2014年10月12日

古鷹青葉を見守る衣笠さんbot #33

更新三十三回目のまとめです。 衣笠に突きつけられた鬼怒の金言。そして衣笠の決意とは。
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古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「加古!あんたが、あんたがそんな薄情なやつだなんて思わなかったわ!古鷹ねーさんが苦しんでるのよ!?そんなのいいわけないじゃない!」 「待っ……!きぬがさ、苦しっ……」 加古が私の腕をばしばしと叩いて許しを請う。気づいた時には私は膝立ちになって加古の胸ぐらをつかみあげていた。

2014-10-11 21:49:49
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

ぱっと手を離すと、加古がどさりと地面に落ちてぐえっと情けない声を出す。起き上がってけほけほと咳をしながら喉を押さえる加古の隣に座り直す。胸ぐらをつかみあげてしまったのは悪いと思うけれど、加古の真意を確かめなければならない。 「加古、いい傾向ってどういうことよ。説明しなさい」

2014-10-11 21:55:21
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「いやー、だからさあ、前までの古鷹だったら、泣きもしなかったと思うんだよ。『自分は古鷹だから』って言って、笑って戦って、笑って沈んだと思う。それを後悔する素振りも見せずにさ。だけど、今の古鷹は泣いたんだろ?古鷹だってわかってるんだよ。このままじゃいけないって。青葉といたいって」

2014-10-11 22:00:51
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

だろ?と顔を向ける加古を、私は雷に打たれたような衝撃と共に見つめていた。古鷹ねーさんは艦娘としての義務感と、一つの命としての純粋な想いの板挟みになっていた。青葉の事は大好きだけれど『古鷹』として頼りにされなきゃいけない、誰よりも体を張って戦わなきゃいけない、そんな思いに囚われて。

2014-10-11 22:07:39
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

遠い昔、確かに『古鷹』は『青葉』をかばってソロモンの海に沈んだ。けれど、艦娘として生まれ変わった今の古鷹ねーさんまで同じことをしなければならないなんて道理はない。そんな事くらい、古鷹ねーさんだってわかっている。けれど、それを認められない『古鷹』も、古鷹ねーさんの中にいるのだろう。

2014-10-11 22:14:36
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

私は、改めて加古に対して舌を巻くような思いを抱いていた。いつもぐーたら眠そうにしているくせに、古鷹ねーさんのことはしっかり見ているのね。そう言うと、加古は鼻の頭を掻きながら「ん、まあ姉妹艦だから……そりゃあね」とそっぽを向きながら言った。柄にもなく照れてるのかしら。

2014-10-11 22:20:36
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

さて、なぜ加古が古鷹ねーさんが泣いたことを「いい傾向」などと言ったのかは腑に落ちた。けれど、私はどうすればいいんだろう。古鷹ねーさんに「本当は青葉と一緒にいたいんでしょう?だったらもう無茶はやめて」などと言ったところで、あの古鷹ねーさんがはいそうですかと聞いてくれるはずもない。

2014-10-11 22:25:46
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

加古にちらりと顔を向けるけれど、首を横に振られた。そうよね、加古は古鷹ねーさんの様子には元から気づいていたんだから、どうにかできるものならとっくにやっているはず。 「その話提督にはした?」 「え?」 眼前の海を見ていると不意に加古に声をかけられた。加古以外にはこの話はしていない。

2014-10-11 22:33:02
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「古鷹の話提督たちにもしときなよ。衣笠やあたしに出来なくても他の誰かに出来ることがあるかもしれない。衣笠はもうちょっと周りを頼りなって。な?」 にっと笑いかけてくる加古に、私は思わず見とれてしまった。なんだか、加古がいつもよりも大きく、頼もしく見える。何か音が聞こえた。どくんと。

2014-10-11 22:39:44
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

何の音だろうと訝しんだ一瞬のち、私はそれが自分の心臓の音であることに気が付いた。えっ、ちょっと、なにこれ。なんで私加古にドキドキしてるの。 「どした?衣笠」 「う、うるさいわね!なんでもないったら!」 思わず加古から顔をそむけるけれど、どういう訳か頬はますます熱くなっていく。

2014-10-11 22:45:20
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

訳も分からず居ても立ってもいられなくなった私はばっと立ち上がった。 「い、雷ちゃんのところ行ってくる!」 「え?あ、うん」 突然走り出した私の背中に、加古が戸惑ったような声をかけてくる。それすらもなんだか嬉しくて、加古の声が私の全身に力を与えてくれるようで、無我夢中で私は走った。

2014-10-11 22:50:46
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

勢いよく執務室に飛び込んできた私を見て雷ちゃんと秘書艦の鬼怒は目を丸くしたけれど、私は構わず二人に古鷹ねーさんのことをまくしたてた。そうするしか、この胸の高まりを収める方法がないような気がしていた。最初は戸惑っていた二人も、私の勢いに押されてか口を挟まず話を聞いてくれていた。

