2014年11月19日

シェアード・デシジャン・メイキングとしてのEBMと積極技法

まとめました。
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斎藤清二 @SaitoSeiji

EBM(エビデンスに基づく医療)の実践は、有名な5つのステップに従って行われる。簡単に言うと、ステップ1:患者の問題の定式化、ステップ2:問題についての情報の収集、ステップ3:得られた情報の批判的吟味、ステップ4:得られた情報の患者への適用、ステップ5:実践の評価、である。

2014-11-19 13:37:14
斎藤清二 @SaitoSeiji

EBMのステップ1~3については、優れた解説や教科書が多数存在し、その実行手順に大きな相違はない。特にステップ2,3については、最もEBMっぽい手順であるために、ステップ2と3のみがEBMであると誤解されることも多い。しかし実践において最も重要なのは、ステップ4であるとされる。

2014-11-19 13:42:40
斎藤清二 @SaitoSeiji

EBMのステップ4(エビデンスの患者への適用)は、EBM実践 の最も中核をなすステップであるにも関わらず、それがどのように行われるかについて、具体的に論じられたり、記述されたりすることは少ないように思われる。今回は、この点について、私見を交えながら連続ツイートしてみたい。

2014-11-19 13:46:02
斎藤清二 @SaitoSeiji

「EBMとは何のために行われるのか?」という基本的な問題に立ち返るとき、得られた情報(evidence)の患者への適用(application)とは、そもそも具体的には何を意味しているのかということが問題になる。このことは、医療の根幹にかかわる2つの大きな議論に関係している。

2014-11-19 13:50:07
斎藤清二 @SaitoSeiji

その一つは「医療者と患者の関係をどう考えるのか?」ということであり、もう一つは、「医療において一般的な知識を個別実践に応用するということはどういうことか?」という問題である。

2014-11-19 13:51:52
斎藤清二 @SaitoSeiji

医療者と患者の関係について、結論を先取りして言うならば、現代医療における医療者-患者関係のあり方は、「パターナリズム(父権主義)からパートナーシップ(協働関係)へ」という標語によって、最も適切に表現されると思われる。

2014-11-19 13:52:58
斎藤清二 @SaitoSeiji

このような考え方にしたがうならば、EBMのステップ4は、単なる「エビデンスを患者にあてはめる作業」ではない。そうではなくて、ステップ4は、「医療者と患者(家族)が協働して、エビデンス情報を利用しつつ、臨床意志決定を行う作業」として定義される。

2014-11-19 13:54:45
斎藤清二 @SaitoSeiji

近年このような意志決定の在り方は、Shared Decision Making(SDM)シェアード・デシジョン・メイキング(定まった邦訳なし)と呼ばれている。また「医療を「医療者と患者との対話の場」と考えるNBMの観点から言えばステップ4はNBMの実践の好例であると言える。

2014-11-19 14:53:10
斎藤清二 @SaitoSeiji

EBMのステップ4を、医療者と患者(あるいは家族)との、対話のプロセスであると考えれば、そこにおいて医療面接の技法が使えるのは当然のことであろう。ここでは、拙著『はじめての医療面接』において整理されている「積極技法」を、このステップに応用することを考えてみたい。

2014-11-19 14:55:18
斎藤清二 @SaitoSeiji

「積極技法」とは、医療者から患者への説明と教育を行うための技法である。これらの技法を有効に用いるためには、「かかわり行動」「基本的な傾聴の連鎖」と呼ばれるコミュニケーションの基礎となる技法群が十分に使いこなせることが前提でとなる。igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?…

2014-11-19 14:58:21
斎藤清二 @SaitoSeiji

以下に、医療面接における積極技法のうちで、特にEBMのステップ4に有効であると思われる技法を列挙し解説する。

2014-11-19 15:00:08
斎藤清二 @SaitoSeiji

①情報提供:「○○によれば、こうなっています」  「情報提供」の技法は、エビデンス情報を患者との対話に利用するための、最も直接的な技法として役立つ。情報提供は、「コメント」や「見解」とは異なっており、あくまでも客観的に確認可能な情報を伝えることである。(続く)

