杉作J太郎さんの一杯のおそばにまつわるお話(完結)

足かけ約3か月に渡った連載をまとめました。
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杉作J太郎 @OTOKONOHAKABA

今日の晩ごはんは2時間ぐらい前に食べた。立ち食いそば屋の天玉そばだった。立ち食いとは言っても椅子に座って食べた。腰が良くないので本当に立って食べる店では具合が悪いのだ。で、このあいだ、同じ店で食べたとき、天ぷらを2種類トッピングしたらお汁を吸ってぶわぶわになって、つづく。

2014-10-08 23:51:05
杉作J太郎 @OTOKONOHAKABA

つづきです。天ぷらがお汁を吸ってしまい、天ぷらがぶわぶわに膨らんだぶんお汁がなくなってしまった。なお「お汁」と書いて「おつゆ」と読みますよ。「おしる」ではないです。「おつゆ」です。で、少なくなったお汁に天ぷらの油分が合体して、ま、濃厚。美味しいっちゃあ美味しいのですが、つづく。

2014-10-09 01:27:12
杉作J太郎 @OTOKONOHAKABA

つづきです。美味しいっちゃあ美味しいんだけどお汁が油っぽくなりすぎておまけに量も少なく、ま、これはつらかった。で、今夜。その前回の記憶が瞬時に蘇ったからなのだろうか。店員さんがそばを丼に入れ、お汁をかける。そのとき、俺は意を決して店員さんに近づいていったのだ、つづく。

2014-10-09 01:45:01
杉作J太郎 @OTOKONOHAKABA

つづきです。俺は店員さんにはっきり言った。「すみません、お汁、多めに入れてもらっていいですか?」俺は飲食店とかで注文をつけるほうではない。面倒だからだ。が、前回のアブラギッシュなお汁。天ぷらにたっぷり吸われてほとんどなくなってしまったお汁。そして油でテカテカになった麺、つづく。

2014-10-09 12:54:57
杉作J太郎 @OTOKONOHAKABA

つづきです。地獄の黙示録そばはもう絶対ごめんだ!不退転の決意が俺の声を一層強いものにした。それはできません、と、店員さんに断られたらどうしよう?いや、断られたらという選択肢はない。なにがなんでもお汁をたしてもらうのだ!俺は腹の底にぐっと力を込めた。そんな発声をしたのだ、つづく。

2014-10-10 00:34:38
杉作J太郎 @OTOKONOHAKABA

つづきです。店員さんは「はい」と、軽やかに丼の淵すれすれまでお汁を入れてくれた。「これでいいですか?」店員さんはにっこり笑って俺に尋ねた。その笑顔が逆に物語ったように思えた。あー、これは俺が強く言いすぎたのかもしれない。若干後悔したが、いや、お汁が少ないよりはいい、つづく。

2014-10-10 00:46:38
杉作J太郎 @OTOKONOHAKABA

つづきです。さて、そのお汁がなみなみと入ったお汁をこぼさないようにテーブルに運んでいざ実食である。なるほど。いつもはほとんどその全身を浸らせてない天ぷらがお汁にからだ半分沈んでいる。玉子は完全にお汁深く沈んでいる。さらには麺。これはほとんど沈んでいて目視が難しいレベルだ、つづく。

2014-10-11 23:02:52
杉作J太郎 @OTOKONOHAKABA

つづきです。たっぷりすべてがお汁に沈んだ丼を見て俺は満足だった。満足だった…、か。満足だった…、か?天ぷらがお汁をぶわぶわ吸ってしまい、危険な状態となった前回のおそば。あれではない。くどいようだがあれはつらかった。それに比べていま、たしかにお汁は豊富だった。それはまるで、つづく。

2014-10-11 23:46:33
杉作J太郎 @OTOKONOHAKABA

つづきです。それはまるで秋が深まるある日の夕暮れ、そんなタイミングで目の前に広がる山あいの湖のようであった。大袈裟な話でもトンチンカンなたとえでもない。本当にそう感じたんだ。渡る風の音さえ聞こえない静かな夕暮れの湖。こんこんと何処から湧き出しているのであろう豊かな水量が、つづく。

2014-10-13 19:11:37
杉作J太郎 @OTOKONOHAKABA

つづきです。ぼんやり眺めていると吸い込まれてしまいそうだ…。秋の夕暮れの湖は不思議な魅力に満ちている。いま目の前のテーブルに置かれたおそばの丼。静まりかえる大量のお汁。それこそはまさに神秘の湖であった。お汁は動かない。静かだ。風もない。湖面を渡る旅人もない。だが、つづく。

2014-10-13 19:21:33
杉作J太郎 @OTOKONOHAKABA

つづきです。満々としたお汁の写真を見ていただきたいと思う。たまたま撮影したものではない。俺はたいていの食べ物の写真を撮るようにしている。それはなぜか?俺の暮らしの中で食事のしめるウェイトが大きいからだ。そうとうに大きいからだ。なにを食べるか?それはどう生きるかに相応する、つづく。

2014-10-15 02:22:42
杉作J太郎 @OTOKONOHAKABA

つづきです。どう生きるか、と、その前に。写真を紹介しておかないとまたもや紹介のタイミングがなくなってしまう。どこの店だかわからないようにトリミングしたのがこちら。お汁にそばが沈んでいるのがおわかりいただけるだろうか、つづく。 p.twipple.jp/1LZKo

2014-10-16 02:04:27
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杉作J太郎 @OTOKONOHAKABA

つづきです。山間の湖を思わせる大量のお汁は信じられない作用を発生させた。かき揚げの天ぷらの油分がまったくといっていいほど感じられないのだ!前回はもともと少なめだったお汁に天ぷらをふたつ入れてしまったためお汁が油でぬるぬるになってしまった。今回はそれを恐れてお汁を増量して、つづく。

2014-10-22 02:47:21
杉作J太郎 @OTOKONOHAKABA

つづきです。お汁を増量してバッチリだったはずなのに油の味がしないのだ。これではかき揚げそばの意味がない。天ぷらの油の味がしないそば汁は魚の棲まない湖である。月の上らない海である。月の沈まない海である。旅人を乗せない舟である。夢を忘れた詩人である。愛を歌わない小鳥である、つづく。

2014-10-29 07:47:13
杉作J太郎 @OTOKONOHAKABA

つづきです。お汁を増やしてくださいと勇気を出して言ったことがよかったのかどうか。結局、適性のお汁の量なのだ。お店のひとは毎日何百杯のそばを作っているのだから。客には味が濃いのが好きなひと薄いのが好きなひと、いろんなひとがいるだろう。そうです、ついに文章はまとめに向かって、つづく。

2014-11-08 13:04:47
杉作J太郎 @OTOKONOHAKABA

たぷたぶのおそばの話の続きと、「趣味なんて聞かれたことないよなー」の続きと、どちらも忘れたわけではありません。おそばの話はもうすぐ終わります。「趣味なんて聞かれることないよなー」の続きは嘘のような狂ったような物凄い出来事でした。ちゃんと書けるかな…とは思っています。

2014-12-12 02:27:37
杉作J太郎 @OTOKONOHAKABA

立ち食いそばの話のつづきです。最終回。天ぷら二個入れるときは大盛り用の大きな器にしてお汁を多くしなければ油っぽくなる。だが。本当は店員さんに言えばよかったのだ。お汁を足してください、と。たぶんくれる。もしくれなくてもそこから先はまた別の話だ。小さな勇気が世界を広げていく。おわり。

2015-01-02 20:56:46