2014年10月19日

書評〈書物との対話〉 鈴木涼美『「AV女優」の社会学』

倉沢繭樹のツイッター書評。 鈴木涼美『「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか』青土社、2013年。
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倉沢 繭樹 @mayuqix

index16:書評〈書物との対話〉 鈴木涼美『「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか』青土社、2013年。(2014年) ow.ly/CZ7go #twnovel

2014-10-19 19:50:10
倉沢 繭樹 @mayuqix

今や男性のみならず、女性のニーズにも応えて細分化したAV。男のセックスの「下手さ」「ワンパターン」を揶揄するときに「AV見すぎ」といった文句が使われる程に浸透し、有名AV女優、AV男優はしばしばメディアに登場する。近代化した日本の「下半身」を構成するセックスメディアのAVは、

2014-10-19 17:36:13
倉沢 繭樹 @mayuqix

しかしそうしてメジャー化した側面の裏で、社会から白い目で見られ、時に引退したAV女優たちの再就職にスティグマ(負の烙印)として機能する。

2014-10-19 17:36:41
倉沢 繭樹 @mayuqix

著者は彼女たちAV女優が「構造的劣位」に置かれていると言う。「AV女優であること」に伴う大きな困難・苦痛として口にされるのは「親(友人・学校・職場)バレ」の恐怖と「引退後」の不安だという。ここで、筆者はこう断っている。

2014-10-19 17:37:22
倉沢 繭樹 @mayuqix

「性の商品化に携わること自体が、彼女たちを社会的な被害者と位置づける事由にはなっていない。『性の商品化に携わっていたことが、社会的に劣位な立場になる理由となりうる』、といった社会的な構造によって、彼女たちは被害者と位置づけられる可能性は持っている」。そしてこう続ける。

2014-10-19 17:38:00
倉沢 繭樹 @mayuqix

「『動機』の獲得、AV女優たち自身の自由意志に対する執着自体が、彼女たちの責任意識、社会的な差別の正当化につながっている可能性についてはふれておきたい。自己責任によるストレス/苦痛だと断じてしまう言い訳が、AV女優たち自身によって社会に与えられる。

2014-10-19 17:38:53
倉沢 繭樹 @mayuqix

『好きでやっているんでしょ?』。世間からは大した重みもなく頻繁に発せられる。しかし、AV女優自身が自らにかけるその言葉は時に、重い」。

2014-10-19 17:39:17
倉沢 繭樹 @mayuqix

ある女性が「AV女優になる」動機を私たちは知りたがる。その「動機語り」を含んだAV女優のインタビューはコンテンツとして消費される。「『AV女優の動機』をたずねたいという欲求の背景に想像できてしまうのは、自らの性を商品化することを、通常の感覚であれば避けたい職業、

2014-10-19 17:40:06
倉沢 繭樹 @mayuqix

性の社会的被害者として位置づける一般的な感覚だ。余程の切実な(一般的には金銭的な)理由がなければ選択されないであろうAV女優という職業が、そうではない何か別の理由で選択されている(もしくは何も理由がなく選択されている)ことに興味深さを見出す」。

2014-10-19 17:40:42
倉沢 繭樹 @mayuqix

AV女優には大別して「単体AV女優」と「企画AV女優」という区別がある。前者は、メーカーと専属契約を結び、契約期間中は他のメーカーの作品に出演せず、月に一度そのメーカーから発売される作品に出演する、といった活動を行っている者。

2014-10-19 17:41:18
倉沢 繭樹 @mayuqix

後者は、そういった専属契約なしで活動するAV女優全般を指す。AV女優になって作品に出演するには、事務所に所属するためのプロダクション面接、自分を売り込む営業面接としてのメーカー面接、作品への出演が決定した際の具体的な打ち合わせとしての監督面接などを経験しなければならない。

2014-10-19 17:41:55
倉沢 繭樹 @mayuqix

また、単体女優と企画女優ではメーカー面接の作法が違う。単体女優面接は、まだ方向性やキャラクターが定まっていない新人女性の価値を見つけ、売り出していく方向を考えるための、専属契約を結ぶに値する素材を選抜する面接。

2014-10-19 17:42:38
倉沢 繭樹 @mayuqix

対して企画女優面接は、まず作品の企画が先行していて、そこに「はまる」女優を見極める面接だ。そうした数々の面接を経験する過程で、彼女たちAV女優の「語り」が訓練され、磨かれていく。特に単体AV女優から企画AV女優に転身した後は、契約がなく出演作が保障されていない状態なので、

