第61回獣医師国家試験直前講座「エキノコックス症編」

ずいぶん昔のことですから、リンク切れなどもあるでしょう。 #vetkokushi 等から拾える範囲でぼちぼちまとめます。 新たな知見による訂正・補足等歓迎です。 リストの追加やコメント欄でご指摘ください。
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Stray @K9FCR

さて今日はどうしましょうかね。語呂合わせ(『お前らかい!』とブルースリー)ではオウム病の次はマールブルグ熱ですが、これは過去問にもそんなに出てないでしょうし、サバンナモンキー(オナガザル)でしょうから、動物園獣医師には関連有りでしょうけども。サルは赤痢とか結核の方が有名かな?

2010-02-15 23:21:38
Stray @K9FCR

ということで、『お前らかい!』とブルースリー:オウム病(済)→マールブルグ熱(やらない)→エキノコックスにしましょうかね。

2010-02-15 23:24:40
Stray @K9FCR

エキノコックス症【包虫症と包条虫症】エキノコックス症は幼虫と成虫の両者の感染症で用いられる。寄生虫である包条虫属の生活環から、中間宿主(エゾヤチネズミ等)の幼虫感染症を包虫症、終宿主(キタキツネ、イヌ等)の成虫感染症を包条虫症と呼ぶことにする。 #vetkokushi

2010-02-15 23:34:08
Stray @K9FCR

エキノコックス【多包虫症:疫学】多包虫症の患者は主に北半球で発生。日本では東北、北陸もあるが圧倒的に北海道が多い。1964年以前では礼文島のみで、65年に道東で患者発生。以後は道内各地から報告有り、現在も続いている。多包条虫の分布もヒト多包虫症と同じ。 #vetkokushi

2010-02-15 23:41:03
Stray @K9FCR

エキノコックス【多包虫症:病原体】多包条虫(Echinococcus multilocularis)の幼虫=多包虫。自然界の中間宿主はネズミ(北海道ではエゾヤチネズミ、ミカドネズミ)で、終宿主はキツネ、イヌである。ネコも終宿主になりうるが好適宿主ではない。 #vetkokushi

2010-02-15 23:45:46
Stray @K9FCR

エキノコックス【生活環】成熟虫卵中には六鉤幼虫が入っており(幼虫包蔵卵)ノネズミに経口摂取されると腸管内で孵化し、六鉤幼虫が腸壁内へ侵入し、門脈経由で肝に至り包虫と呼ばれる状態へ発育する。この多包虫を有するノネズミが終宿主(キツネ等)に食べられると(続く) #vetkokushi

2010-02-15 23:53:05
Stray @K9FCR

エキノコックス【生活環2】包虫に含まれる原頭節がキツネ&イヌの小腸で多包条虫に生育する。その後、虫卵を含んだ片節が終宿主の糞便中に排出されるが、この時点で幼虫が虫卵内に形成されており感染性を有している。 #vetkokushi

2010-02-15 23:57:56
Stray @K9FCR

エキノコックス【生活環2】この糞便中の片節や、これから出た虫卵をノネズミやヒト(中間宿主)が経口摂取すると新たな感染環が成立する。自然界ではキツネの便(虫卵)→経口→ノネズミであるが、ヒト住環境においてはイヌの便(虫卵)→経口→ヒトが重視される。 #vetkokushi

2010-02-16 00:06:10
Stray @K9FCR

エキノコックス【ヒト症状1:肝】感染当初は無症状。感染臓器は圧倒的に肝臓が多く、多包虫は組織へ侵入するような発育形態をとる。肝に感染した場合、食欲不振後、右上腹部不快感や同部痛が、進行すると黄疸や腹水が出現する。初期症状は感染後数年を経て出現する。 #vetkokushi

2010-02-16 00:12:10
Stray @K9FCR

エキノコックス【ヒト症状2:肝以外】他に肺、脳、腎、骨などへの感染では各部位に起因する症状を呈する。肝以外の病巣は、肝病巣の胚層細胞の転移で形成されることが普通であるが、原発巣の場合もあり、悪性腫瘍との鑑別が重要である。なお臨床症状のみでは診断は不可能。 #vetkokushi

2010-02-16 00:17:25
Stray @K9FCR

エキノコックス【動物症状】ノネズミ(中間宿主)の場合、原則的にはヒトの多包虫症と同じ(肝多包虫症)。ブタ、ウマでは好適な中間宿主ではないので発育は不十分。一方、終宿主(キツネ、イヌ)の場合、少数寄生では無症状、多数寄生の場合は下痢を起こす。 #vetkokushi

2010-02-16 00:21:17
Stray @K9FCR

エキノコックス【ヒト診断】肝多包虫症では腹部超音波、CT、MRIなどの画像検査を行うが特徴的な所見はない。腹腔鏡検査で灰黄色の腫瘤状病変を認め、肝生検による病理組織学検索が有用。血清の抗体検査(ELISAやWestern blot)も併用価値有り。 #vetkokushi

