「キックアウト・ザ・ニンジャ・マザーファッカー」 #5

B・ボンド&P・モーゼズ作。ネオサイタマを舞台としたサイバーパンク・ニンジャ活劇「ニンジャスレイヤー」の私家翻訳物 詳細はこちら http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

モクギョコアDJは回転を続けるターンテーブルの上で、蝋人形のディスプレイのごとく棒立ちになっていた。その隣、ミキサーの上に土足で立つのは、ラバースーツを着て体中にタタミ針が刺さった異様な男である。自分の体に刺さったタタミ針を一本一本抜いては、回転するDJの体に、ナムアミダブツ!

2010-11-03 22:35:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「お、オブジェはゆっくり作るんです、あー、あーイイ……そうして、こう、私があなたになります、あなたが私に、あーイイ……」 針まみれの男は震えながら満足げに呟いた。また一本タタミ針を抜き、DJの眉間に、ナ、ナムアミダブツ!「アイエエエエエエエエ!」

2010-11-03 22:37:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「オーディエンスのみなさん、動いてはいけません、ひとりひとり順番にやっていきます、とても時間がかかりますので。動いてはいけませんよ、その人が次のオブジェですね、わかりますね、あーイイ……邪魔は不可能なんです、そのう、わたしはニンジャですので……」

2010-11-03 22:40:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャという言葉が彼の口をついて出たとき、この場にいるすべての人間の脳裏に絶望が去来したに違いない。もはや、まったき静寂がヨタモノのフロアを支配していた。

2010-11-03 22:43:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

地震、雷、火事、ニンジャ。命知らずのパンクスが例外的に恐れるものを言い表したジョークである。裏を返せば、それほどまでに災害的なものでなければパンクスを恐れさせることはできない、という意味でもあった。だが、今こうしてこの場を掌握しているのは、まさにそのニンジャだというのだ。

2010-11-03 22:43:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

へその下から額まで、一直線に八本のタタミ針を突き刺されたモクギョコアDJは、静寂の中、トコロザワ・ケバブのようにターンテーブルの上でクルクルと回り続けていた。彼は既に恐怖と苦痛によって絶命していた。

2010-11-03 22:46:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フザッケルナー!」裏口から飛び出してきた二人のシシマル・パンクスが、凍りついた客の間をぬって、DJブースへ殺到する。四人のアイキドー使いのうちの二人である。走りながら、二人はアイキ・パンチの構えを取った。だが、しかし!「イヤーッ!イイー!」「アイエエエエエ!」「アイエエエエ!」

2010-11-03 22:53:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

一瞬のことであった。針男が体を震わせたと思うと、二人のシシマル・アイキドーが、びくん!と棒立ちになっていた。二人の額から臍下にかけて、8本ずつ、タタミ針が縦一直線に突き刺さっていた。ナムアミダブツ!二人はその姿勢のまま絶命していた。DJと同じ運命を、一瞬にしてたどったのだ!

2010-11-03 22:56:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

遠く離れた相手を一瞬に絶命させたタタミ針。これはいかなるトリックか。それすなわち、ニンジャ筋力のなせる業であった。彼は己の体に刺さった針を、さながらジャンピング・チヨヤ・サボテンのように、ニンジャ筋力によって押し出し、射出したのである。

2010-11-03 23:02:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フザッケルナー!」裏口から残る二人のシシマル・パンクスが飛び出し、凍りついた客の間をぬって、DJブースへ殺到する。この二人も走りながらアイキ・パンチの構えを取った。だが、同じことだ。「イヤーッ!イイー!」「アイエエエエエエ!」「アイエエエエエエ!」

2010-11-03 23:35:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

次の瞬間には、棒立ちのタタミ針・オブジェがもう二つ増えただけだった。「あー、イイ……」針男が感極まった様子で痙攣する。「皆さんハジメマシテ、私の名前はアゴニィです。今日はここをジアゲしにきました。オーナー=サン、いましたら……どうかジアゲさせてください……」 

2010-11-03 23:36:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そうです、わかりましたか、言う事をききなさいよ」裏口からタメジマ=サンがのそのそと進み出てきた。そしてオーナーにキツネ・サインをつきつけた。「さもなくばインガオホー!」だがその時、アゴニィの体が再び痙攣した。「イヤーッ!イイー!」「アイエエエエエエエエ!」

2010-11-03 23:40:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

次の瞬間には、あわれなドチンピラ、タメジマ=サンもまた、オブジェとなって棒立ちの死体になりはてたのであった。「あー……この土地、ジアゲ、私のボスが全部いただきます……とてもイイでしょう……これ……」アゴニィが痙攣した。「オーナー=サン、お願いしますね……」ナムアミダブツ!

2010-11-03 23:43:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼らを襲った突然の不条理を前に、パンクスは呼吸も忘れて、てんでに立ち尽くしていた。そして殺戮のフロアの片隅で、イチジクもまた、震えながら、サンズ・リバーの無慈悲な風景、死神の指先を、脳裏に幻視するのだった。

2010-11-03 23:51:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(「キックアウト・ザ・ニンジャ・マザーファッカー」#5、終わり。#6につづく

2010-11-03 23:52:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(親愛なる読者の皆さんへ) 翻訳時の重大なミステイクがありました事をここにお伝えし、お詫び申し上げます。キツネ・サインについてです。(続く)

2010-11-12 13:11:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

正しくは「中指と薬指、親指を合わせ、人差し指と小指を立てる」サインです。掲載時のやり方ではキツネは作れません。どうかご注意ください。正しい日本文化を誤解させかねないミスを重く見た翻訳チームは、責任者をアバシリ研修へ送りました。重ね重ね、お詫び申し上げます。(終わり)

2010-11-12 13:15:55