2014年10月10日

【Fire,walk with them 】#1

自分用のまとめ
1

陽光が容赦無く照りつける中、湿気が人々の肌に娼婦のように纏わり付く。温暖多湿、極東特有の忌々しい気候に若き博士は眉を顰めた。『いいか、これは左遷なんかじゃない。極東の小国と言ったって、支部長として治めれば本部での影響力も高まる。それは君の望んでいることだろう、アンドリュー博士?』

本部を出る前に告げられた言葉がアンドリューの脳裏を過る。確かにそうだ、この国は土地の規模は小さいものの、予測された潜在的なオブジェクト数は有数のそれだ。支部長に就任すれば、発言力も相当だろう。しかし。「くそ、だからって…」要注意団体が実質的に支配した国になど、赴きたくはなかった。

ろくに整備されていない道を、ジープは走っていく。軍人に偽装したエージェントに囲まれたまま、博士は届けられた書簡を広げる。簡易的な調査ではミーム汚染や認識災害の危険無しと判断された、一通の、手紙。墨痕鮮やかなその文面には。「争う前から降伏してみせるなど…黄猿の思考は理解出来ないな」

制圧を予定していた団体、その中枢に位置するだろう男からの申入れに、アンドリューは困惑していた。男は他数名の身柄とともに投降する代わり、財団への雇用を要求してきたのだ。「一体何を考えている。陸軍中佐、葦舟とやらは」彼の呟きを掻き消すようにジープは速度を上げ、目的地へと急ぐのだった。

この話は彼が極東の土を踏む少し前から始まる。その日、男は磨かれた窓から下界を見下ろしていた。彼の視界に映るのは、雑音混じりのラジオを拝聴する疲れきった人々。頭を垂れたままの姿に、彼は書物で知った回教の信仰者を重ねていた。軍服の上から白衣を着込むという奇矯な出立の彼に、声がかかる。

「ヒッヒッ…残念やったねぇ、一億火の玉、見て見たかったんに」嗄れ掠れたそれに、男は苦笑しながら振り返る。「今は国を挙げて悲しむべき時ですから…葦舟先生、皮肉はそれぐらいにしてもらわないと」振り返った先、葦舟と呼ばれたのは、皺だらけで年齢のわからない、小柄な老人であった。

外見から妄執を滲ませながら、葦舟は口を開く。黄ばんだ乱杭歯が牙のように、唇を飾っていた。「君やって、ちっとも悲しゅうないんやろ」「それは、まあ。一応予測出来ていましたし…私も結城女史と同じく、“懐疑派”ですので」「かーっ、目ェ掛けた愛弟子が科学に被れよるとはなぁ」「…すみません」

目を伏せた男に、葦舟は意地悪く笑う。「冗談やわ、ジョーダン。それより、」「はい、卜では数日中と出ました。草からの報告と併せると、精度が高いかと」「なら、はよう手を打たんとな。ー毛唐にも“迎合派”にもやらん、神国は僕らのもんや、そうやろ…己亥クン」男は老人へ、微笑とともに首肯した。

蒐集院きっての運命学者、八門遁甲に通ずる男ー己亥(キドノイ)少佐として。

【Fire,walk with them 】#1終わり

をべくんのネタを潰していこうの会主宰やし…

いやー唐突に出てきたキドノイさんって誰だろうねー二次創作のオリキャラかなー?

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