2014/10/14放送「なんでも鑑定団」での縄文土器の鑑定に対する疑問と、それをネタにいくつか。

先週の鑑定団に出てきた縄文土器の鑑定結果が、ちょっとそれ違くね?っていう内容だったので、それをネタに土器屋(※)として思うところなんかを。 話のタネは↓この縄文土器です。 http://www.tv-tokyo.co.jp/kantei/kaiun_db/otakara/20141014/09.html 続きを読む
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T_Toki @toki1_ta

少しだらだらと50ほど連ツイします。TL汚しお許し下さい。

2014-10-20 12:35:44
T_Toki @toki1_ta

(1)先日、知人に「この前の鑑定団で縄文土器出てたよねー。」と振られ、「見たよ、でもあれさ、晩期の注口って言ってたけど違うなあ」と返したら「どうしてそんなことがわかるの?」と。

2014-10-20 12:35:57
T_Toki @toki1_ta

(2)ちょうどいい機会なので例の土器を題材に、いち土器屋なりの縄文土器観察のポイントやら、その他もろもろをざっくりとまとめてみようかと思います。あくまでざっくりと。

2014-10-20 12:36:19
T_Toki @toki1_ta

(3)まず前提として知っておかなければならない話から。縄文土器は、時代・地域ごとに、ある一定のルールを守るかたちで土器が作られます。形であったり、文様であったり、器種構成であったり。これを「土器型式」といいます。

2014-10-20 12:36:45
T_Toki @toki1_ta

(4)土器型式を見分けるためのポイントのまず一つ目、器形。 土器の部位は下から順番に底面・底部・胴部・(肩部・頸部)・口縁部・口唇部と分けられます。土器型式によってそれぞれの部位に違いがあります。画像参照。 pic.twitter.com/dBa7F4EGra

2014-10-20 12:37:37
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T_Toki @toki1_ta

(5)土器型式を見分けるためのポイント、二つ目、文様。 この理解の一助になるのが、「文様帯」という考え方。

2014-10-20 12:37:52
T_Toki @toki1_ta

(6)縄文土器は、好き勝手に模様を描いているわけではなくて、「どんな施文具を使ってどの場所にどんなモチーフの文様を描くか」という、土器型式ごとのルールに従っています。

2014-10-20 12:38:11
T_Toki @toki1_ta

(7)この中の「どの場所に」というのが、大体先ほど器形の説明で上げた部位ごとに区分けされます。口縁部なら口縁部、胴部上半なら胴部上半、というように。特定の部位にぐるりと回した帯の様に同じ文様が巡るから、文様「帯」といいます。

2014-10-20 12:38:35
T_Toki @toki1_ta

(8)さらに、土器を上から見ると円だけど、その円周をいくつかに分割(大体は4)し、文様割り付けや器形装飾を区分する単位として利用していることが多いです。レイアウトは相当しっかりしています。

2014-10-20 12:39:00
T_Toki @toki1_ta

(9)レイアウトの話からの余談だけど、とある土器の隆帯文の粘土紐が剥がれた下から、沈線の下描きが出てきたこともあったなあ。まあそれはおいといて、土器型式というのはこうした器形・文様の、それぞれ固有の組み合わせからできています。

2014-10-20 12:40:08
T_Toki @toki1_ta

※補足追記※ 土器型式の判別における手がかりには、単純な器形文様だけではなく、土器胎土の選択、成形のしかた、施文順序なんかのように、人同士の技術伝習がなければ伝わらないものも含みます。そのあたりの伝わり方からも、当時の交流の仕方(人も動いたか物だけだったか等)がわかります。

2014-10-20 18:46:44
T_Toki @toki1_ta

(10)てなわけで、組み合わせ無限大!じゃないけど、土器型式ってのは山ほどあって。考古学関係の本をたくさん出してる雄山閣から出てる「日本土器辞典」っていう本があるんだけど、縄文土器の型式だけで240強の項目があります。