2014-10-11 22:55:55
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

雷ちゃんは辛抱強くわたしの話を聞いていたけれど、古鷹ねーさんが雷撃の囮になろうとしたことを聞いた時には、苦虫を噛み潰したような顔をした。サブ島沖の攻略に際して雷ちゃんは探照灯の使用を禁じてくれたけれど、それでもこの分では古鷹ねーさんがどんな無茶をするかわからないからだろう。

2014-10-11 23:02:56
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

私の話が一段落した後、最初に口を開いたのは鬼怒だった。 「鬼怒さー、前に『青葉は日本に帰れば大丈夫』って言ったけど、古鷹の方が大丈夫じゃなかったねー」 腕を組んで目を閉じうーんと顔を上げる鬼怒の様子はなんだか芝居がかっていたけれど、それは決して茶化そうとしている口調ではなかった。

2014-10-11 23:10:36
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

鬼怒はそのまましばらく考え込むような素振りをしていたけれど、私と雷ちゃんは何も言わずにそれを見守っていた。こういう時の鬼怒は思いもよらないような鋭いことを言ってくれることがあるからだ。うんと一つ頷き、鬼怒が口を開いた。 「やっぱりさー、誰かが一回古鷹に言ってあげなきゃダメだよね」

2014-10-11 23:19:14
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「言ってあげるって、何を?」 「決まってるじゃん。『古鷹のやったことは間違ってたよ』だよ」 鬼怒の言葉に、私は頭を殴りつけられたかのような衝撃を受けた。そんな、そんなこと。古鷹ねーさんの誇りを真っ向から否定するようなこと。けれど、私は不思議と「それは違う」とは思わなかった。

2014-10-11 23:23:49
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

自分でも薄々気づいていたのかもしれない。古鷹ねーさんが危険を冒して青葉を庇ったのは決して正しい事じゃなかったと私自身が思っている事に。そして古鷹ねーさんに変わってもらうにはそれを突き付けるしかない事に。 「まー、やっちゃったことは仕方ないしね。昔のことはいいかもしんない。でもさ」

2014-10-11 23:30:48
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「艦娘になった今でも古鷹が同じこと繰り返しちゃうのはさ、やっぱり違うと思うよ?提督も言ってたけど、それは誰のためにもならないんだし」 鬼怒の言葉に私は一言もなくうなだれた。今まで私は、その事に気付いていながら目をそむけていたのかもしれない。古鷹ねーさんを傷つけてしまうのが怖くて。

2014-10-11 23:36:29
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

私が何も言えないでいると、雷ちゃんが私への気遣いを込めた口調で鬼怒に言った。 「鬼怒、それ古鷹に言ってやってくれない?憎まれ役を押しつけて悪いけれど」 「ん?それは別にいいけど、鬼怒じゃダメだと思うよ?」 私ははっと顔を上げた。鬼怒じゃダメなら、私が。それは、私が言わなければ。

2014-10-11 23:43:16
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

そう口に出そうとした瞬間、見透かしたように鬼怒に言われた。 「あ、当たり前だけど、衣笠でもダメだよ?」 肩透かしを食らった私は、思わず「じゃあ、誰ならいいのよ」と声を荒げた。自分が許せなかったから。気付いていたくせに古鷹ねーさんを傷付けるのが怖くて、臆病になっていた私自身が。

2014-10-11 23:52:21
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

そんな私の気持ちを知ってか知らずか、鬼怒は私の剣幕に一向に頓着することなく言った。 「決まってるじゃん、青葉だよ」 え、と口を開いたまま、私は棒立ちになった。古鷹ねーさんに助けられた青葉が、その青葉自身が、古鷹ねーさんを否定するなんて。そんなこと、青葉に出来るわけがない。

2014-10-12 00:00:08
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

雷ちゃんも同じことを思っていたらしく、鬼怒に不安げな顔で言った。 「それは難しいんじゃないかしら……。ただでさえ青葉はどうにか立ち直ってきたばかりだし、古鷹にそんなこと言えるとは思えないわ」 「まあね。鬼怒もそう思うよ。でも、青葉以外の誰が言っても、古鷹には響かないと思う」

2014-10-12 00:05:44
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「この先古鷹は何度でも青葉のために命を張っちゃうと思うよ。それが間違ってるって自分で薄々わかっててもね。それを止めてあげられるのは、青葉しかいない。皆が古鷹に甘えてるから、古鷹も甘えられる側にしかなれない」 鬼怒の最後の言葉が私の胸に突き刺さる。古鷹ねーさんに甘えっぱなしの私に。

2014-10-12 00:12:42
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

青葉に、鬼怒の言葉を伝えよう。折角立ち直った青葉を傷つけてしまうかもしれないけれど、このままうやむやにしていることこそ、古鷹ねーさんに甘えていることに他ならない。それに、サブ島沖海域への出撃の日程が迫っている。考えたくもないけれど、今伝えなければ手遅れになってしまうかもしれない。

2014-10-12 00:16:40
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