《絶対言わない》

亮くんのやつです。
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hikari♡∞妄想♡ @love_kamome

《絶対言わない》side-A 1 「お前さぁ、これ何回目?」 「...さぁ...わからへん...」 小さなリハーサル室でチーフマネージャーとふたりきり。 目の前には明日発売の写真週刊誌。 「彼女...なわけないっか」 載ってるのは、俺。 路上で、女とキスしてる。

2014-09-29 23:00:23
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《絶対言わない》side-A 2 そもそもこれが西麻布のクラブの前で、先週撮られたものだってことすら、今記事を読んで知った。 どこで誰とどうなったかなんて、いちいち覚えてへんし。

2014-09-29 23:00:30
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《絶対言わない》side-A 3 「俺さ、別に遊ぶなって言ってないじゃん。ただ気をつけろっつってんの。相手選べって言ってんの。他のやつらはみんなうまくやってんじゃん」 自覚がどうとか、危機管理がどうとか、前にも聞いたようなお決まりの説教が続く。

2014-09-29 23:00:37
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《絶対言わない》side-A 4 ケータイが震えて、マネージャーはバッタみたいに勢いよく立ち上がる。 「はい、ええ、錦戸が。はい、大変申し訳ございません。ええ、それはもう...」 電話の向こうにお辞儀しながら部屋を出て行った。

2014-09-29 23:00:43
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《絶対言わない》side-A 5 あの人が俺たちの担当になってからもう...確か5年。 5年の間に、俺はあの人に何回頭を下げさせたんやろ。 今までの記憶を辿ってると、頭をガシガシやりながらマネージャーが戻ってきて俺の前に座った。 「すんません」 「頼むよ、ほんと」

2014-09-29 23:00:52
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《絶対言わない》side-A 6 マネージャーはふぅーっとため息をつく。 「...お前はさ...スケジュールキツくても文句言わないし、芝居も歌も上手いし、セリフ覚えも振り覚えもいいしさ。仕事に関しちゃ俺文句ないんだよ。なーんでコレだけできないかなぁ...」

2014-09-29 23:00:59
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《絶対言わない》side-A 7 後半ボヤくように言って、週刊誌をテーブルに軽く叩きつけた。 「...まあ...個人的にはさ、お前のそーゆー...人間っぽいとこ?嫌いじゃないけどさ」 疲れた顔で少し笑ってそう言った。

2014-09-29 23:01:05
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《絶対言わない》side-A 8 この人、いつもこうや。 肝心なところで悪者になりきれない。 だからええ年こいていつまでもチーフマネ止まりやねん。 あ...ちゃうわ。 俺のせいか。 担当タレントの素行不良は、当然査定対象...のはず。

2014-09-29 23:01:20
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《絶対言わない》side-A 9 「ま、お前が優等生になったらつまんないけどな」 「...ありがとうございます」 「調子のんなよ。これ少数意見」 申し訳ないのはホンマに、心の底からそう思ってる。 でも、どうしようもないねん。 だって俺には...。 忘れられないひとがいる。

2014-09-29 23:01:33
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《絶対言わない》side-A 10 俺は15歳で、あのひとは17歳だった。 俺は当時、すでにこの仕事を始めてて、自分で言うのもなんだけど、とにかく盛大にモテていた。 そしてお察しのとおり、盛大に調子に乗ってた。

2014-09-30 23:03:17
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《絶対言わない》side-A 11 高校に入学してすぐの5月の土曜日の午後のこと。 俺はスポーツテストをしてた。 ひとりで。 ってのも、仕事で授業に出られへんかったから。

2014-09-30 23:03:24
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《絶対言わない》side-A 12 テストが終わると、メジャーやらストップウォッチやら、使った道具を用具室に戻しとけって体育教師に言われて。 はいって言ったはいいけど、用具室がどこなんかわからんくてウロウロしてたら裏庭みたいな場所に出た。

