FF6二次創作:鎮魂のアリアその6
- minarudhia
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正午。 晴々しい空が嘘のように、厚く暗い雲が街の至る所を覆う。 高層建築のビルが立ち並ぶそこを通る人はおらず、またしても物言わぬ人の死骸がビルの下に転がっていた。 「…この街も相変わらず陰気だな」 雨避けのフードを軽く上げつつ、ロックは周囲を見渡し溜息をつく。
2014-11-06 21:39:33セリスとマッシュも無言で頷き、土砂降りに濡れた土の上を踏み出していった。 ジドールから十キロ以上離れた所にあるこのスラム街は、貧困に窮した者達の巣窟であり、犯罪者にとっては絶好の隠れ家だ。 おそらく、オペラ座の殺人犯も、この街のどこかに潜んでいるのだろう。
2014-11-06 21:41:10「ひとまず、聞きこむとするか」 「またあいつらの話を考えながら聞かなきゃいかんのか。面倒だぞ」 ロックの提案にマッシュは後頭部を軽く掻いた。 数えられる人数しか例外のいない、“嘘つきばかり”の街の人間の聞き込みは、聞く者にとっては面倒な事この上ないのだ。
2014-11-06 21:43:06「仕方ないわよ。あの正直な人がどこにもいないし…でも分散するのは悪手だわ。纏まって話を聞くことにしましょう」 「そうだな」 「… !?」
2014-11-06 21:45:10かすかに感じる視線。 それに気付いたロックとマッシュが一斉にビルの上を見上げた。 二人が見上げたビルの屋上からは、ちらりと何か細長いものが引っこんでいくのが見える。 それは、獅子の尾のように見えた。
2014-11-06 21:47:10「……何?」 二人の挙動をおかしく思ったセリスが視線の先に目を移す。 「今のはモンスター、か?」 「…登ってみるか?危険かもしれないが」 「俺が登ってみる。二人はちょっとそこで待ってろ」
2014-11-06 21:49:48ロックが言うなり、ビルの階段を上がっていく。 残されたマッシュとセリスがそれを見上げたままでいる。 …跳ねる水音。 二人の背後、30m程離れた路地裏で、何かがギラリと光る。
2014-11-06 21:51:10「ロック?」 セリスが声を張り上げる。 しばらくしてから、ロックがビルの屋上から見下ろして叫んだ。 「何もいない!今そっちに戻る」
2014-11-06 21:53:05その時、マッシュは後ろから駆け足で何者かが走ってくる事に気づいた。 振り向いたそこへ、頭を布で隠した何者かが二人めがけて手にしたマチェットを振り上げてきた。 「セリス!」 「!?」
2014-11-06 21:54:57マッシュの声にセリスも敵の接近を知り、身を翻す。 二人をマチェットの刃がかすり、重く唸りを立てて地面を抉った。 「来やがったな!」 素早く下へと降りてきたロックがナイフを手に構える。
2014-11-06 21:56:30ハチェットを構えなおした男は、布で覆い隠した隙間から、爬虫類めいた冷たく嫌悪感を催す視線を三人に投げかけた。 「おい、こいつ…」 「ヘンリーを殺した男だわ!」 「ついでお仲間さんもいるってか」
2014-11-06 21:59:36ロックが言いながら周囲を見渡す。 目の前の男と同じような風貌、みずぼらしい服装の男達が、手に各々の得物を携えて三人との距離を縮めてくる。 そして。 一人が鳴らした指笛が響き、男達が矢継ぎ早に飛びかかって来た。
2014-11-06 22:00:52「この際、あいつをしょっぴいて自警団に突き出そう」 「よし、任せろ!」 マッシュが言いながら前へ走るとその手前に二人の男が立ちはだかる。 ナイフを持つ一人の手首を掴んで固定し、もう一人のナイフをかわしざまその首筋に肘を叩きこむ。
2014-11-06 22:03:17そうしてから、手首を抑えていた男を勢いで地面に叩きつけた。 セリスも剣を抜き別の方面から迫る男のナイフをはたき落とし、肩口に一撃を与えて斬り伏せる。 マチェットを持った男はマッシュが接近するのを見て距離をとろうとした。 そこへ回り込むロック。
2014-11-06 22:03:57「逃がさねえよ!」 その姿を認めたマチェットの男がロックとの距離を詰める。 屈強な大男のマッシュよりもロックの方が卸しやすいと思ったのだろうか。 「おっと!」
2014-11-06 22:05:29ザクッ!と唸りを立てたマチェットが地面に突き刺さる。 ロックがかわしている間にマッシュが男の背後までやってきた。 「落とし前はつけさせてもらう!」 「ちっ」 舌打ちしてから、マチェットの男が踵を返し、ロックに再び肉薄してくる。
2014-11-06 22:07:39「ロック!」 「任せろ」 マッシュの声にナイフを抜くロック。 マチェットが再びロックの頭を狙って振り下ろされるが、その脇をかわしざまナイフを一閃した。 「ぅ…!」
2014-11-06 22:09:21手指に走る激痛に男がマチェットを取り落とした。 その間に回り込んだマッシュが男を後ろから羽交い締めにし、締め上げる。 近い距離にいるロックの耳に届くほどきつくギリギリと締めあげられ、男はマッシュの腕の中でもがいていたが…
2014-11-06 22:10:30「ふっ!」 ・・・ぐぎっ、と嫌な音が聞こえた気がする。 がくんと糸の切れた人形のように男の身体は力尽きてだらりとなった。 その間に他の男を斬り倒していたセリスが駆けよる。 「大丈夫!?…まさか、殺した?」
2014-11-06 22:12:22マッシュと腕の中で身動きすらない男を比べ見てセリスは聞いた。 「いや、思い切り落としてやっただけだ。さすがに殺した張本人を殺しちゃまずいしな」 セリスの反応にマッシュは苦笑いしながら男を肩に担ぎあげた。 ナイフを腰に収めてロックが言う。
2014-11-06 22:15:42「急いでここを出るぞ。多分だが仲間はこいつらだけじゃないはず」 「…その仲間ももう来たようね」 周囲から現れた新しい複数の影にセリスは緊迫した表情を浮かべていた。 今度は十人以上も増え、じりじりと三人を取り囲みながら距離を狭めてくる。
2014-11-06 22:19:59「…おい、どうする?」 「こいつを誰か見てくれるか。俺がやってもいい」 マッシュの提案にセリスがしばし考え込む。 今のセリスには魔法はもう使えない。
2014-11-06 22:22:31それを考慮しての事だろうが、ロックが後ろ手に何かを持つのが見える。 「どうする?」 剣呑な状況に痺れを切らしかけたマッシュがロックにも振り向いた時。 空気をつんざくような鳥の声が空に響いた。
2014-11-06 22:22:52