2010-02-16 00:28:07
Stray @K9FCR

エキノコックス【病理組織学所見】最外側に非細胞性のクチクラ層、その内側に胚層と石灰小体、さらにその内側に繁殖胞と、その内部に存在する原頭節で構成されている。ヒトの病巣では胚層は貧弱で、石灰小体、繁殖胞および原頭節を認めない場合が多い。 #vetkokushi

2010-02-16 00:31:26
Stray @K9FCR

エキノコックス【動物診断】中間宿主(ブタ、ウマ)では食肉検査時の病理学的検査で感染が判明することが殆ど。終宿主(イヌ)の場合は糞便中の片節あるいは虫卵を検出するが他の条虫卵との区別が困難。駆虫薬投与後の便から虫体を検出するのは感染や周囲汚染の危険性を伴う。 #vetkokushi

2010-02-16 00:35:47
Stray @K9FCR

エキノコックス【ヒト治療】現在でも外科的な切除が最優先。手術不能例や待機患者にはアルベンダゾールを経口投与するが、投与期間等については一定の見解は得られていない。 #vetkokushi

2010-02-16 00:37:53
Stray @K9FCR

エキノコックス【イヌ治療】終宿主の多包条虫感染に対しては、プラジカンテルの経口投与が有効である。多包条虫卵は自然界での抵抗性が強く、長期にわたって感染力を有する。したがって駆虫後の便の処理には十分注意する。 #vetkokushi

2010-02-16 00:41:25
Stray @K9FCR

エキノコックス【ヒト予防】キツネや野良犬には素手で触らないように努め、これらに接触した後はよく手を洗うようにする。加熱しないで山菜や、沢の水を摂取しないほうがよいであろう。 #vetkokushi

2010-02-16 00:43:42
Stray @K9FCR

エキノコックス【イヌ予防】中間宿主の肝臓等の感染臓器を、終宿主であるイヌに与えないこと、つまり、野外でリードフリーにして、イヌに勝手にノネズミを食べさせないことが重要である。実用的なワクチンは存在せず、キツネ等の野生動物には有効な予防法はない。 #vetkokushi

2010-02-16 00:48:34
Stray @K9FCR

エキノコックス【単包虫症:疫学】単包虫症は南北両半球に存在するが、牧畜が盛んな地域で患者が多い。特にヒツジやウシの飼育が盛んな地域(NZや豪、アフリカ、南米等)ではきわめて重要な人獣共通感染症である。日本でもきわめてまれに散発的に報告がある。 #vetkokushi

2010-02-16 01:23:07
Stray @K9FCR

エキノコックス【単包虫症:病原体】単包条虫(Echinococcus granulosus)の幼虫である単包虫。中間宿主はヒツジ、ウシ、ヤギ、ウマ、ブタ、ラクダなど。終宿主はイヌ、キツネ、オオカミ、コヨーテ、ネコなど。感染経路は多包虫と同じ。 #vetkokushi

2010-02-16 01:28:09
Stray @K9FCR

エキノコックス【単包虫症:ヒト症状】基本的には多包虫症と同じであるが、多包虫のように組織へ侵入するような発育形態をとらないため、多包虫症にくらべて、症状的にはやや軽度である。 #vetkokushi

2010-02-16 01:31:29
Stray @K9FCR

エキノコックス【単包虫症:動物症状】中間宿主が長期生存した場合はヒトの単包虫症と同じ。終宿主の場合は多包条虫症と同じである。 #vetkokushi

2010-02-16 01:32:57
Stray @K9FCR

エキノコックス【単包虫症:ヒト診断】基本的には多包虫症と同じであるが、包虫が作る嚢胞内の液体(包虫液)によるアナフィラキシーショックの恐れがあるため生検は行わない方が無難である。画像検査では液で満たされた嚢胞としてみられることが多く、多包虫症とは異なる。 #vetkokushi

2010-02-16 01:35:13
Stray @K9FCR

エキノコックス【単包虫症:動物予防】世界各国で流行阻止計画がある。終宿主に中間宿主の内臓を与えないこと、近づけさせないこと、ヒトへの感染源となる終宿主の数を減らすこと、人間が飼育している終宿主に定期的に駆虫薬を投与すること、飲料水や食物の加熱をすること。 #vetkokushi

2010-02-16 01:40:24
Stray @K9FCR

第59回a問6 感染症予防に関する法律に基づき、診断した獣医師が届け出なければならない感染症と対象動物の組合せとして正しいのは? a エボラ出血熱:サル、b ペスト:プレーリードック、c エキノコックス症:犬、d 結核病:牛、e ウエストナイル熱:馬 #vetkokushi

2010-02-16 01:54:27