2014-11-19 15:55:59
斎藤清二 @SaitoSeiji

単に情報の内容や結論を伝えるだけではなく、情報の出所を明確にして、必要があれば患者や家族がその情報源に直接アクセスできるようにすることが望ましい。例を挙げれば以下のようになるだろう。(続く)

2014-11-19 15:56:46
斎藤清二 @SaitoSeiji

「情報提供」の例1:「2004年に発行された、クリニカル・エビデンスの日本語版には、『セント・ジョーンズ・ワートというハーブの一種は、軽度から中等症のうつ病性障害に対して効果がある可能性が高い』というエビデンスが記載されています」

2014-11-19 15:58:35
斎藤清二 @SaitoSeiji

「情報提供」の例2:「複数の系統的なレビューの結果から、急性腰痛の時には、安静にしているよりも、普通に活動することを続けている方が、治りが早いということが分かっています」

2014-11-19 16:00:35
斎藤清二 @SaitoSeiji

②説明:「△△とは○○ということです」  「説明」という言葉が意味する概念は幅広いが、臨床場面で最も重要な「説明」の機能は、専門的で分かりにくい概念を、当事者に分かるような表現に翻訳することである。(続く)

2014-11-19 16:01:30
斎藤清二 @SaitoSeiji

上記の例で言えば、○○にあてはまる表現は、常に△△より分かりやすく、目の前の対話者に理解できるような表現でなければいけない(説明とは明瞭に説くということだから、明瞭でないものは説明ではない)。例としては以下のようなものが挙げられるだろう。(続く)

2014-11-19 16:02:37
斎藤清二 @SaitoSeiji

「説明」の例1:「慢性腰痛とは、腰や下肢の痛みが3ヶ月以上続く時にそう呼びます。急性の腰痛のうち、慢性になるのは2%から7%と言われています」

2014-11-19 16:55:43
斎藤清二 @SaitoSeiji

説明の例2;「この治療法の治療必要数(NNT)は4です。ということは、4人の人が治療を受けると、1人の方に効果が期待でき、3人の方は治療してもしなくとも結果は変わらないということです」

2014-11-19 16:56:29
斎藤清二 @SaitoSeiji

③論理的帰結:「○○を選択すればこうなり、△△を選択すればああなるでしょう、あなたはどう思いますか?」いわゆる、インフォームドコンセントの時に、最もよく使われる技法である。複数の選択肢を提示し、その一つ一つについて、選択したときのメリットとデメリットを検討していく。(続く)

2014-11-19 16:59:00
斎藤清二 @SaitoSeiji

「論理的帰結」の技法を用いるとき最も重要な点は、「あなたの問題ですから、あなたが勝手に決めて下さい」という態度をとることではなく、「一緒に考えて行きましょう」という姿勢を堅持することである。以下のような説明になるだろう。(続き)

2014-11-19 17:00:01
斎藤清二 @SaitoSeiji

「あなたの現在の状態は、中等度の鬱状態だと思われます。治療の選択肢は色々ありますが、大きく分けると、お薬で治療する方法と、心理療法を受けていただくという方法に分けられます。どちらも期待できる効果は同じくらいです。お薬の効果が現れるには2週間から1ヶ月くらいかかります・・(続く)

2014-11-19 18:21:26
斎藤清二 @SaitoSeiji

・・通常6ヶ月くらいお薬を続けてもらう必要があります。心理療法の方は、認知療法という方法のエビデンスが一番はっきりしています。副作用は特にありません。残念ながら私の病院には認知療法の専門家がいませんので、別の施設に紹介状をお書きするということになります。どうされますか?」

2014-11-19 18:22:51
斎藤清二 @SaitoSeiji

④自己開示:「私は○○だと思います」「私は△△をお薦めします」:エビデンスが自動的に治療方針を決めてくれるわけではないし、患者や家族には「医療者に決断をまかせたい」と希望する人もまだまだ多い。このことは、患者の自己決定権を尊重することと必ずしも矛盾しない。(続く)

2014-11-19 18:23:55
斎藤清二 @SaitoSeiji

(承前)「医療者を信頼してまかせる」という決定も、患者や家族にとっての立派な一つの自己決定である。「先生はどう思われますか?」という質問をされることは、医療現場では結構多い。その時に逃げるような態度をとると、医療者―患者間の信頼関係を損なうことになる。

2014-11-19 18:24:35
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