2014-10-20 12:40:36
T_Toki @toki1_ta

(11)当時の最新の研究成果による、代表的な土器型式はほぼ網羅されているんだけど、各項目ごとの細分やらローカルタイプなんかもあるので、実際の型式数はもっと増える(全てが有意かどうかは抜きにしてね)。

2014-10-20 12:40:50
T_Toki @toki1_ta

(12)ちなみに以前北海道内での土器型式をざっくり拾遺したことがあったんだけど、それだけで200以上ありました。土器辞典には北海道の縄文土器型式は17項目。細かくわけりゃいいってモンじゃないので、有意な形に整理してかなきゃいけないってのは次の課題。

2014-10-20 12:41:10
T_Toki @toki1_ta

(13)有難いのは、土器型式はそれぞれがとっても個性的なこと。冒頭に書いた通り時代・地域ごとに一定のルールの上で作られているから、土器型式がわかれば遺跡の年代を知る最大の手がかりになる。

2014-10-20 12:41:49
T_Toki @toki1_ta

(14)時間的・空間的に隣接しているとお互い影響しあってたりするから、その「かかわりあい方」を調べることで、当時の人間の移動やら交流やらの姿まで知ることができ、そんなかかわりあい方を系統樹のように整理したのを「編年」といって、ある種のものさしの役目も果たしています。

2014-10-20 12:42:21
T_Toki @toki1_ta

(15)前置きが長くなっちゃったけど、ようやく本題。こないだ鑑定団に出た問題の縄文土器について。

2014-10-20 12:42:35
T_Toki @toki1_ta

(16)まず、番組内で言及のあった「晩期の注口土器」について。縄文時代の注口土器というと基本的に東日本でしか出ないんだけど、晩期になるとさらにぐっと出現範囲が狭まり、縄文時代の終わりをかざる亀ヶ岡文化と、その影響を受けた型式の中にとどまる。

2014-10-20 12:43:04
T_Toki @toki1_ta

@aberaba 訂正、東日本にしか、ではなく東日本で多く、です。

2014-10-20 12:56:29
T_Toki @toki1_ta

(17)該当するのは大洞式(亀ヶ岡式)と、関東だと安行3a式、北陸だと朝日式とかかな。これらの土器の特徴は、器面を埋め尽くす複雑な文様。磨消縄文や彫去手法によって描かれた凹凸に富んだ入組文・工字文等や、精緻な調整による光沢をもった器面。

2014-10-20 12:43:18
T_Toki @toki1_ta

(18)問題の土器と比べれば一目瞭然なので、比較画像(画像引用元は付記しましたが、問題あれば削除します)。さすがに型式の同定はできなくても、あれを見て「晩期の注口」っていう選択肢はまず出てこないと思います。 pic.twitter.com/sKLT87lPLs

2014-10-20 12:43:41
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T_Toki @toki1_ta

(19)それじゃあ一体いつ、どこの土器なのか?というのを型式学的に同定するならば、縄文時代後期初頭の土器型式、三十稲場式のうち新段階が該当すると思われます。ちょっと検証もしてみました。

2014-10-20 12:44:05
T_Toki @toki1_ta

(20)検証資料その1。ツイッターの短文では書ききれないので、画像を参照下さい。 pic.twitter.com/2ds1QQpO8Q

2014-10-20 12:44:36
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T_Toki @toki1_ta

(21)検証画像その2。ツイッターのアップロードだと小っちゃくなっちゃって超見にくいので、見やすい版をimgurに上げておきます。i.imgur.com/VPxUhrH.jpg pic.twitter.com/S1JCrBEhaa

2014-10-20 12:45:08
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T_Toki @toki1_ta

(22)我が家にも座右の書として土器辞典置いてあるんですが、たしかどっかで見たことあったなあ…と思ったらビンゴ。ただ、何せ北海道の土器屋なものですから、御当地の同学先学の皆様のご意見が伺えればとても有難いです。

2014-10-20 12:45:52