【文フリ記念】言之葉乃標本箱 其之壱の読みどころ総ざらえ！

はやかつ @hayakatweet

加楽幽明さん編集発行の超短篇・掌編コレクション「言之葉乃標本箱」をゆっくりのんびり読み進めて一巡読了したのだけれど、これが期待をさらに上回る素晴らしさだったので、二巡目を読みながらぽつぽつつぶやいて行こうと思います。たぶんこの週末前後から。ぽつぽつ。#言之葉乃標本箱

はやかつ @hayakatweet

作品の配列にゆるやかなつながりを持たせたとのことですが、これが実にいい味わい。オープニングに相応しい武田若千「端緒を発く」から葉原あきよ「青虫」への流れから摑みは十分。さらに断片的小品で畳み掛けリズムに乗せます。 #言之葉乃標本箱

はやかつ @hayakatweet

ゆるゆると続きを。あきよさんの「青虫」は、短さゆえの余白という超短篇の特色が最大限に発揮された佳作なので、短い文芸関係者必読です。しかもむちゃくちゃ短い。その少し後にある白縫いさや「人形のちぎれた首」も、別の意味で絶妙な投げ出しっぷり。見習いたい佳作。 #言之葉乃標本箱

はやかつ @hayakatweet

タカスギさんの「金、銀、そして鉛」は見事におとぎ話。残酷さの混ざり具合まで完璧に。しかしゴム猫なんてどうして思いつくのやら。絵本や童話が出版されるのを心待ちにしてます！ #言之葉乃標本箱

はやかつ @hayakatweet

作品の配列は取り上げるとキリがないのですが、最初のほうは少し丹念に。「青虫」のミドリガメを足掛かりに峯岸「かめ」、その鼈甲の櫛が小人に変化するのを踏み台に「人形のちぎれた首」、そしてタカスギ作品の王と女王の人形へ…全編この密度とは、どれだけの仕事量だったことか！ #言之葉乃標本箱

はやかつ @hayakatweet

さらに王と女王から、王子とお姫様にかかる呪いの話はたなかなつみ「冷たくしないで」、そこから五十嵐彪太「冷えた椅子」は朽ち果てた椅子を掘り出してくる物語、そしてあまりに自然な流れで秋山真琴「永久凍土から回収された祖先の手記」…どうです未読の方、読んでみたいでしょ？ #言之葉乃標本箱

はやかつ @hayakatweet

ひょーたんくんの「冷えた椅子」は、最初に心臓の競作で読んだときは読み切れてなかったみたいで、死にかかった椅子を拾ってきた主人公の思いに今回初めて気づかされ、思いを馳せたような次第です。過去の名作が多数採録されているのも、このアンソロジーの大きな魅力。 #言之葉乃標本箱

はやかつ @hayakatweet

秋山真琴氏の作品が、これがまあ凝りまくった細工なのですが（ネタバレにしたくないので触れません♪）、実はそんなに読みづらくありませんし、SF的ディテールと見事に噛み合って、物語に求心力と推進力を与えていると思います。変化球ナンバーワン的快作。 #言之葉乃標本箱

はやかつ @hayakatweet

白縫いさや「記憶」はぜひ心臓競作参加の拙作「あなたと出会った場所」と組で読んでいただきたい作品（手前味噌）。…ていうか、いさやんのほうが短く潔くカッコいいじゃないですか！ やっぱ並べるのやめー（笑） #言之葉乃標本箱

はやかつ @hayakatweet

こんなペースでツイートしてたら全巻終わるのいつになるんだろ、て感じですが、さすがに全作品にコメントはつけられないと思います。あらかじめ、飛ばされ御免とおことわり。特に掲載点数多い人、あきらめてください（笑） #言之葉乃標本箱

はやかつ @hayakatweet

おことわり其の二。そのうち疲れて流したコメントばかりになる気もする（笑）。あ、あと紹介なので基本褒めてばっかのはずですが、無理には褒めないので気のない褒め方だったら「はやかつのツボではなかったな」とあきらめてくださいm(__)m 何やらあきらめろ言ってばっかw #言之葉乃標本箱

はやかつ @hayakatweet

おっと拙作「台風一過」。この解放感が取り柄の作品が、本田モカ「片思い」のはかない宵闇と武田若千「遠雷」の不穏な予感に挟まれている配列の妙。 #言之葉乃標本箱

はやかつ @hayakatweet

青山藍明「同じ目をしている」。ぞっとします、これは。おとぎ話の平易な口調だからこそドロドロした話が怖さを増します。短編的なアプローチの作品から断片みたいなマイクロ作品まで、レンジの広さもこの冊子のウリですね。 #言之葉乃標本箱

