決めたのだった。喧嘩していた彼女もわずかに動揺したようだった。もう後戻り出来なくなるかもしれない。だけど僕は僕自身だけのために生きていたいとはっきり思った。僕は携帯を握りしめた。 #twnovel

2010-10-14 22:09:55
altana @altana

飛行機が離陸に向けて大きな唸りを上げた瞬間、僕の中で大きな波が水面を持ち上げて迫ってきた。僕の中の彼女が彼女自身を求めて声をあげている。波は僕自身の中にもあって、彼女を奪い続けてきたんだ。お互いに存在する自分自身がいとおしかったのだ。世界が振動を始める。 #twnovel

2010-10-14 22:10:56
altana @altana

その時に手のひらの中の携帯電話が震えているのに気づいた。電源を消してなかったのだ。開くと彼女からのメールが入っている。「向こうの空港で待ってる。」僕達はきっと同じことを考え、同じ波が、お互いに打ち寄せていたんだろう。「愛してる」とだけメールして電源を消した。 #twnovel

2010-10-14 22:12:00