2014-10-19 17:43:12
倉沢 繭樹 @mayuqix

メーカー面接の数が出演作数に直結し、収入の多寡を決めることになる。そこで、企画作品に採用してもらうため、AV女優たちは自身のキャラクターを探し、方向性を考えはじめる。他の女優との差別化戦略をとる。それが自分をより印象づける「持ちネタ」の獲得であり、

2014-10-19 17:43:49
倉沢 繭樹 @mayuqix

キャラクターを際立たせる自己演出だ。そうして「自分語り」のフォーマットを確立することで、企画AV女優として活動し続けることができる。「AV女優になる」動機はありふれたことだったかもしれないが、「AV女優である」動機は、そうした過程の中で強固なものとなり内面化される。

2014-10-19 17:44:19
倉沢 繭樹 @mayuqix

つまり「動機語り」はAV女優としての業務に組み込まれていて、自己演出の一環であると同時に、自分が「AV女優である」ための支えともなるのだ。ここにおいて「動機のオートポイエーシス」が立ち上がる。

2014-10-19 17:44:51
倉沢 繭樹 @mayuqix

「彼女たちにとって、常に動機や自分について問いを向けられ、メディアに向かって語るという行為は、どうやら業務や戦略を超えた意味のあるものであった。それは、ただ自分のために語るのではなく、ただ視聴者に媚びるのではなく、

2014-10-19 17:45:43
倉沢 繭樹 @mayuqix

視聴者のためにつくられた業務が結果的に彼女たちの意識の中に内面化され、彼女たちが仕事を続ける拠り所となっていく、そしてその姿が再度メディア上に浮かび上がる、という、相互参照的なAV女優の語りの構造を示すものである」。

2014-10-19 17:46:17
倉沢 繭樹 @mayuqix

だからこそ「月に三日程度の拘束で多額の報酬を受け取る単体AV女優に比べて、少額のギャランティで多忙な活動をこなす企画AV女優に、『動機』について問いかけたいと考えるのは、我々以上に、彼女たち自身でもあるのだ」。

2014-10-19 17:46:51
倉沢 繭樹 @mayuqix

AV業界は「デビュー間もないAV女優の労働を漠然と支える(例えば若く可愛くギャランティが高いという)価値や動機が、永遠には保持されえない環境」だ。だからこそ「AV女優たちは別の価値、別の動機を見つけることには貪欲だ」。

2014-10-19 17:47:22
倉沢 繭樹 @mayuqix

著者は生身のAV女優の仕事を追いかけていくうちに、「性の商品化」、「身体を売ること」の中毒的な部分を見つけ出すことになった。単体AV女優から企画AV女優になると、たくさんのメーカー面接を受け、出演本数を確保すること、つまり「頑張れば頑張っただけ」返ってくるものが大きい。

2014-10-19 17:47:57
倉沢 繭樹 @mayuqix

その自発的な「頑張り」が過剰になることがAV女優の多忙さの大きな要因だ。そしてまた、そうして「AV女優である」ことが生活の中心になると、彼女たちの職業意識に変化が表れる。スケジュール管理や仕事の幅について多くを任せられ、

2014-10-19 17:49:40
倉沢 繭樹 @mayuqix

自立した自由な存在として仕事を選択している事実にも、より自覚的になる。多様な価値を持ったAV女優らとの出会い、あるいは若くて可愛いことだけではないAV女優の価値を重視して語るマネージャーの言葉などが、彼女たちに多様な指標上での自分の位置を教える。

2014-10-19 17:50:53
倉沢 繭樹 @mayuqix

そうした経験が、意志とプライドを持ったAV女優へと変質を促す。これを著者は「ホリックの問題と意志獲得の問題」と呼び、このふたつが絡まり合いながら、AV女優がAV女優であり続ける実態を支えている、と説明している。

2014-10-19 17:51:24
倉沢 繭樹 @mayuqix

さて、本書は「性を売ること」に関する「強制/自由意志」論議を解体する、もしくは相対化することもひとつのテーマとしている。著者は語る。「その動機やキャラクターを、彼女たちが『本当の私だ』と思っているか、『嘘の演技だ』と考えているかに私はさほど興味はない。

2014-10-19 17:52:12
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