「サプライズド・ドージョー」 #1

B・ボンド&P・モーゼズ作。ネオサイタマを舞台としたサイバーパンク・ニンジャ活劇「ニンジャスレイヤー」の私家翻訳物 詳細はこちら http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

第1巻「ネオサイタマ炎上」より。「サプライズド・ドージョー 1」

2010-07-28 23:46:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

大型ハーレーを駆る巨漢のアースクエイクと、サイドカーに座ったヒュージシュリケンは、Y-12型バイオヤクザの乗ったベンツ軍団を引き連れて、ネオサイタマの北、中国地方へと向かっていた。ソウカイ・シンジケートの敵、ラオモト・カンの敵、目障りなドラゴン・ドージョーを襲撃するためだ。

2010-07-28 23:47:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マッポーレベル大気汚染は日本列島全域に広がっており、中国地方もやはり、昼も夜もなく暗い。救いといえば、都心部ほど強烈な酸性雨が降らないことだろう。

2010-07-28 23:47:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

それでも彼らが走り抜けるメガロ・ハイウェイの下では、酸性雨の影響を受けて皮膚がケロイド状になった水牛たちが、招かれざる客たちのエンジン音を聞きつけ、うらめしげにモーモーと鳴いていた。

2010-07-28 23:49:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そろそろインタビューが必要だな」ハイテク・ナビゲーショーン・レーダーを見ながら知能派のアースクエイクが言い、ハーレーを止める。「俺がやろう、得意分野だ」ヒュージシュリケンはサイドカーから飛び降りたかと思うと、ハイウェイの下に広がる、青色のネオンサイン眩しい女衒街へ消えていった。

2010-07-28 23:51:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「オイラン」「サイコウ」「ヤスイ」などの猥雑なネオンサインが明滅する暗い路地裏を、ヒュージシュリケンは威圧的に闊歩した。どこのオイランハウスにも、日本政府より力を持つヨロシ=サン製薬のロゴマークが入っている。

2010-07-28 23:54:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「まずい、ニンジャだ……」「なんでニンジャがこんな所にまで……」「ニンジャがこっちに来る……」女衒街のごろつきや市民たちは、直径2メートル近いセラミック製大型スリケンを背負ったニンジャ装束の男を見て、声を潜めた。笠を目深にかぶり、目を合わせないようにする。

2010-07-28 23:55:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そこのお前。ドーモ、ヒュージシュリケンです」運の悪い違法ICチップ売人が、ヒュージシュリケンのインタビュー相手に選ばれたようだ。売人は声を震わせながらアイサツする、「ドーモ、カンバギ・モトオです」。

2010-07-29 00:02:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「カンバギ=サン、お前はドラゴンドージョーがどこにあるか知っているか?」ヒュージシュリケンは、うつむく行商人に対して威圧的に質問した。 「知りません」カンバギは誠実な男だったし、実際知らなかった。

2010-07-29 00:04:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヒュージシュリケンはにこやかな顔になる。「カンバギ=サン、俺は三度の飯より拷問が好きだ。お前が売っているICチップを見ただけで、それを使った拷問を100個は思いつく」。それを聞いて、カンバギは恐怖のあまり震えた。

2010-07-29 00:04:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「どうだ。答えないと、まずはお前の小指を折る」 「やめてください知りません」カンバギが答える。 すると、ヒュージシュリケンは覆面の下で満面の笑みを浮かべてから、ニンジャならではの力と掛け声でカンバギの指をへし折るのだった。 「イヤーッ!」 「アイエエエエエ!」

2010-07-29 00:07:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「どうだ。答えないと、次はお前の薬指を折る」 「やめてください本当に知りません」カンバギが答える。 すると、ヒュージシュリケンは覆面の下で満面の笑みを浮かべてから、ニンジャならではの力と掛け声でカンバギの薬指をへし折るのだった。 「イヤーッ!」 「アイエエエエエ!」

2010-07-29 00:16:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「どうだ。答えないと、次はお前の中指を折る」 「やめてください本当に知りません」カンバギが答える。 すると、ヒュージシュリケンは覆面の下で満面の笑みを浮かべてから、ニンジャならではの力と掛け声でカンバギの中指をへし折るのだった。 「イヤーッ!」 「アイエエエエエ!」

2010-07-29 00:16:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その時、ヒュージシュリケンの胸元からブザー音が聞こえる。知能派のアースクエイクからだ。ヒュージシュリケンは億劫そうに、携帯電話のアンテナを伸ばす。 「ヒュージシュリケン=サン、ヘルカイトからの偵察情報が届いた。ドラゴン・ドージョーを発見したらしい。もう戻ってきてくれ」

2010-07-29 00:18:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヒュージシュリケンは舌打ちする。ヘルカイトめ、余計な手出しを。まだ俺の独創的な拷問はこれからだというのに……ICチップすら使っていないではないか。……少なくとも、あと2本は指を折って、あの男の右腕を完全にストライクにするまでは納得がゆかん。

2010-07-29 00:22:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そう思って足元を見ると、カンバギ=サンの姿が無い。しかし、ナメクジの這ったような失禁の跡が、オイランハウスの谷間にある路地裏へと続いている。電話中に逃走を試みたのだ。むろん、ヒュージシュリケンはそれを知っていた。あえて逃がしたのだ。追いついて拷問を再開するために。

2010-07-29 00:25:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

暗い路地裏は、オイランハウスや違法ICチップ工場から流れ出る排気ガスや廃液のパイプまみれだ。時折、いかにも有毒そうな青白い火花が散っている。一見煌びやかな女衒街も、裏路地に一歩足を踏み入れれば、化粧を落としたオイランのようにおぞましい。

2010-07-29 00:26:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その裏路地は、錆び付いたトーフ・コンテナやヨロシ=サン製薬の麻薬的風邪薬コンテナが無秩序に積み上げられて行き止まりになっていた。そこで笠をかぶった男が、絶望したようにうなだれている。ヒュージシュリケンは嗤った。逃げ切ったと思わせておいて再び捕える。サイコウの快感だ。

2010-07-29 00:28:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「カンバギ=サン、拷問の続きだ」ヒュージシュリケンが言い放つ。「ドラゴン・ドージョーはどこにある?」 「ドラゴン・ドージョーの場所を知ってどうする?」笠をかぶった男は、後ろを向いたまま答えた。その声は、哀れなカンバギ=サンの声ではなかった。良く見れば、背丈も違う・・・。

2010-07-29 00:30:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヒュージシュリケン=サン、はじめまして、ニンジャスレイヤーです。次はこちらがインタビューをする番だ」ニンジャスレイヤーは笠とぼろ布を投げ捨て、赤黒いニンジャ装束を露にした! (「サプライズド・ドージョー 2」へ続く)

2010-07-29 00:32:22