はやかつ @hayakatweet

「同じ目をしている」が人間の暗いさがを抉れば、平金魚「修羅とこども」はそれに翻弄され傷つく幼い心を丹念に描く。これもまた好対照。金魚さんの筆致は幼い心に寄り添って真に迫ります。素敵。そこへ靴つながりでよもぎ「赤い靴」ときたか！ #言之葉乃標本箱

はやかつ @hayakatweet

よもぎ作「踊る」（さっきタイトル間違えた、すみません）の赤い靴の狂気を引き継ぐように白縫いさや「嘘泥棒」（傑作）、ここから意識の変容とか断絶を通奏低音とする作品が続きます。本アンソロジーの見せ場の一つですが詳細は略！ #言之葉乃標本箱

はやかつ @hayakatweet

峯岸氏の新作「失神師たちとその駆け引き」は奇妙な味の作品。彼の近作は同時掲載の「煙」「魔法」も含め、即物的なナラティブが特徴的で、一読突き放されてるような感じがあります。何か意図あってのアプローチなのでしょうか。ともあれ失神師、もっとSF風味でもよいかも？ #言之葉乃標本箱

はやかつ @hayakatweet

失神師の奇妙な日常が切り取り、繋ぐことにあるのならば、根多加良「私が私であるということ」は、切り取り繋がれてなおも私であることの動揺を生々しく。間に2篇、「私」に軽やかな揺さぶりをかける超短篇。 #言之葉乃標本箱

はやかつ @hayakatweet

伊藤鳥子「蝶が落下する日」から作品の流れはトーンを変え、蝶／花のはかなさを横糸として紡がれます。鳥子作品は、猟奇的になるかと思わせる設定を裏切るような静かさと淡さが味わい深いです。 思えばシンクロニクル参號掲載作も凄惨かもしれない状況を淡々と描いて好感でした #言之葉乃標本箱

はやかつ @hayakatweet

そしてたなか作、タカスギ作の二つの「奇妙な花」。かなり昔の作品ですが、それぞれの個性が際立ちます。とりわけタカスギ作は一見素朴ながら、時として人間を超越した冷徹な視座を示すタカスギさんならではの切れ味が光ります。一方のたなか作はどうしても滲み出る愛おしい視線が。 #言之葉乃標本箱

はやかつ @hayakatweet

花を締め括るのは極彩色の目眩く変転を描く高橋百三「おのぞみのまま」。タイトルと登場人物の名（だと思う、多分）は少し謎なのですが、花を題材にこれほど劇的な変化を描いた作品もなかなかないと思います。そして冊子は松岡永子「ゆらゆら」がタナトスの香りへの橋渡しをして… #言之葉乃標本箱

はやかつ @hayakatweet

生と死の境界地帯をめぐる物語として捉えると、佐多諒「超短篇凝集体『地下二階』」に隠された秘密がより繊細に浮かび上がって来るようです。一見、生の実感にまつわる三編と見える連作で、、それでも十分何かを感じさせますが、その「実感」の裏にタナトスが張り付いてはいまいか… #言之葉乃標本箱

はやかつ @hayakatweet

それにしても、生と死の境界領域をこんなかたちで忍ばせて変化に富んだ（うっっかりすると無関係と思ってしまいそうな）連作を書く佐多さんも佐多さんなら、それを読み取って見事に配列してしまう幽明さんも半端ない。それに続くタキガワ作とオギ作がまた素晴らしいです。 #言之葉乃標本箱

はやかつ @hayakatweet

うわ、佐多さんの名前誤変換してた！ すみません。椋、ですね #言之葉乃標本箱

はやかつ @hayakatweet

さて、タナトスから血の匂いへのバトン。峯岸「煙」を経て大谷雪菜「くらのなかにて」。初読は目眩く場面の転換にややついて行けなかったのですが、二読して像が焦点を結びました。残酷にして鮮烈。無慈悲な神を捨てる幻視。聖書とか古典古代とか知ってると、きっともっと楽しめそう #言之葉乃標本箱

はやかつ @hayakatweet

間が空きましたが続きを。ここで一つのクライマックスか、流れは急転して可愛らしい変身譚が3つ並びます。不思議カワイイ、も超短篇の一つの本領かと私は思います。立花腑楽、葉原あきよ、オギという作者ラインアップも、同じ不思議カワイイでも個性がそれぞれ際立って楽しいです。 #言之葉乃標本箱