- yamasaga_CaS
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「ある日の昼休み、教室で数人の生徒が話していた。『おいまたやってるらしいぜ、女王様』『またかよ、見学しに行こうぜ』『お前も挑んでみろって』『やんねーよ、どうせしこたま搾り取られるだけだ』……普段なら聞く耳すら持たないが、変わらない毎日に退屈していた俺は、後を追うことにした。」
2014-10-09 00:11:33「着いていくと、生徒が集まるフリールームのようなところに偉そうにふんぞり返るピンク髪の……男だか女だかわからない奴がいた。そいつの横のテーブルにはお菓子や娯楽品、中には金もあったか。周りの様子を見ると落胆している者、友人の背中を後押ししている者、賭け事をしているやつもいたな」
2014-10-09 00:17:19「とんでもなく腐った学校だ、とは思ったが、俺も含め腐った奴ばかりが集まるこの学校だ。仕方ないのかと思いつつ、教室に帰ろうとした。どうせあのピンク髪がイカサマでも使って物を集めてるんだろう、ろくなことにかかわらないのが一番だと思ったからだ。だがそうはいかなかった。」
2014-10-09 00:19:47「……奴と目が合ってしまった。獲物を見つけた動物のように、俺の目をまっすぐと見つめる。何故か目をそらすわけにもいかず、操られるように俺はそいつへと近づいていく。今まで見たことのない、吸い込まれそうな金色の瞳。俺は逃げることができなかった。」
2014-10-09 00:22:11『……新たな挑戦者か?今日はもういないと思っていたが……丁度いい、ゲームをしよう』 『……ゲームだと?』 『あぁ。といっても今までやってたカードゲームじゃない。お前はそういうのに向いてなさそうだしな。つまらんゲームをしても面白くない』 『待て、俺はやるなんて一言も』
2014-10-09 00:24:56『お前も退屈していたんじゃないのか?この学校生活に。だからここに来た……そうだろう?』 『……何故それを』 『結構前から大々的にやっていたんだが、お前の顔は今日初めて見る。カマをかけてみたというわけだ。……こう簡単に引っかかるとは、お前と頭を使うゲームをしてもつまらんだろう』
2014-10-09 00:27:53「言い返せなかった。確かに俺は頭が悪い。通っていた中学でも成績は下から数えた方が断然早い。高校受験も、剣道の推薦を取っていたから、勉強なんて一つもしなかった。……ただ数回の会話で、俺の中の全てが見透かされるような気がした。こう思うのも、俺の頭が悪いせいかもしれないが。」
2014-10-09 00:30:04『だからお前とは別のゲームをしてやろう。』 『どんなゲームだ?』 『その腰の刀。本物だろう?……抜け』 『……何を言い出すかと思えば。殺し合いでもする気か?』 『そう、正解。……私はこれを使わせてもらうが』
2014-10-09 00:32:13「そう言いながらそいつが制服の内ポケットから取り出したのは……拳銃だった。拳銃の種類なんて興味もないが、派手な装飾で輝くそれは、俺や周りの生徒を驚かせるには十分だった。先生を呼ぼうとする生徒もいたが、奴の眼光と銃口に射抜かれては動けずじまい。……俺も同じだった。」
2014-10-09 00:34:37『……拳銃!?貴様、それは……!』 『おっと、大きな声を出すな。これは紛れもない本物。……試してみるか?』 『試すだと!?……っ!?』
2014-10-09 00:37:10「そいつは銃口を天井へ向け、引き金を引いた。何かが破裂するような音が響き渡り、いくつかの小さい悲鳴が遅れて響く。じり、と後ずさりしたいような気分になったが、俺も他の生徒も動くことは出来なかった。……今動いたら殺す、そんな雰囲気が、奴の周りには漂っていた。」
2014-10-09 00:39:47『これでわかっただろ?……本物だ。お前に拒否権はない、今ここで……私とデスゲームをしてもらう。命を賭けた本当のゲームだ。』 『……刀と、拳銃でか……!?馬鹿げている!』 『私は今拒否権はないと言ったはずだ。同じことを何度も言わせるな。』