2014-09-30 23:03:32
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《絶対言わない》side-A 13 小さい花壇みたいなやつの前に、女の子が座ってんのが見える。 「なあ、体育用具室ってどこ?」 女の子が首だけで振り返る。 かわいい子やな、と思った。 キレイよりも、かわいくて、幼い感じ。

2014-09-30 23:03:41
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《絶対言わない》side-A 14 「あそこ」 女の子は掘っ建て小屋みたいな建物を指差して、また前を向いた。 愛想ないやつやな。 錦戸亮が話しかけてやってんのに。 いかんせん調子乗ってるから、こんときリアルにそう思った。

2014-09-30 23:03:47
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《絶対言わない》side-A 15 用事を済ませて戻ってくると、さっきの女の子がまだ花壇のとこにいて、一応お礼を言う。 「さっき、ありがとう」 女の子は俺のジャージの色をちらっと見て、にこっと笑って、 「1年生?」 って言った。 はぁ? 何で俺のこと知らんねん。

2014-09-30 23:03:57
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《絶対言わない》side-A 16 なんせ調子乗ってるから、先生も生徒も、俺のフルネーム知ってて当然ってナチュラルにそう思ってた。 だから、そう聞かれたことにびっくりして。 よく見ると女の子は膝の上に画板を乗せて、花壇の花を写生してるみたいだった。

2014-09-30 23:04:06
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《絶対言わない》side-A 17 よく見ると女の子は膝の上に画板を乗せて、花壇の花を写生してるみたいだった。 「ねえ、絵上手い?」 手元を覗き込むと、色とりどりのぐるぐるがいっぱい書いてあって。

2014-09-30 23:04:17
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《絶対言わない》side-A 18 「え、何これ?」 「それ」 花壇の花を指差す。 は? 下手くそ過ぎやろこれ...。 抽象画っぽいとかヘタウマで味があるとか、もうそんなレベルやなくって、三歳児が力まかせに描いたみたいな...。

2014-09-30 23:04:25
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《絶対言わない》side-A 19 「代わりに描いてくれない?」 「はあ?俺?」 「そう、俺」 こいつ、錦戸亮に何言うてんねん。 なのに俺は、画用紙と絵筆を受け取ってた。

2014-09-30 23:04:32
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《絶対言わない》side-A 20 「ちょお、あんま見んといてって」 「なんで」 「やりにくいわ」 地面に座って、新しい画用紙に絵筆を走らせる。 てか、俺やって別に絵が上手いわけでも何でもないねんけど...。

2014-10-01 22:35:09
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《絶対言わない》side-A 21 俺、何してんねやろ...。 女の子は俺の隣にしゃがんで、俺の手元をじっと見てる。 サラサラした髪が春風に揺れて俺の肩に触れて、ふわっといい匂いがした。 「すごーい!上手!!」 ぱちぱちって拍手された。

2014-10-01 22:35:16
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《絶対言わない》side-A 22 や、別にそんなでもないんやけど、まあ悪い気はせえへん。 15分くらいかかって、花壇の花の絵を描き終えた。 女の子は満足そうに絵を眺める。 「ありがとう。助かったー」

2014-10-01 22:35:23
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《絶対言わない》side-A 23 「あんた、この花がほんまにぐるぐるに見えてんの?」 だとしたらどうかしてる。 女の子は質問に答えずに絵の具を片付け始めた。 「あ、名前、なんて言うの?」 こいつホンマに知らんのか。

2014-10-01 22:35:32
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《絶対言わない》side-A 24 「...錦戸亮」 「ニシ...なに?」 絵筆を取り上げて、地面に落ちてた青や緑のぐるぐるでいっぱいの絵の上から、黄色い絵の具ででっかく名前を書いた。 「ニシキド、リョウ...」

2014-10-01 22:35:39
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《絶対言わない》side-A 25 女の子は意外にも3年生やった。 やっば...先輩にタメ口きいてもーた。 と思ったけど、もう今更引っ込みつかんし、まあ...ええか。 地面に散らばった絵の具を拾って、制服のスカートのお尻のとこをパンパンって払って、立ち上がる。

2014-10-01 22:35:47
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