- sironagasu_KoEN
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「なあアンタ、東京が何故23区か知ってるか?」ごく普通の質問に、僕はお決まりの答えを返す。「ただの慣例。22区しかなくても、23だって」「23区目ってのはな、あったんだよ。正確には今でもある」男の言葉。それは練馬区。国民が知らない地域。謎の男に誘われ、少年は禁忌に足を踏み入れる!
2014-11-18 17:14:48「この壁の向こうを見たことはあるか?練馬駅で電車を降りる奴を見たことは?練馬大根が何故練馬大根かは知っているか?」
2014-11-18 17:16:21「一方通行……この道もか?」 禁足地練馬。我々はその存在を知っている。見ることもできる。しかし、ある日気づけば、そこに至る道がなくなっているのだ……!
2014-11-18 17:20:47「そもそも考えてみろ……どんな奴が、『馬』を『練』ろうだなんて考えるんだ? 名前からしてあの土地は異端……異世界の異文化根差す、魔境なんだよ」
2014-11-18 17:24:48@piyorat 何を言っているのか分からないネリマ。私はただの都の役人ネリマよ。……もっとも、明確な所属を教える義理はないネリマがね!
2014-11-18 17:26:47@piyorat ああ、喋らなくて良いネリマよ。言葉をかわすのは地下牢に入ってからで十分ネリマ。……もっとも、その言葉は我々にとって都合の良い形で改竄して記録するネリマがね!! (額にNERIMAと刻まれた2メートルぐらいのメカネリマ兵が3体現れる)
2014-11-18 17:34:53@inran_blue 正体を隠す気もないってか! 量産型機械練魔兵……だが、その弱点は、ここだッ! 額のNERIMA、その一字を消すことで、機械兵はその機能を停止する! #ERIMA #とは
2014-11-18 17:38:52幼い頃、板橋区で暮らしていた頃の記憶。 友達と冒険ごっこと称して知らない場所を渡り歩いていた時、突然「都内とは思えない荒野」に出た事を覚えている。 まるで爆弾でも投下されたように、ボロボロの建物が散在するその土地には、2人の影が踊っていた。
2014-11-18 17:43:18「子供!? あんたここで何してんのよ!?」 心底驚いたような声の方向には、高校生ぐらいのお姉さんが血まみれで立っていた。 「危ないっ!」 事態が飲み込めず何も言えないでいる僕達の視界を、雷のような鋭い音と砂埃が襲う。 視界が晴れると、目と鼻の先に巨大な鉄塊が落ちているのが見えた。
2014-11-18 17:50:32「あんた、この子たちは部外者でしょ!!」 「そんな事は関係ないネリマ。この場所を見た者は皆殺しネリマよ」 お姉さんと、男の声。 持ち上げられた鉄塊は3mもあろうという巨大な大根型の棍棒だった。 もしさっき、お姉さんが庇ってくれなければ…… 背筋が震えた。怖すぎて涙すら出なかった。
2014-11-18 17:55:12「いい、あんた達。ここは私が食い止めるからさっさと元来た道に帰りなさい」 お姉さんはカーディガンの元の色が分からないぐらい血にまみれていた。 友達はすぐ逃げ出したが、僕は、お姉さんがどうしても気になって逃げる事が出来ないでいた。 「……ふふ、キミは優しいね」 お姉さんが笑った。
2014-11-18 17:58:03「一緒に戦ってくれたら、嬉しいな」 意識が遠くなる。 気がつくと僕は家の近所の公園の砂場で寝ていた。 近くで同じように寝ていた友達は、変な夢を見た気がすると笑っていた。 でも、僕は笑えなかった。 その日から何度も『お姉さんが居た場所』を探したが、とうとう見つける事は出来なかった。
2014-11-18 18:07:48それから10年。 僕は何かに取り憑かれたように体を鍛えた。 強くなれば、またあのお姉さんに会えるかもしれないと思ったからだ。 ただ一度、数分間会っただけの女性に何故ここまで心焦がれるのかは分からない。 でも今でも瞼を閉じると、血まみれで笑うお姉さんの儚げな姿が浮かび上がってくる。
2014-11-18 18:14:06「本当に来るとはね」 里帰り中、かつての遊び場を散策していると懐かしい声がした。 「キミ、練馬機関についてどこまで知っちゃった?」 「練馬区消滅までは調べました」 「あちゃあ、そりゃもう後戻りできないねぇ」 大げさなため息。振り向けばそこには、少し大人になったお姉さんがいた。
2014-11-18 18:19:05「嬉しいですか?」 「はい?」 「一緒に戦ってくれたら嬉しいと、言ってましたから」 「は、はぁ? それはその、言葉のアヤっていうかその…」 「僕はお姉さんとまた会えて嬉しいです」 握手を求め手を差し出すと、少しぶっきらぼうな顔をしながらお姉さんは握手をしてくれた。 「練馬つつじ」
2014-11-18 18:23:26「練馬……なんですか?」 「練馬つつじ。私の名前だよ!」 練馬姓の彼女が練馬機関と戦っていた。そこに何があったのかは分からないが、今すぐ問い詰める事はしたくないと思った。 「ああもう、ぼーっとしてないでキミの名前も教えてよ!」 「嬉しかったか教えてくれたら、僕の名前を教えますよ」
2014-11-18 18:26:16「何の話か分からないなァ」 「さっき『言葉のアヤ』って言ったから覚えてますよね?」 「…あんた性格悪くなったね。あの時は可愛い子供だったのに」 つつじさんはよろめくようなオーバーなリアクションを取った。 「…あぁ、来てくれて嬉しいよ」 「僕もまた会えて嬉しいです。僕の名前は――」
2014-11-18 18:30:26そして僕は「練馬大戦」へと身を投じた。 つつじさんは弱小勢力の長だった為、戦いは苦難の連続だった。 明日の見えない闇の中でもがくような日々、それでも僕はつつじさんが笑ってくれればどんな苦難でも乗り越えられるだろう。 彼女と供に戦うと決めた理由は、恩義だけではなかったのだから。
2014-11-18 18:38:47