同居する森と月と小堀の誕生日

森「ホントの小堀の誕生日は10月2日だからな!みんな間違えるなよ!」 伊「小堀さんの起き上がり小法師…あ、だめだこれはキタコレじゃない!」
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森「スーツ姿の三人組。皆スーツがダークブルー系で見事にカブったよね。デートじゃなくてよかった」
笠「お前の発想マジでわかんねえよ」

同居する森と月bot @doukyomi5

「……落ち着かねえな…」 ぼそっとつぶやいた笠松は、言葉通りそわそわと落ち着きがない。改善したって話を聞かないからまだ女性が苦手なんだと思うが、こいつこんな調子で大丈夫なんだろうか。 「でもこのお店美味しいよ。さすが森山だな」 「だろうだろう!」

2014-10-05 19:45:29
同居する森と月bot @doukyomi5

小堀がとりなして、オレは自慢気に鼻を高くする。ちょっといい雰囲気のフレンチレストランは、本命の彼女と記念日に来るのにぴったりだ。周囲を見回しても客はカップルばかりで、男三人で料理をつついてるのはオレたちだけだろう。 今日の幹事はオレだ。店選びは張り切りすぎた気もする。

2014-10-05 19:55:28
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誕生日会に誕生日当日を外したのは、実は我らが後輩、中村からのアドバイスだった。 「最近小堀さん、様子がおかしいんです。彼女できたのかも」 オレ(も笠松も)小堀とは親友のつもりだったから大ショックだ。ひどいぞ小堀!彼女ができたらまっさきに俺たちに紹介してくれると思ったのに!

2014-10-05 20:05:29
同居する森と月bot @doukyomi5

だが、それはそれこれはこれ。彼女がいるとすれば、当日は彼女と過ごすのを優先して欲しい。オレらが空気を読まずに、「集まろーぜ!」ってなったら、人のいい小堀のことだ、彼女よりオレたちを優先するだろう。 「じゃあ、乾杯」 「二十一歳、おめでとう!」 「ありがと、ふたりとも」

2014-10-05 20:15:29
同居する森と月bot @doukyomi5

ワインだって。ワインは飲んだことないな。っていうとDT丸出しっぽいから黙っておこう。 「そういや小堀、酒飲んで大丈夫なのか?」 「ああ、迎えに来てもらうつもりだから大丈夫」 オレと笠松はこっそり顔を見合わせる。『誰に?』

2014-10-05 20:25:30
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プレゼント、オレは帽子と手袋だ。手の大きい小堀は、なかなか自分のサイズに合う手袋を探し出せないと言っていた。小堀にはいつも格好良くいてもらいたいオレの、お勧めの逸品である。 笠松は筋トレグッズらしい。うん、小堀ウェイトないの気にしてたもんね。オレ笠松のそゆとこ嫌いじゃないよ。

2014-10-05 20:35:29
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「嬉しいよ。二人共ありがとうな!」 ブランドショップの袋と、スポーツ用品店の袋を抱えて、小堀が嬉しそうに笑う。 しばらく三人で料理をつついていたが、ふと、いいタイミングで沈黙が落ちた。 「話があるんだ」

2014-10-05 20:45:30
同居する森と月bot @doukyomi5

キタ。キタコレ。いかん伊月の口癖がうつった。 オレと笠松は固唾を呑んで小堀の顔を見つめる。 「オレ、」 彼女か?いよいよ彼女の話なのか?可愛いのか?!

2014-10-05 20:55:28
同居する森と月bot @doukyomi5

「インカレが終わったら、短期で留学しようかと思ってな」 「へっ?!」 「へ、って、そんなに意外か?」 「いや、だって、じゃあかのj」 「バカ山黙ってろ!……いや、意外じゃない」 笠松がテーブルの下で思いっきりオレの足を蹴飛ばした。ひでぇ。

2014-10-05 21:01:04
同居する森と月bot @doukyomi5

確かに、小堀はオレ達の中ではダントツで頭の出来も成績も良かった。留学ということは、海の向こうに行ってしまうのか。 寂しい……というより、小堀が大人になったように遠い。オレなんて目の前の大学生活とバスケで手一杯で、その先の生き方なんてなにも決めてないし、希望や展望もない。

2014-10-05 21:10:34
同居する森と月bot @doukyomi5

誕生日。そうか、小堀は実際にオレより一つ年上なんだ。 「半年だけどな。前々から、行ってみたいと思ってたし」 「向こうの女の子はボンキュッボンでまた違う魅力があるもんな」 「森山少し黙ってろ」 オレは場を和まそうとしただけなのに。 段々伊月に対する日向に似てきたよね。

2014-10-05 21:20:30
同居する森と月bot @doukyomi5

おそらく、11月のインカレを最後に、オレ達の大学バスケは終わる。 今が楽しいから、まず今を一生懸命にやりたいから、オレはあえて考えないようにしていた。 小堀ははっきりと見ている、笠松はどうなのかわからない。 その先を。

2014-10-05 21:30:33

森「みんなお察しのとおり、中村と小堀は同大だよ。今でもよきチームメイトらしい」

同居する森と月bot @doukyomi5

寮の門限がある笠松が一足先に店を出た。 デザートまで食べてしまい、オレ達二人も店を出る。 「そういえば二人共今日は随分落ち着かなかったな」 「中村の奴がちょっとね」 留学の準備を彼女ができたソワソワと間違えてたのなら、あいつもかなりのうっかりだな。メガネのくせに。

2014-10-05 21:55:29
同居する森と月bot @doukyomi5

まあ誰しも尊敬する先輩の様子がいつもと違えば、動揺もするしうっかりもするのだろう。そう思えば可愛げもある。 「中村といえば、森山のところの後輩、…伊月だったか、わざわざお前の話を聴くために訪ねてきたぞ」 「聴いてる。うちの後輩が煩わせたようだったらごめん」

2014-10-05 22:05:28
同居する森と月bot @doukyomi5

「まさか。礼儀正しかったよ。森山愛されてるなあ」 「いやー…はは、…伊月、好きって言ったんでしょ」 聴いてますよ。聴いてますとも。「オレ森山さんのこと好きです」って言ったんでしょう。あそこまで曇りなき眼で口に出されると、かえって、あ、望みないんだな、ってわからされるよ…。

2014-10-05 22:15:30
同居する森と月bot @doukyomi5

勝手な事情で凹んだオレに、小堀が遠くを見るような目で笑った。 「ああ、あれな。オレには牽制にも聞こえたけど」

2014-10-05 22:25:29
同居する森と月bot @doukyomi5

「迎えが来た。それじゃ森山、またな」 小堀の前に停まったのはピンクの軽。運転席は夜のことで暗くて見えなかったが、スカートを履いてた気がする。 あれ!?彼女ってマジ? 驚きのあまり言葉を失ったオレを置き去りに、車は走り去っていった。 …牽制?

2014-10-05 22:35:29
同居する森と月bot @doukyomi5

台風のせいか天気は荒れ模様、10月の戸外は思ったより冷える。 (伊月に駅まで迎えに来てもらお) 傘持ってこなかったし。そう言い訳をして。 考えることも決めることも山ほどあるってわかってる。 けどとりあえず、今は伊月に迎えに来てもらって、しょうがないなって顔で笑って欲しかった。

2014-10-05 22:45:46