「キックアウト・ザ・ニンジャ・マザーファッカー」 #2

B・ボンド&P・モーゼズ作。ネオサイタマを舞台としたサイバーパンク・ニンジャ活劇「ニンジャスレイヤー」の私家翻訳物 詳細はこちら http://togetter.com/li/73867
ニンジャスレイヤー
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Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
(「キックアウト・ザ・ニンジャ・マザーファッカー」#2)
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「アイエエエ!」古傷だらけのいかつい大男が、情けない悲鳴を上げて這いつくばった。うずくまった大男の後頭部を、タメジマ=サンはバッファロー本革靴で容赦なく踏みつけた。「アイエエエ!」「どうするんだ、コラッ!おいコラッ!」「アイエエエ!」
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「これじゃあ、話が進まねえじゃねえか!コラッ!業者にキャンセルかけられんのか、コラッ!できるか、コラッ!」「アイエエエ!」矢継ぎ早の罵倒を吐き出し、大男を踏みつけながら、タメジマ=サンは実際泣きたい気持ちであった。
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この大男はこれでも元リキシ・リーグ・スモトリの腕っこきバウンサーであり、ケンカで遅れを取る事などないコワモテなのである。タメジマ=サンのビジネス遂行にあたって、これまで多大な貢献をして来た事は疑いがない。
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タメジマ=サンは闇経済の末端にしがみつくジアゲ・ファンドの経営者であった。若き日は彼自身もまたカラテ使いバウンサーとして鳴らし、反射神経が衰えたのち、こうして人を使う立場となった。手段を選ばず、仕事を選ばず、血と汗と他人の迷惑をつみあげて、この薄汚い茶の間オフィスを築いたのだ。
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彼は己の冴えない生まれを、過去を、茶の間オフィスの間取りを嘆いた。このドブの底から、いつか浮上してやる。そう念じ続けて、はや30年。今回のジアゲ・ビズはそんな彼の元へようやく巡って来た僥倖、ビッグディールのはずであった。
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「それがお前……泣きながら逃げ帰っただとコラッ?」「アイエエエ!ボス、あいつら、カタギじゃねえんです、軍隊みたいな奴らが奥から出て来やがって……アイキドーだ、あれは」大男、タケゴが唸った。「もういいわコラッ!後でこってり説教したるわ!電話するから外せ、コラッ!」「アイエエエ!」
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タケゴはフスマ型ドアーを跳ね開け、まろび出て行った。タメジマ=サンは卓上の据え置き型IRCトランスミッターを、おぼつかない手つきで操作した。……この手段はできれば取りたくなかった。後でどれだけ要求されるかわからない。
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だが、このままではクソったれは立ち退かず、その一軒のためにジアゲ計画自体が頓挫する事になる。そうなれば後はない。全てを失う、命も失う。湾岸を死んだハマチのようにぷかぷか浮かぶ事になる。ならば選択肢は他にない。「クソッ、たかが腐れ飲み屋の分際で……」
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タメジマ=サンは陰鬱な緑のLED投写モニタの光を見下ろした。
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#SOUKAI_HL:TAMEJIMA:支給依頼。大変ですからどうかお願いします。スモトリでも勝てない件です。/ #SOUKAI_HL:SOUDAN :ではニンジャを出します。/
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#SOUKAI_HL:TAMEJIMA:バー「ヨタモノ」のジアゲです。/ #SOUKAI_HL:SOUDAN :そちらの事務所にニンジャが向かいました。/ #SOUKAI_HL:SOUDAN :請求金額は後日提示されます。/
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請求金額は後日。タメジマ=サンの背筋に冷や汗が浮き出した。どれだけ吸い上げられるか、わからない。だが仕方がない。ビッグディールだ。儲けがゼロでも構わない。マイナスでも構わない。臓器ならある。そんな事は後でいい。とにかく実績とコネクションだ、値千金だ。
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「てめえ、どこのモンだ!?」部屋の外でタケゴの怒声がした。タメジマ=サンはビクリとした。「おい、てめえ、勝手に…あ、アイエエエ!アイエエエ!アイ…アイエエエエエエー!アイエエエ!アイエーエエー!」狂ったような悲鳴がタメジマ=サンの耳をつんざき、やがて訪れる沈黙。近づく足音。
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フスマ型ドアーの陰から現れたのは、異様なシルエットであった。タメジマ=サンはまずハリネズミを連想した。それからイガグリを。なんだ、これは?
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「それ」はひょろ長く痩せた人間のようだった。全身をラバースーツで覆い、身体中に細かく細かく、タタミ針を刺してある。そう、タタミ針を、全身に、余すところなく!「ドーモ、ハジメマシテ、ああー……近くにいましたので、私が来ました、ああー…」恍惚とした震え声が、針の中から聞こえて来た。
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タメジマ=サンの全ニューロンが激しく稼働し、後悔と恐怖の信号を脳髄へ送り込んだ。こんな。こんなのが来るなんて。「あー…アゴニィです、ドーモ……いい……」針男は痙攣しながらオジギをした。タメジマ=サンはもちろん失禁していた。「タ、タ、タメジマ、です、ハジメマシテ、アゴニィ=サン…」
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「ドーモ…私のこれは気にしないでください…私は、ホントウにソウカイ=ニンジャです、お名刺出しましょうか…ああー…」「結構です!アリガトゴザイマス!」タメジマ=サンはガチガチと歯を鳴らしながら、なんとかそれだけ答えた。
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「ああー…詳しい打ち合わせ…シマショウ…『ヨタモノ?』」身をよじりながら、アゴニィ=サンは囁くように問うた。「そ、そうです、『ヨタモノ』です。パンクスどもが夜な夜な集まる腐れ飲み屋でして。そこの物件のジアゲにかかってるんですが、どうも抵抗が激しくてね、元スモトリもやられちまい…」
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「元スモトリ…ああー…モシカシテ、入り口にいた…スミマセン…彼には…ちょっとひどい事してしまいました…オブジェに……」アゴニィ=サンは不吉に呟いた。さっきの悲鳴、そして沈黙。オブジェ?タメジマ=サンはツバを飲み込んだ。考えないようにした。
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「ヨタモノには、強いヨージンボーが複数いるんですよ、アゴニィ=サン。クローンヤクザもダメで、スモトリでもダメとなれば、もうニンジャのお力を借りるしか。何とかしていただきたいんで」「オブジェ……」
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「決行日は、店長が出て来ている日で、まあ、それでですね、そこで目にもの見せてやって、契約書にサインさせてやろうっていう、そんな考えでして」「ハイ…あ……あーダイジョブ…オブジェ!」ビクン!とアゴニィ=サンが痙攣した。
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(「キックアウト・ザ・ニンジャ・マザーファッカー#2」終わり。#3へ続く

コメント

オスツ🍣 @alohakun 2010年11月29日
「キックアウト・ザ・ニンジャ・マザーファッカー」 #1 http://togetter.com/li/73081 「キックアウト・ザ・ニンジャ・マザーファッカー」 #3 http://togetter.com/li/73090