「サプライズド・ドージョー」 #5

B・ボンド&P・モーゼズ作。ネオサイタマを舞台としたサイバーパンク・ニンジャ活劇「ニンジャスレイヤー」の私家翻訳物 詳細はこちら http://togetter.com/li/73867
ニンジャスレイヤー
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Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
第1巻「ネオサイタマ炎上」より。「サプライズド・ドージョー 5」
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
重金属酸性雨で朽ちかけたジンジャ・カテドラルの内部には、広さ五十畳ほどの、おごそかなドージョーが隠されている。このゴーストタウンには、電気も水道も無い。ボンボリと蝋燭の灯りだけが、ドージョーの北に正しく配された大仏像と、その周囲を守る24体のニンジャ神話の神々の像を照らしていた。
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これらの像は、長い時の流れの中で無残に破壊されてきた。無数の手を持つ神、鬼を踏みしだく神など、様々な神像があるが、いずれもその頭部や手足を失い、特に酷いものは足首から下しか残されてはいない。そしてそれは、平安時代から続いた24のニンジャクランの、哀れな末路の象徴でもあった。
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修行用の木人。自動スリケン投擲機。壁にはぼろぼろの旗が掲げられている。翼を広げた竜の姿がシンボルマークとして刺繍され、その下にはカタカナで「ドラゴン」と縫い上げられている。ここが由緒正しきドラゴンニンジャ・クランの本拠地、ドラゴン・ドージョーであることの、何よりの証拠であった。
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強いインセンスの香りが、古く厳めしいカテドラル内に満ちている。その中心では、竜の刺繍入ニンジャ装束を纏う一人の老人が、ドラゴンの旗を背に十枚もの座布団を重ねて正座をし、深い瞑想に入っていた。彼こそはドラゴン・ドージョーの主、日本最後のリアルニンジャ、ドラゴン・ゲンドーソーである。
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彼の前で正座をし、固唾を呑みながらじっとドラゴン・ゲンドーソーの命令を待つのは、白いニンジャ装束に身を包んだ10人のニュービー・ニンジャたち。そして、覗き窓から外の様子を伺うドラゴン・ゲンドーソーの孫娘、若くたおやかなユカノであった。ユカノのバストは豊満であった。
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鳥居に仕掛けたブービートラップが作動し、立て続けにナリコが鳴ってからというもの、ドラゴン・ドージョー内は緊張感と静寂によって支配されていた。ナリコが作動し続けるということは、野良水牛ではなく、何か明確な悪意を持った外敵がドラゴン・ドージョーへと近づいていることを意味する。
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命令を下すべきゲンドーソーは、目を閉じたまま動かない。しかし、ユカノもニュービーたちも、ゲンドーソーに寄せる全幅の信頼ゆえに、取り乱す気配は無かった。ナリコがさらに鳴る。第七警戒態勢。あと3段階で、敵がこのドージョーにやってくる。酸性雨に濡れた鴉が、トリイの上でゲーゲーと鳴いた。
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(……ニンジャスレイヤーは、やはり現れなんだか……)ドラゴン・ゲンドーソーは、瞑想の中でひとりごちた。ナリコが鳴る。第八警戒態勢。(……だが、それでよいのかもしれぬ……)ナリコが鳴る。第九警戒態勢。ついにゲンドーソーは、カッと目を見開いた。「あらゆる侵入者を、生きては帰すな」
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「イヤーッ!」第十警戒態を告げるはずだった繊細で風流なナリコの音は、しかし、南側から障子戸を突き破って突入してきた無作法な武装ハーレーの爆音と、巨漢のアースクエイクが放つ怒号によってかき消された。
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
ハーレーは後輪をコンパスのように滑らせ、タタミに焦げ痕を刻みつけながらその場でぐるりと一回転し、着地の衝撃を吸収する。ハーレーから吐き出される無骨なハイオク臭と、重金属酸性雨が蒸発するときの、あの独特の湿った悪臭が、ドージョー内に満ちるインセンスの香りを完全にかき消してしまった。
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ハーレーはタタミの上で停止し、空吹かしのエンジン音が敵を威圧する。アースクエイクの不吉で威圧的な眼光が、座布団の上に座るドラゴン・ゲンドーソーに注がれた。そして一礼。
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「ドーモ、初めまして、ドラゴン・ゲンドーソー=サン。ソウカイ・シックスゲイツのニンジャです。ドラゴン・ドージョーに放火に来ました」丁寧なアイサツは、敵にさらなる恐怖心を植え付ける。 「ドーモ、ソウカイ・シックスゲイツ=サン。ドラゴン・ゲンドーソーです」
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「イヤーッ!」ドラゴン・ゲンソーソーのアイサツが完全に終わらないうちに、ヒュージシュリケンはサイドカーに搭載した煙幕弾とプラスチック爆竹の発射スイッチを、勝ち誇ったような掛け声とともに押した。たちまち、ドージョー内は猛烈な煙と騒音に包まれる。ナムアミダブツ! 何たる卑劣か!
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「慌てるな!」とゲンドーソーが叫ぶのは、一瞬遅かった。彼の声は爆竹の騒音によって切り裂かれ、仲間の耳には届かない。思いがけぬ事態に取り乱したニュービー・ニンジャたちは、古事記にも記された伝統的なニンジャの攻撃陣、ヤジリの型で武装ハーレーの方向へと闇雲に突き進む。
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ヤジリの型は、ボーリングのピンのように並び一点突破で突き進む、突破型の攻撃陣である。確かに、ヒュージシュリケンとアースクエイクという強力なソウカイ・ニンジャ2人を相手にするには、この攻撃陣が最適の選択肢だ。
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だが、それはヒュージシュリケンの思う壺だった。ズバリ・アドレナリンの効き目も良く、痛みはほとんど消えている。ヒュージはハーレーから素早く飛び降り、2回後方にバク転した後、背中に背負った前長2メートルの巨大セラミック・スリケンをニュービー・ニンジャたちに投擲した。 「イヤーッ!」
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「グワーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」ニュービーたちの首を、巨大スリケンが次々と切断する。10人のうち9人の首が飛び、タタミに転がった。首を斬られたニンジャ達の死体は前傾姿勢のまま直立不動となり、首からスプリンクラーのように血飛沫を撒き散らす。
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「良い援護だ、ヒュージ」とアースクエイク。だが、ヒュージシュリケンは自らの失態に呆れ、愕然としていた。……以前の俺であれば、確実にストライクを決めたはずだ。まさか、敵を1人討ちもらすとは……これが、片目を失うということか。俺は、俺の存在意義は、どこへ行ってしまったのだ……。
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
その時だ。天井から、細くしなやかな影が飛び降りてきた。 「キエーッ!」天井に張り付いていたユカノが、包丁を胸の前に両手で抱えて、一直線に降下攻撃をくり出したのだ。片目を失ったヒュージシュリケンにとって完全な死角である、左側面めがけて。
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「グワーッ!」ヒュージの肩に包丁が突き刺さり、大スリケン投擲に必要な筋肉が完全に切断された。噴水のように血が噴き出す。 しかし、それは知能派のアースクエイクにとって、思う壺だった。すぐ隣にいたアースの野太い腕が、ユカノの足をつかんで宙吊りにする。ユカノは悲鳴をあげた。
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アースはユカノの奇襲に気付き、あえてヒュージを囮にしたのだ。 (……ヒュージよ、お前はもうオシマイだ。最後に、俺の役に立ってくれたな)アースは忍者メンポの中で、満面の笑みを浮かべていた。ヒュージシュリケンは激痛と絶望の中で、タタミの中にうずくまり、血の染みを広げてゆく。
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「ドラゴン・ゲンドーソー=サン、観念せよ。抵抗すれば、この女がどうなっても知らんぞ」勝ち誇ったアースクエイクの大音声が、ジンジャ・カテドラルの中に朗々と響き渡る。ドラゴン・ゲンドーソーも、愛する孫娘を人質に取られ、完全に戦意を喪失しかけた。その時だ。
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「ワッショイ!」禍々しくも躍動的な掛け声が響き渡ったかと思うと、ジンジャ・カテドラルの天井が崩れ下ちた。そして、轟々たる重金属酸性雨とともに、赤黒いニンジャ装束に身を包んだニンジャスレイヤーが、この死闘に乱入してきたのである!
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
第1巻「ネオサイタマ炎上」より。「サプライズド・ドージョー 6」に続く。 (6でこのセクションは完結します)

