【真荒】あなたのいる場所3

弱虫ペダル二次創作 腐向け 真波×荒北
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ひな@復旧中 @newgibbousmoon

あなたがいる場所3 「……食った、食った。あれ、うまかったな、ウニのパスタ」 「あれ、ウニだったんだ?」 「そ。ってか、おまえ、好き嫌い多すぎ」 「……好き嫌いさせてくれなかったくせに」 真波はぶーっと口を膨らませる。 体の弱い息子の好き嫌いを、真波の母はまったく咎めなかった。

2014-11-22 00:18:04
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon だが、荒北は嫌いな物を避ける真波に、全部食えと強要するのだ。 食べ放題なのだから、皿を空にするのがルールだ、とも。 「オレ、今日でいっぱいいろんなもの食べられるようになりましたよ」 人参でしょ、ブロッコリでしょ、セロリでしょ、と真波は指を折る。

2014-11-22 00:20:03
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「オレはおまえがこれまでそんなに好き嫌いしてことのほうが驚きだっつーの」 栄養のあるもんばっかだぞ、と荒北は呆れた顔をする。 「嫌いな物は嫌いなんです!大人になったら嫌いな物も好きになるとか言いますけど、あれって味覚が退化するからだそうですよ!」

2014-11-22 00:22:00
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 悔し紛れにそんなことを口にした。 「退化でも結構。大事なのは栄養バランスとって食うことだ。好き嫌いは二の次。だいたい、おまえは、これからまだ身体ができてくるんだから食わないって選択肢はねえの」 「……荒北さん、お母さんみたい」 「バァカ」

2014-11-22 00:24:58
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon おまえのようなでっかい息子はいらねえよ、と荒北は顔をしかめる。 (あ、今の呆れたっぽい顔、いいな」 きっとそんな表情を見たことある人間は少ないだろう、と思う。 レストランのある風祭から学校のある箱根湯本までの緩やかな上り坂をゆっくりと二人で登る。

2014-11-22 00:27:40
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon いつもの真波ならこんなチンタラとは登らないが、今はできるだけゆっくりのぼりたかった。 (楽しい時間って、いつもすぐに終っちゃうんだよね) 次にこんな風に二人だけで出かけたりする機会はあるのだろうか?と考えて、真波はその事実に気がついた。

2014-11-22 00:31:20
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon (オレ、また、荒北さんと二人で出かけたいんだ) それはなかなかに、衝撃的な事実だった。 真波は自分の執着のなさを知っていたし、そういう類の感情を半ば諦めてもいた。 (だって、委員長は特別だけれど、でも、委員長の持っているような熱はもてなくて)

2014-11-22 00:36:00
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon だから、自分が誰かを特別に思えるなんて、考えてもみなかった。 (東堂さんだって特別だけど、それは東堂さんがクライマーだからだし) でも、荒北は違う。 (そういえば、さっきだって自然にデートって思った……きっと、荒北さんは何とも思ってないのに)

2014-11-22 00:40:24
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon そう考えたら、心臓が鼓動を早める。 (……なんか、顔が熱いかもしれない) 夜でよかった、と真波は思った。夜だからこそ、この真っ赤になっているだろう顔を見られないですんでいるのだ。 「真波?」 黙ってしまった真波を怪訝に思ったのか、荒北が真波を呼ぶ

2014-11-22 00:44:04
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「はい?」 「どうかしたか?」 「別に何でもないです。ねえ、荒北さん」 「何だよ」 「また、どっか連れてってください」 「あー、受験終ったらな」 「受験?え?荒北さん、一般受験するんですか?」 推薦の話は荒北にもたくさんあったはずだった。

2014-11-22 00:48:29
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 荒北が受験勉強しているのは、てっきり推薦入試のためだと思っていた。 熱心だなぁとは思っていたが、荒北が意外に真面目なことも知っていたのでまさか一般受験をするとは思っていなかった。 「それ、みんな知ってるんですか?」 「福ちゃんたちか?」

2014-11-22 00:50:06
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「ええ。あと東堂さんとか」 「どうだろうな?話した覚えはねえなぁ」 「そういうことって話さないもんなんですか?」 「隠してるつもりはねえけど、聞かれねえし……いや、ちっとは隠してるのかな。何か面倒くさそうで」 荒北はやや憂鬱な表情をみせる。

2014-11-22 00:52:59
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「面倒くさいって、何がですか?」 「オレが明早行かないって言ったらうるさそうで」 特に新開、と荒北は眉を顰めた。 「え、明早行かないんですか?」 「え、逆に何で明早行くとか思われてんの?」 「だって、福富さん、明早の推薦とってますよね?」

2014-11-22 00:54:55
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「そうだな」 「何か荒北さんが福富さんと離れるイメージがあんまりなくて」 「あのなぁ、大学ってのは、自分の将来にすげえ影響あんだぞ。それを福ちゃんがいるだのいないだので決めねえっての」 「……うわ、荒北さん、すっごい正論だ」 「おい」

2014-11-22 00:56:58
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「……でも、福富さんは荒北さんが一緒に来ると思ってるんじゃないですか?」 「かもな」 荒北はあっさりとそれを肯定し、そして言った。 「それに、大学行ってからもチャリやるかわかんねえから」 「え?」 その言葉に心臓が痛いほど強く大きく高鳴った。

2014-11-22 01:00:23
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 思わず、よろりとふらけた。 「おい」 「すいません、ちょっとびっくりして」 「何がだよ」 「だって競技やらないっていうから」 「そもそも、自転車競技部ってのがあるほうが珍しいんだって」 「そうですけど」 「本命の学校に部活あるかも知らねえし」

2014-11-22 01:03:57
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「……自転車やめちゃうわけじゃないですよね?」 「ロードには乗るさ。でも、レースやるかはわからねえよ」 だから、追い出しレース終ったら、ビアンキは福ちゃんに返すしと荒北は言う。荒北のビアンキが福富からの借り物であることは有名な話だった。

2014-11-22 01:07:15
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「……いいんですか?オレにこんなこと話しちゃって」 「別にィ。……だって、おまえは話さないだろ、真波」 「ええ」 きっとバレたら大騒ぎになるだろうと思いながらも、真波はそれを誰にも言うつもりがなかった。 これ以上ライバルが増えても困る。

2014-11-22 01:11:47
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 荒北はあれでとてももてるのだ。 (当たり前だけど) これだけいろいろなことをスマートにやってのける人間はそう多くはいないだろう。 「ねえ、荒北さん」 「ナンダヨ」 「また、何か食べに連れてきてくださいね」 「おう」 荒北は気軽にうなづいた。

2014-11-22 01:17:08
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「……あと、今度一緒に山登ってください」 「やだよ、面倒くせぇ」 真波がそうくるだろうと思っていたセリフをそのまま返されて真波は笑った。 「何だよ」 「だって、オレが思ってたのと同じセリフだったから」 「セリフじゃねえっての」 (不思議だな)

2014-11-22 01:20:07
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon もやもやドロドロとしていた心の中が、ひどく澄んでいた。 (今日はよく眠れるかもしれない……) そして、今日はきっとあの夢は見ないだろう。 荒北に引かれながら、真波は小さく笑った。

2014-11-22 01:23:27