日米共同開発のSM-3 Block IIAミサイルの第三国供与は武器輸出三原則等の問題でないことについて
米政府、ミサイル輸出解禁を要請…公電暴露(http://t.co/vABPw0h)・・・この話NHKまで報道するものだから(http://bit.ly/i4jn5k)、やはりきちんと事実関係を説明した方がいいのかもしれない。武器輸出三原則等の関連でこれを考えるのは大きな間違いだ。
2010-12-01 19:07:03まずこの関連のウィキリークスの公電(http://bit.ly/fO1iFi)。SM-3 Block IIAで検索して出てくる所が報道の箇所。事実関係から言えば、現在米国が配備している弾道ミサイル防衛はBlock IAを使用。だが現在、新しいBlock IIAを日米共同開発中。
2010-12-01 19:17:07本来この種の武器の共同開発は武器輸出三原則等で規制されている。しかし日本は2004年の内閣官房長官談話で弾道ミサイル防衛システムに関する案件については厳格な管理を行う前提で武器輸出三原則等によらないこととしているのだ(http://bit.ly/ebqdgc →第六項)。
2010-12-01 19:25:40日本は1983年に対米武器技術供与については既に武器輸出三原則等によらないとしているので(http://bit.ly/gI4hbB)わざわざここで同じことを繰り返す必要はなかった。なのに繰り返しているのは将来共同開発されたミサイルが第三国に供与される可能性を踏まえてのものだった。
2010-12-01 19:29:35つまり、日米共同開発のSM-3 Block IIAミサイルがいずれ欧州等の第三国に供与される可能性があることは、既に2004年の時点で日本政府は認識していたのである。だから内閣官房長官談話で慎重にこれについては武器輸出三原則等の規制を受けるものではない、と宣言したのである。
2010-12-01 19:31:07これは考えてみれば当たり前の話で、米国は日米共同開発をしたミサイルを日本や米国の防衛のみに使うはずがない。SM-3とはスタンダード・ミサイルの略であるが、その名の通りこれは米軍標準の対弾道ミサイルになるのだ。当然、第三国への供与という事態は想定し得るものであり、事実想定したのだ。
2010-12-01 19:33:17だから政府はこの件については武器輸出三原則等の問題ではないと予め予防線を張った訳である。こうした背景から考慮すれば今回の公電内容が米政府が武器輸出三原則の緩和を日本政府に促したものというのはまるで勘違いであることが良く分かるだろう。そもそもこれは武器輸出三原則等の問題でないのだ。
2010-12-01 19:35:15よって、この件に関しては天下のNHKでさえ過ちを犯しているのだ。ただ、こういった込み入った事情が専門家以外には分かりにくいことは確かだ。2004年の内閣官房長官談話も直接第三国供与の問題に触れている訳ではない。その点から言えば政府の側にも誤解を招くところなしとはいえないだろう。
2010-12-01 19:36:46それはともかく、この件は武器輸出三原則等の問題ではないとしても、共同開発した装備の第三国供与の問題という意味では同種の問題であることは確かである。官房長官談話も「厳格な管理を行う前提で」とは言っているが、どのような管理になるのかは将来の問題としてまだ余り考えていないだろう。
2010-12-01 19:39:54米国は昨年九月にPAAという新しい欧州方面のミサイル防衛計画を公表したが、そこで2015~18年にかけてSM-3 Block IIAを欧州に配備するとした(http://bit.ly/tCTEJ)。つまり2015年までには日本はミサイルの第三国供与の問題を解決する必要がある訳だ。
2010-12-01 19:44:10日本もそれまでには「厳格な管理」の内容について明らかにする必要があるだろう。実際の供与先は中東欧諸国である。ところでSM-3 Block IAとIIAって何が違うんだ、という方はこちらのp.7を参照のこと(http://bit.ly/fkzXmU)。結構違うミサイルなのである。
2010-12-01 19:57:04