「トンデル論文のその後 」2013年7月22日斉藤修氏

原文をお読みになる事をお勧めします。→ http://www.aesj.or.jp/~snw/media_open/document/nhk_tondel130809.pdf
1
二十人のろの夢 @drsteppenwolf

「トンデル論文のその後 」2013年7月22日斉藤修氏 (PDF aesj.or.jp/~snw/media_ope…pic.twitter.com/75dnH1EG0z

2014-10-13 09:52:21
拡大

1. トンデル旧論文(2006 年)

彼の論文により、年間僅か 4mSv の被曝でがんが増加したことが疫学調査で証明された(統計的に有意に増加している)として関係者に大きな衝撃を与えるとともに ICRP の表明しているリスク値との乖離の大きさは、世界各国の放射線規制のもととなっているICRP の勧告の正当性について疑いの念を齎すものとなった。

2.欧州放射線リスク委員会(ECRR)の論文利用

トンデル論文は ECRR の主張を裏付ける数少ない材料であり、ECRR は早速トンデル論文を取り上げ世界中に喧伝するとともに、新たに彼の論文を利用して福島事故について事故後の 10 年間で 10 万人ががんで死亡するという資料を作成し、世界各国に発信した。ECRR の宣伝部長の C.バズビイは日本国内でも週刊誌を始め多くのマスコミにこの資料を喧伝して歩いた。NHK の一部の人が作成したテレビ放送ではバズビイの宣伝が、国際放射線防護委員会(ICRP)誹謗の材料として使用された。

2011年3月30日のバズビー論文

Chris Busby
The health outcome of the Fukushima catastrophe Initial analysis from risk model of the European Committee on Radiation Risk, ECRR
30th March 2011

PDF
http://www.llrc.org/fukushima/subtopic/fukushimariskcalc.pdf

二十人のろの夢 @drsteppenwolf

2011年3月30日のバズビー論文の表5 100km圏内の予測がん増加 pic.twitter.com/nxJL36Gpa6

2014-10-13 16:46:12
拡大
二十人のろの夢 @drsteppenwolf

2011年3月30日のバズビー論文の表6 100-200km圏の予測がん増加 pic.twitter.com/u4ZSBJ0h9j

2014-10-13 16:47:14
拡大

ICRPモデル(50年間の癌増加)
2,838人(100km圏内)+3,320人(100-200km圏)=6,158人

ECRR Tondelモデル(10年間の癌増加)
103,329人(100km圏内)+120,894人(100-200km圏)=224,223人

ECRRモデル(50年間の癌増加)
191,986人(100km圏内)+224,623人(100-200km圏)=416,609人

ECRR(欧州放射線リスク委員会)2010年勧告

(英文PDF) http://www.euradcom.org/2011/ecrr2010.pdf
(和訳) http://www.jca.apc.org/mihama/ecrr/ecrr2010_dl.htm

Preface の1文

"It received powerful support from reports of increases in cancer in Belarus after Chernobyl and also from the epidemiological studies of Martin Tondel of cancer in northern Sweden published in 2004: Tondel’s findings of a
statistically significant 11% increase in cancer per 100kBq/m2 of Cs-137 contamination from Chernobyl are almost exactly predicted by the ECRR2003 model."

3. 新トンデル論文:

その後調査を継続したトンデル氏は、「スウエーデンにおける地上ガンマ線とがんリスクの関係」という表題の新論文を 2011 年に公表した。彼はその中で「明白な、そして期待したような直線的な被曝とがん発生の関係は見出されなかった」としている。

NHKの報道責任

評価の不明確な論文を取り上げて低線量被曝の発がんリスクを訴えようとした NHK 報道の論拠も同時に失われてしまった。ICRP を批判している ECRR の主張に依存したと思われる 2011 年 12 月の NHK の放送の過ちは明白になったと言うっべきであろう。トンデル氏の論文修正の事態を受けて、NHK は大々的に取り上げた放送の重要な論拠の修正についても当然報道すべきである。「一旦放送した後は我関せず」という態度は公共放送である NHK としての取るべき態度ではないと考えるが、如何に。

4.国連科学技術委員会(UNSCEAR)の福島事故の健康影響検討結果

「多数の人の被曝は低く、ヨウ素による甲状腺被曝は数 10mSv の範囲であり、セシウムの被曝は数 mSv 程度で、多くの人が自然放射線の範囲内である。今後多数のがん死亡が発生するとは考えられない。
作業者 2 万人のうち 170 人が 100mSv、6 人が 250mSv を超えて被曝したが健康上特別な異常を示した者はいない。小児被曝については詳細を調査中であり、その結果は 2013年末までに作成される報告に明らかにされる予定である」。

まとめ

現在我が国の多くの人の放射線安全基準に対する認識は混乱しており、福島の事故後の復旧に大きな妨げの根源となっている。このような安全基準認識の混乱を導いた大きな要因の一つとして上述のような一部団体の論拠なき放射線リスクの誇大宣伝とそれを取りあげるマスコミの報道の態度が指摘されている。