コメント

オスツ🍣 @alohakun 2010年11月29日
「サプライズド・ドージョー」 #1 http://togetter.com/li/73454 「サプライズド・ドージョー」 #2 http://togetter.com/li/73457 「サプライズド・ドージョー」 #3 http://togetter.com/li/73470 「サプライズド・ドージョー」 #4 http://togetter.com/li/73492 「サプライズド・ドージョー」 #6 http://togetter.com/li/73512
みと @cawa10032 2012年2月15日
RT @NJSLYR: 彼の前で正座をし、固唾を呑みながらじっとドラゴン・ゲンドーソーの命令を待つのは、白いニンジャ装束に身を包んだ10人のニュービー・ニンジャたち。そして、覗き窓から外の様子を伺うドラゴン・ゲンドーソーの孫娘、若くたおやかなユカノであった。ユカノのバストは豊満であった。
みと @cawa10032 2012年2月15日
RT @NJSLYR: 彼の前で正座をし、固唾を呑みながらじっとドラゴン・ゲンドーソーの命令を待つのは、白いニンジャ装束に身を包んだ10人のニュービー・ニンジャたち。そして、覗き窓から外の様子を伺うドラゴン・ゲンドーソーの孫娘、若くたおやかなユカノであった。ユカノのバストは豊満であった。
みと @cawa10032 2012年2月15日
RT @NJSLYR: 彼の前で正座をし、固唾を呑みながらじっとドラゴン・ゲンドーソーの命令を待つのは、白いニンジャ装束に身を包んだ10人のニュービー・ニンジャたち。そして、覗き窓から外の様子を伺うドラゴン・ゲンドーソーの孫娘、若くたおやかなユカノであった。ユカノのバストは豊満であった。
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