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このテーマについてはいい本があります。『著作権の考え方』(岡本薫、岩波新書)。何度か取り上げてきました。
2014-11-01 18:48:55>第五章 新しい「法律ルール」の構築 これが読ませる。文化庁著作権課の課長だった著者のもとには、いろんな界から陳情団がやってきて「不公正を是正せよ」と訴える。それをウンザリ気味に論評しておられます。
2014-11-01 18:51:29>様々な法律について、「この法律は改正すべきだ」「いや、今のままでいい」といった議論が行われているが、ほとんどの法律についてはこのように、「良い」という意見と「良くない」という意見の対立が見られる。
2014-11-01 18:53:58>ところが著作権法の場合は、関係者全員が「良くない」と言うのが「普通の状態」――と言っても過言ではないのである。
2014-11-01 18:55:08>利用者側は、著作権法を廃止して「何でもコピー自由」とするまで完全には満足しない。逆に権利者側は、権利が強まって印税が二倍になれば四倍、四倍になれば八倍ほしいと思いがちだ。つまり、「欲求と欲求のぶつかり合い」が常に存在しているのである。
2014-11-01 18:58:08>著作権に関する「法律ルール」は、「常に全員が不満」という宿命的対立構造を背負っているが、「自分にとって不満」という状況(単に、自分にとって有利な法律ルールが、自分自身の力不足のために多数の支持を得られておらず、憲法のもとで採用されていないという状況)のことを、
2014-11-01 19:01:11>「不公正だ」などと言う人が多い。 いかにもマキャベリアン岡本らしい主張。ただここにはトリックがあります。
2014-11-01 19:02:18>自分自身の力不足のために多数の支持を得られておらず 努力不足だからいかん!ということのようですが、努力したって無駄にされるシステムが世の中ではあちこちに働いている。
2014-11-01 19:03:52原発誘致反対を訴えても、形ばかりの説明会とかが用意されて、後はもうどんどん話が進んでいく。森を切り開いて道路作るの反対!と訴えてもやはり同じ手で押し切られる。裁判でも覆せないようなワザの蓄積があるし。
2014-11-01 19:05:44賛成の派と、反対の派。利権で衝突するわけです。「森が好きだから切るな」だって憲法でいう「幸福追求権」で保障された「利権」だし。
2014-11-01 19:08:30>従来の日本ではそうした利害調整を役人に任せてしまう(関係者間の調整を終えた法案を内閣が国会に提出し、国会での修正はあまり行われない)ことが多かった。
2014-11-01 19:13:06>ところが今日では、少なくとも著作権の世界では、関係者の爆発的な拡大によって、役人による調整は不可能になりつつある。
2014-11-01 19:14:15>日本では、著作権法の改正案はほとんどすべて文化庁が作成しているが、著作権に関わる人びとや業界が広がり、宿命的な対立構造が広がる中で、文化庁は「関係者間協議」等による合意形成を促進している。
2014-11-01 19:17:27>関係省庁も加わってはいるが、「全体の奉仕者」として著作権制度の全体を所管する文化庁が、独善的に方向性を決定してしまうようなことはない。したがって「自らの利益」を実現したい人びとは、自ら合意形成努力を行い、多数の支持を得ていくしかないのである。
2014-11-01 19:20:14さあここに岡本トリックが隠されています。自らの利益を実現したいのなら、同じ利害を有する者どうしで集まって「関係者」として団体となり、そして関係者間協議のテーブルにつけ、と彼は正論を述べてはいますが、
2014-11-01 19:22:25そもそもそのテーブルに招かれなかったらどうしようもないわけです。ね、ここに役人の意向がうまく反映される。
2014-11-01 19:23:16テーブルに招かれるには、同じ利害を有する者どうしでまずは固まらないといけない。けれども「同じ利害」って零細企業やフリーになるほど足並みがそろわないこともあるのです。
2014-11-01 19:24:57すると弱小者ほど「関係者」として一大勢力にまとまりにくくなるわけで、するとテーブルにも招いてもらえないわけです。
2014-11-01 19:26:02この本には「産業界」という括り方がよく出てきます。音楽業界は著作権の保護強化を望むし、映像音楽電化品業界(ソニーとかパナソニックとか)は保護の緩化を望む、と。
2014-11-01 19:31:01ただ「産業界」といっても、経営側と労働者側とでは違うはずです。岡本先生は前者のことを指しているようです。ここにトリックが生まれてしまう。そこを指摘しても「それは厚生労働省の管轄だ」と返される。
2014-11-01 19:32:27声優さんのグループは発言力があります。日本俳優連合という協同組合、労働組合が後ろにあるから。ではなぜこの組織は力があるかというと、法律で「実演家」として役者は守られているからです。
2014-11-01 19:34:12さあもう話がどう進むか読めた方も多いのではないでしょうか。アニメ労働者は著作権法でいう「著作者」でも「実演家」でもなく、労働基準法でいう「労働者」でもないため、「界」としてまとまりにくい宿命なのです。
2014-11-01 19:35:57「関係者」(界、といってもいいでしょう)として代表者を出せるのならテーブルに招くよと役所にいわれても、一方で法律で事前に代表者を選び出せないよう去勢されているわけです。
2014-11-01 19:37:31