【習作】夜行食堂 第六話 まかない

もちはだ @motikobanasi

【夜行食堂 第六話 まかない】

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01 釣りは人生を満たしてくれる、なんていう言葉がある。 まあ実際腹も膨れるし、間違った話とは思わない。 でもまあ世の中には釣るまでで満足する人もいるわけで。 昨日きた常連のまごさんなんかその筆頭だ。

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02 まごさん、ってのは俺がつけたあだ名でね。 まごまごしてんじゃない！って言うのが口癖の物事スパスパ解決していくモニオなんだわ。 まあ最近惚れ込まれたニュタコが甲斐甲斐しく世話してるっつーから世の中は面白いな。

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03 さてその孫さんが昨日店に来たときにミーリムフィッシュをどかり、とテーブルにおいたんだ。 この時期海で取れるミーリムフィッシュは脂が乗って、通なら食わずに居られない一品なんだ。

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04 んで聞いたのさ。 「どうしたがいいんだい？」 するとまごさん答える。 「片っ端から全部焼いてくれ！ 食えるだけ食う！」

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05 「あんた良い仲の娘が居たじゃねえか？ 家で焼いてもらいなよ」 「うるせえ！ まごまごしねぇで焼けばいいんだ！ あの女 『煙で臭くなるから焼きたくない』 とか 『焼くならハラワタ取るね』 とか抜かしやがる！」

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06 「ま、いいや 炭火で焼くぜ」 「おう！ 酢醤油とオロシも頼むぜ！」 「あいあい お気に召すまま、ってな」

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07 んで10匹ほど焼いたが5匹ぐらいでまあ食べきれなくなって、後始末を任されちまった。 まあ俺もアツアツのトコをご相伴に預かったからな。 翌日美味しく頂こう、ってわけだ。

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08 まずは冷めた身をほぐす。 内蔵は一晩置いてるし、数もあるから贅沢に諦めよう。 焼いた魚は一晩置くとパサパサになる。 でも今回は油と相性がいいので、ちょっとヤマト風な味付けから外れよう。

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09 アルミホイルで容器を作り、オリーブオイル、ニンニク、唐辛子を入れる。 弱火で香ばしさ、旨み、辛みを引き出す。 夏の時期ならトマトもありなんだけどなあ。 まあ自分のまかないだから。 余ってるもので。

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10 風味が移ったら後は弱火でジリジリ。 塩と粗挽きのコショーで臭み消しと味付け。 pic.twitter.com/KXpnq1R2cs

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11 出来上がったら切ったレタスに油ごとかけまわして、完成！

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12 濃い味付けがレタスに絡みついてピリ辛で美味い。 …こうやって油をパサパサの身が吸うとガラリと装いを変えるからいいなあ… いう

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13 小鉢に移してみよう。 ひょっとしたらこれは先付けに使えるかもしれない。 まあ仕入れやら何やらで忙しくなるから出来ないんだけどね。 pic.twitter.com/ouzJDFNEYF

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14 キュッとビールを呷って、喉を鳴らす。 これより上手いものを食いに来る。 よーし今日はどんな客が来るかね？ この肴が無くなったら、仕込みしながら考えてみるとしよう。

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第六話 まかない 完

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本日の小噺はここまで！ 次回をお楽しみに！