2014-10-09 00:44:09「やるしかない、やらねば、ここにいる俺や誰かが死ぬ。そう思った。まずここで逃げたりしたら男じゃない。仕方なく、俺は奴と死を賭けたゲームをすることにした。……今思えば、あの方も相当なひねくれ者だな。まぁ従うと決めた俺も俺だが……話が逸れたな。戻そう。」
2014-10-09 00:46:31『……合図は』 『構わん、お前のタイミングで決めろ』 『は?』 『それくらいのハンデは与えてやると言ったんだ。馬鹿犬め。』 『なっ……!』 『どうする?怖気づいて逃げるか?逃げるのも一種の選択だ。皆自分の命が惜しいに決まってる。周りのやつらを犠牲にして生きる人生もいいだろう。』
2014-10-09 00:50:28『……逃げない、俺は、もう……逃げない!』 『……ふん、いい目をするじゃないか。そうだ……来い』 『……貴様こそ、あの世で後悔するなよ!……はぁあっ!』
2014-10-09 00:52:34「精一杯の力で奴に飛び込んだ。だが死と隣り合わせになると、駄目だった。ひらりと交わされてしまう。まずい、と思った瞬間にはもう、後ろに回り込まれていた。奴の指は拳銃の引き金に、銃口は俺の頭に向けられていた。頭が真っ白になり何も考えられなくなる。今思うと、あれが絶望だったのかもな。」
2014-10-09 00:56:47「パァン、とさっき聞いたような音が響く。死んだと思った。……だが俺は生きていた。奴が外しただけか?いやあの近距離から外すわけがない、と思いつつ、俺は固く閉じていた目をおそるおそる開けた。そこには……」
2014-10-09 00:58:49『……な』 『っくく……あはははは!驚いたか?そりゃ驚いたよな!死ぬと思ってただろう?……くくく!まず本物の拳銃を持っているわけがないだろう!ははは!お前のその顔!実に面白い!傑作だ!』
2014-10-09 01:00:32「けたけたと腹を抱えて笑う奴の手にあったのは紛れもない拳銃。だたその銃口から出ていたのは……よく手品師が使うさまざまな国旗の紙がついたヒモに、舞い散る紙ふぶきやパーティ用のクラッカーの中身のようなもの。……そう、完全に騙されていたんだ。」
2014-10-09 01:02:49『……はぁ、久々にこんなに笑った。……さっき天井に撃っただろう?あれは空砲。よく見てみろ、天井に穴なんか空いてない。』 『……』 『二発目はパーティ用のクラッカーもどき。あとは全部空っぽ。見てみるか?』 『……なんで』 『ん?』 『どうして、お前は……そんな丸腰の状態で』
2014-10-09 01:05:22「『どうしておもちゃの銃で、本物の刀を持った俺と殺し合いがしたいのだ、下手をすると死んでいたぞ』と言ってやりたかったが、驚きと安堵感、そのほかにぐちゃぐちゃした感情が一気にせめぎ寄せて、言葉にすることができなかった。だが奴はそれを見越したように、こう言い放った。」
2014-10-09 01:07:08『それが命がけのデスゲーム。お前の武器が真剣、私がおもちゃの銃だっただけだ。それで死んでも仕方がない。それがゲームだ。この方法で幾度となく私は勝利していてな。すべて相手が逃げ出した。お前のように向かってくる人間は初めてだった。……くくく、最高に面白かったぞ……お前、名前は?』
2014-10-09 01:10:04「本来ならこんなやつに教える名などなかったが、こいつの死を恐れない態度、何故こんなことをするのか、本当に娯楽のためだけなのか、そのほかにもたくさん……初めてだった。こんなにも人の事を知りたいと思ったのは。呆気にとられながらも、俺はまた奴に向かって歩き出した。」
2014-10-09 01:12:09『……1年C組、犬養和臣。……窃盗罪で入学した。……あんたは?』 『私は……そうだな、Regina(レジーナ)とでも呼べ。……和臣、お前のような面白い人間に出会ったことがない。どうだ、私の傍に……いてみないか』 『……傍に?』 『あぁ。命令……聞けるな?』
2014-10-09 01:16:10