中国の米空母の黄海での演習参加容認を巡る問題
中国:米韓演習「容認」 「排他的経済水域内反対」に後退(http://bit.ly/hcqDH1)…黄海での米空母演習につき、これが些か興味深い記事だ。中国は今年、米空母の黄海進入そのものを拒否してきたが、今回は容認せざるを得ないため、EEZでの演習拒否に主張を変えたと言うのだ。
2010-11-27 09:46:08EEZとは排他的経済水域の事である。国際法では沿岸から12海里を領海とし、200海里までをEEZとしているが、EEZで主張できるのは経済的な権利のみであって、他国の軍事演習を阻止できるなどの安保上の勢力圏を意味する概念ではない。すなわちこれは中国の自己中心的な国際法の解釈なのだ。
2010-11-27 09:49:1812海里の領海を越えればその先は公海(international water)であって、どの国が何をしようが勝手である。それが現在の国際法のルールであり、中国の解釈や行動は極めて独りよがりで公海上に自国の勢力圏を一方的に定めるものであり、米国にとっては到底容認できるものではない。
2010-11-27 09:51:22米国は公海における航行の自由などの問題を「グローバル・コモンズ」へのアクセスの問題して極めて重視する。米国の伝統的な「門戸開放」の主張と同じで、特定領域を勢力圏で囲い込むことは容認できないという訳だ。だから中国のEEZ内での軍事演習拒否という主張は到底受け入れられるものではない。
2010-11-27 09:53:29米中の対立の根幹はそこにあるが、今回些か興味深いのは中国がどうやら「EEZ内での演習拒否」の主張は変えないながらも、黄海における空母を投入した演習自体は容認するという姿勢に転じたのではないか、との観測がされている所にある。EEZの外の演習であれば従来の主張と矛盾しないという訳だ、
2010-11-27 09:56:12都合の良いことに、中国はこれまで黄海のどこまで自国のEEZなのかを具体的に主張していない(http://bit.ly/hfXUKV)。だから従来EEZ内での演習拒否は黄海内での演習拒否と同義であった訳だが、この二つを区別することで今回の事態に対応しようというつもりらしいのである。
2010-11-27 09:57:46米国はいずれにせよ国際法で定められた領海を越えた海域=公海における軍事演習は全く文句を言われる筋合いはないとの立場なのでEEZであろうが黄海であろうが中国側の演習拒否は絶対に受け入れられるものではない。何しろ昨年10月にこの海域で空母を含め演習しているのに中国は何も言わなかった。
2010-11-27 10:00:51今年になって急に中国が異常な反発を見せるのは、軍事的自信の向上からのためにする議論という訳で、そんなことでいちいち国際ルールを修正していたらルールそのものの意味がなくなってしまう。米国は絶対に譲れず、今後も黄海及び公海の好きな場所で自由に演習を行う権利を主張&実践し続けるだろう。
2010-11-27 10:02:37無論、これは単なる国際法の解釈の問題だけの話ではなく、大国間の神経戦であるから、実際の判断にはヨリ慎重な要素も入る。1962年のキューバ危機の際も、ソ連にはキューバに核兵器を配備してはならないという法的制約があった訳では全くなかった。だがそれは米国の激しい反発と海上封鎖を導いた。
2010-11-27 10:05:21核戦争になりそうだったので最終的にはソ連が譲歩して危機が終焉した。核戦争ほどの危険性を伴う問題では結局勢力圏を容認してバランスを維持しなければならない状況も生じ得る。だがそうした世界は共通のルールや航行の自由が保証されない閉ざされた世界でもある。勢力圏の承認は今日では困難だろう。
2010-11-27 10:07:32結局、記事の内容が正しいとすれば、今回は中国が譲歩する形で事実上の黄海での空母演習容認という形になるようではある。だがEEZ内での演習拒否という主張は変えておらず、米中の対立は続くだろう。中国内でのこの外交的「敗北」への突き上げが強まり、更なる強硬姿勢に転じる可能性もある。
2010-11-27 10:09:1212/3からは南西諸島での日米合同演習もあり対立の局面は続く。黄海、東シナ海(+南シナ海)を中国による「覇権の海」に変えないために、日米韓は軍事力での牽制のみならず国際ルールの書き換え阻止という観点でも強固な団結を示す必要があろう。秩序とはルールを守ることで維持されるのである。
2010-11-27 10:11:56