ビクトリア湖の汚染とナイルパーチ漁獲量の激減
- mami_tanaka
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①アフリカ東部に位置し、世界第3位の広さを誇るビクトリア湖。そこに生息する巨大淡水魚「ナイルパーチ」が激減していると聞き、取材に向かった(今回に限り、一部写真(ミギンゴ島)は助手が撮影したものを使います。残りは通常通り三浦が撮影) pic.twitter.com/ZXOMILv4fx
2014-11-01 21:00:39②ビクトリア湖のケニアとウガンダの国境付近に「宝の島」と呼ばれるミギンゴ島がある。面積約1800平方㍍、サッカー場の約4分の1ほどの広さの岩の島に無数の漁民が張り付いて暮らす。 pic.twitter.com/rFlqkckbsB
2014-11-01 21:05:45③「宝の島」と呼ばれる最大の理由は、そこが高級魚ナイルパーチの最良の漁場とされているからだ。「島に行けば、1日で1カ月分のカネが稼げる」。そんなうわさが沿岸部に広まり、鳥と蛇しかいなかった島を目指して、数千人が木舟で荒波を越えた pic.twitter.com/w9JHtBqoyp
2014-11-01 21:08:20④島はケニア・ウガンダ両政府にとって「紛争の島」だ。かつては両政府が領有権を主張。2009年に島が510㍍ほどケニア側にあることがわかると、ウガンダ政府は「島はケニア領にあるが、漁民が漁をしている水域はウガンダ領にあたる」として、島民がウガンダ領内で漁をするのは違法だと訴えている
2014-11-01 21:10:03⑤ケニア側から舟で島に渡ろうとすると、警察から「国際問題になるため、外国人記者の渡島は認められない」と拒否されたため、ケニア人助手が舟に乗った。島はまるで迷路のよう。家と家の間は約1㍍。大人が辛うじて通り抜けられるほどの幅しかない pic.twitter.com/70fXKJSwT7
2014-11-01 21:14:02⑥市場に行くと、多くの漁民が「魚の量が激減している」と話した。漁師組合長は「10年前は1日20~50㌔の魚が捕れた。最近は10㌔取れれば良い方」。別の漁師は「湖の汚染が原因なんじゃないかと思う。人が多すぎるんだ」と話した pic.twitter.com/TZlHU14jcf
2014-11-01 21:16:35⑦ミギンゴ島では岩場の端にトイレを造り、汚物はそのまま湖へ。岸辺は汚水とゴミで茶色や緑色に変色していた。島民はその水を調理や飲み水として使っている。島の女性は「午後は使えないが、夜になれば、風と波が汚物を遠くに流してくれるから大丈夫」 pic.twitter.com/317t6o2ZJA
2014-11-01 21:18:57⑦汚染は湖全体で深刻化している。湖の西岸、ウガンダの漁師町ガバに行き、小舟で5㌔ほど沖合に出てみると、湖面がアオコでびっしりと覆われていた。1970年代の日本の都会のドブ川のよう pic.twitter.com/cPQLTzIcC5
2014-11-01 21:21:35⑧船を回すと水流が乱れて、水面にアオコのマーブル模様ができる。投網していた漁師に釣果を尋ねると、全員が首を振った。漁師の一人は「こんなに湖が汚れている。デカいナイルパーチは夢のまた夢だ」 pic.twitter.com/g0IuSRiUAz
2014-11-01 21:23:21⑨湖の東岸、ケニアの漁業都市キスムでは、状況がさらに深刻。魚市場を訪ねると、漁師たちは「あがってくるのはペンサイズ(10㌢以下)ばかり」とうなだれた。水産事務所によると、同地区のナイルパーチ漁獲量はここ8年で約5千㌧から約2千㌧へと6割強減った。漁民の6割に失業の可能性が出ている
2014-11-01 21:26:39⑩ビクトリア湖の汚染とナイルパーチの漁獲量の変化について、ウガンダとケニアの水産当局は「輸出への影響」を理由に回答を拒否。汚染のデータについても「一切答えられない」と開示を拒んだ。 pic.twitter.com/3iasg2GUgO
2014-11-01 21:28:25⑪同湖の生態系に詳しいマセノ大学(ケニア)のディクソン・オゥイティ水産学部長は「湖の汚染が原因であることは間違いない。湖の生態系が大きく崩れたことが原因だ」と指摘する pic.twitter.com/86VrpkmSpb
2014-11-01 21:29:25⑫湖にはかつて約400種の固有種いた。50年代、食用として肉食の外来魚のナイルパーチを放流したところ、固有種の半数が絶滅。固有種の多くは藻やプランクトンを食べていた。それらの絶滅で、藻やプランクトンが異常増殖し、「湖全体が酸欠状態になり、魚が生存できない状況になっている」
2014-11-01 21:31:40⑬ナイルパーチは海外へと輸出され、高値で取引されることから、湖周辺には漁民や無職者が殺到した。港では10年前、約40隻だった漁船数は現在130隻。今も年々増えている。管理官は「多くの人の汚水や生活排水が湖に直接流れ込むようになった」 pic.twitter.com/WBYfagl2E5
2014-11-01 21:35:22⑭ナイルパーチの激減は、地域経済を支える水産業にも大きな打撃を与えている。キスムでは、4年前まで稼働していた8水産工場のうち、4工場が廃業。ウガンダの報道によると、同国の水産都市ジンジャでも4工場のうち2工場が操業を停止している。 pic.twitter.com/PvIKdVk0l5
2014-11-01 21:36:19⑮キスムの工場の生産責任者が匿名を条件に取材に応じた。この10年間で主力のナイルパーチの切り身などの加工品の出荷量が8割減少。売り上げも7割減った。「危機的な状況だが、我々にはナイルパーチしかない。このまま捕れなくなると、地域は壊滅してしまう」
2014-11-01 21:38:27⑯日本は昨年、ビクトリア湖沿岸3国から計約1800㌧のナイルパーチを輸入している。ビクトリア湖の生態系を研究している長崎大学の教授は「日本はこれまでウナギやマグロと同じように、ナイルパーチをアフリカから輸入してきた。ビクトリア湖の現状をこのまま放置してはならない」と話す(おわり)
2014-11-01 21:39:28